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悪のメディア王が学んだ 読まれる記事の心得

007 トゥモロー・ネバー・ダイ

この映画での悪役の親玉はジョナサン・プライス演じる、ドイツのメディア王 エリオット・カーヴァー。
あらゆるスキャンダルを捏造し、バラまくことにたけてますから、イギリス政府も迂闊に手を出すことができない相手です。

目下の野望は中国全土の独占放映権を手にすること。そのためにイギリスと中国を武力衝突させることを画策します。

満を持して臨むことになったカーヴァーメディアネットワークのお披露目パーティが、ジェームズ・ボンドの妨害により停電騒ぎとなり、彼はとんだ赤っ恥をかかされます。

怒りを静かにたぎらせる彼は、ボンドの元カノであり、今は自身の妻となったパリスへ、ボンドによる妨害の意図を探るよう命じます。

その時、彼がパリスに言い放ったセリフです。

私は16才の時、香港で初めて新聞社に就職した。
小さな三流会社だったが、編集長からひとつ大事なことを教わった。

大ニュースに不可欠なのは
「いつ」、「どこで」、「誰が」ではなく
大事なのは「何故か」だと。

さて、これはシンプルなセリフですが、特に初めて広報紙などで記事を書く時、書き手の心構えを言い当てているなぁと思います。

何か事件や事故が起きた場合、
「いつ、どこで、だれが、なにが」など、まず結果について知らされますが、
読み手はその後に必ず「なぜだ」といったその原因や動機について知りたくなりますね。
日常会話でも同様に、因果関係では結果よりも、原因に興味をそそられたりします。

記事を書くときに、どうしても時系列で事細かに事実を書き連ねたくなるものですが、冗長な文章は読む気を無くしますし、そもそも紙面に収まり切れません。
エリオット・カーヴァーはそのキャリアの手始めから、「そうなるな」と叩き込まれたのですね。

映画の中では、膨れ上がった野望のはてに
あらゆることに理由を求める人の性を熟知している彼だからからこそ、

「戦争ほど良く売れるニュースはない。
それでは、私が大ニュースの起点となる『何故か』を作ってあげよう」

と、国際紛争を起こして権益を得ようとしたのが、彼なりの犯行動機でした。

娯楽アクション映画ですけど、さすが伝統の007シリーズだけあります。
文章を書く者にとって、脚本家の「記事を書くことへの矜持」を垣間見るようなセリフでした。

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