PUT YOUR HAND ON THE TABLE
月の輪郭がよくわかる子だった。目が悪いはずなのに、なぜか月の満ち欠けを識別できた。
私には霞んで見えないものが、あの子には鮮明に映っていた。何を見てこれまで生きてきたのかが違っていたのだ。
今晩の月がどのように欠けているかなんて、考えたこともなかった。不意に見せるロマンチストな一面に、はっとさせられることも多かった。さりげない仕草からにじみ出る色気の理由が分かった気がした。
掛けた電話に折り返してこない所も、何も言わずどこかに消えてしまいそうな所も嫌いだった。追いかける私の手をさらりとかわして、また月を見に行くのだろうか。
大切なものが、違っていたのだ。初めから。ただそれだけだった。
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