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さっと走り抜ける オクシズ

11月は色々と用事がたてこんでいて、バイクに乗る機会が少なそう。
3度目の心房細動アブレーション手術の結果も思わしくなく、
しばらく、息苦しい日がつづいていたけど、
外の空気を吸えば、気分が晴れるかもしれない。

乗れるうちに「乗っておくか」

そういえば、オクシズ(奥静岡)の井川にしばらく行ってない。
いつだったか、初冬に行ったら、
路面に大量の落ち葉が分厚く積り、
その上を延々と走らされ、背筋がサムくなった思い出がある。
落ち葉は油分を含んでおり、それだけでも滑りやすいのに、
石でも潜んでいたら、フロントが乗り上げて、即転倒なんてことも。

今なら、大量の落ち葉もなかろう。
紅葉もまだ早そうだから、人も少なかろう。
前日の夜、なんとなく、井川行きを決めた。

朝7時前には出発。
新東名ができて、オクシズへのアクセスが本当に早くなった。
安倍川からの山道は朝露がおりてセミウエット状態。
所々、路面が劣化し、亀裂や段差も多数。

愛車のHONDA BROSは骨格が非常に強固なため、
この類の路面になると、とたんに乗り心地が悪くなる。
とりあえず、相当の費用と時間を費やし、試行錯誤しながら、
WPサスペンションの足回りにアップグレードした。
ずいぶん乗り心地は改善したが、
しなやかなネコ脚と言うより、
ドタドタ走るイヌ脚の印象は変わらない。
その代わり、一日中ゆさぶられて、
五十肩が治ってしまう、思わぬ副作用があったりする。

砂防やら治水やら、大規模な工事現場が沿線に点在する。
予算も相当かかってそうだ。
インフラの維持というのは本当に手間と時間がかかるものなのだ。

8時少しすぎには富士見峠に着いてしまう。
めざす井川とは指呼の間だ。

案の定だれもいない。

確か、富士山が見えるはずだが…
展望台に立ったが、木立で見通しが良くない。
その代わりに、こんなものを発見

井川林道開通記念塔

周囲に埋もれそうになっているものの、
これ自体は相当に高い塔だ。
朽ち始めてはいるが、開通当時の地元の喜びと期待が伝わってくる。
将来、井川への直通トンネルができれば、
この道も、新たな運命をたどることになるのだろう。

富士山の見えない富士見峠なので、
肝心の富士山を探すべく、来た道をバイクで少し戻る。
路面補修の工事現場のあたりが少し開けていて、空が大きく見える。
ガードレールの向こうは崖だ。

やっと会えた

家から大して離れてはいないのだが、
富士山が遠くに感じる。
あの麓に暮らし、
ささやかな喜びや、
解きがたい憂いにまみれながら、
生きているのか。
静寂の中、空だけがやけに広い。

井川ダムを経由して、接岨峡へ抜ける。
ここが、大量の落ち葉で苦しめられた道なのだが、
今は多少の落石のほかは全くのクリーンで、
さみだれ式に拡幅された道は以前に比べると走りやすい。

もう30年以上前のことだが、スズキ・カルタスに乗っており、
この道を走破してみたいと乗り入れたことがあった。
しかし、カルタスでは石だらけの未舗装林道は完全に能力不足で、
足回りや腹を打ちまくる始末。
泣く泣く引き上げたことがあった。
それから数年してリベンジのため四駆のエスクードを買ったのだが、
すでに林道は新道に付け替えられ、
狭いながらも完全舗装されていたという、
笑えない思い出がある。

長島ダムの天端を通り抜け、長島ダムふれあい館へ。

ようやく秋色の景色を見る

係りのおじさんがとてもフレンドリー。
なんでも一部のダム関連施設で「ダムの駅」なる事業が始まっており、
その記念切符を販売しているとのこと。
ダムカード収集初心者の私としては、
なんとしてでも買わざるを得ないご提案であった。

帰りは大井川沿いに南下し、
川根の生クリーム大福なぞ土産に購入しつつ、
帰路についたのだった。

さて、
改めて、「バイクに乗ることについて」思う。

「なんて、こいつは時間当たりの入力情報が多い乗り物なんだろう」

あらゆる方向からのG
日差し、大気の流れ、気温、湿度、匂い
ヘルメットの風切り音
エンジンからの振動・音
足回りからのインフォメーション

陸を移動する他の乗り物と比較すると、
乗り手への情報入力がケタ違いに多い。
いや、それら情報をきちんと受け止め、適切に処理してやらないと、
まともに走らせられないのがバイクという乗り物なのだ。

今のわたしに、これ以上、入力情報を増やしたら、
きっと、見落としや聞き落としが起きるだろう。
だから、今のところ、インカムから流れる音楽や
スマホのナビは不要なのだ。

そして、
この莫大な情報処理に対応できなくなったら、
その時はバイクを降りる時なのだと思う。

なぁに、その時は、もう少し先さ、相棒!


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