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【超能力捜査】霊視で的中・アメリカ資産家女性殺人事件



2004年12月14日、アメリカアリゾナ州、テンピ。

67歳のトー・ベンダリーが、ショッピングモールの警備デスクに慌ててやってきて、連れがいなくなったと言う。彼は警備員に、ロレッタ・バウワーソックスを14時にここで下ろしたと告げた。約束通りに16時に迎えに来たが、2時間彼女を探しても見つからないと言う。

警察は行方不明になった女性の名前にすぐに気がつく。ロレッタ・バウワーソックスとその娘テリーは、成功した家具店チェーンを経営しており、彼らのコマーシャルは地元で20年も放映されていた。

警察は捜索を本格化させ、モール全体やその周辺地域まで捜索するが、何の成果も得られない。彼女は知名度の高い億万長者。この事件を担当したファビアン・パチェコ刑事は、彼女が誘拐されたのかもしれないと考える。

「身代金目的で誘拐されたのかもしれないと思いました。トー・ベンダリー氏は、ロレッタが白いバンに乗った者たちに誘拐された可能性について幾つか示唆しています。この情報により、捜査はさらに強化されました。」

トーはロレッタの娘、テリーに電話する。

テリーがその時のことを語る。

「車に飛び乗って普通1時間半かかるところを45分で運転しました。すごく焦ったことだけを覚えています。母が誘拐されたという恐怖は最悪のものでした。トーのコンピューターから母の写真を入手して私達はすぐにポスターを作り始めました。」

ロレッタとテリーはアリゾナのサクセスストーリーのようだった。

テリーは言う。

「母は上品でとても賢い女性でした。魅力的で才能に溢れて、満ち溢れた人生でした。」

ロレッタは18年間その人生を、内縁の夫、トー・ベンダリーと共に共有してきた。

トーが警察に語った話によると、彼らはその日の朝、5日間の休暇のため、自宅のあるテンピを出て、午後12時半にツーソンのホテルにチェックインした。そして14時にショッピングモールへ行った。

しかしショッピングモールの防犯カメラを確認すると、そのビデオのどこにもロレッタが見つからない。

トーはモール内で彼女を2時間探していたと言った。ビデオで彼が到着するのは確認されている。しかし到着後ほぼすぐにカスタマーサービスカウンターに直行し、ロレッタを行方不明として報告していた。警察はトーのホテルの部屋の捜査令状を取得。テリーに母親の所持品を調べるように依頼する。

テリーが言う。

「ベッドの上には母の家から持ち去られた銃や弾薬がたくさんありました。貴重品もたくさんありましたが、一番決定的な瞬間は、宝石を見た時でした。これはただの誘拐じゃないと思いました。」

警察が彼の車を捜索すると、シャベルとつるはしが発見される。そこには、使用されたかのような汚れや埃がついていた。

パチェコ刑事はロレッタが住む地域の警察に連絡。そしてロレッタの家を捜索する令状を取得する。するとそこに駐車されているバンから、バッグとその中にクレジットカード、小切手帳、身分証明が見つかる。

財布、つるはし、貴重品は全て犯罪を示唆していた。

パチェコ刑事が言う。

「証拠に基づくと、我々にはロレッタがツーソンに来ていないという確信がありました。」

ツーソン警察はトーを尋問のために連行する。彼は防御的で、奇妙なことに、行方不明の彼女のことには無関心だった。警察は彼が犯人だと信じているが、遺体がなければ起訴することはできない。

トーは釈放され、警察の監視下に置かれる。しかし娘テリーはただ待つということはしなかった。彼女は友人から超能力者のマリアン・モーガンの話を聞く。マリアンは国際的な資格を持つ霊媒師であり、自身のラジオ番組も持っている。

マリアンは言う。

「私は透視能力があります。つまりあちら側にいる人たちと話します。テレビの画面が目の前で再生されるように、心を使って時間をジャンプするような能力です。」

テリーはオクラホマに住むマリアンに電話をかける。

マリアンが言う。

「愛する人が亡くなったと伝えるのは決して容易ではありません。特に殺された場合は。」

ロレッタが行方不明になってから2日が経過していた。

テリーは言う。

「理解するまで時間がかかりました。それを聞くのは辛かった・・。」

マリアンはロレッタの最後の瞬間を見たと言う。

「私は喧嘩の叫び声や怒鳴り声など全てのビジョンを受け取り続けていました。そして誰かが後ろから頭の上に何かをかぶせるのが見えました。彼女が助かろうと必死に戦っているのが見えます。でも戦えば戦うほど状況は悪化して・・。最終的には息絶えてしまったのです。この男が見え始めた時、テリーに彼のことを詳しく説明しました。そして彼女は『そうです、この人は母親が長い期間関わっていた人です』と言いました。私は、彼女が知らないことを伝えました。『この男はあなたに嘘をついた、彼はあらゆる金銭的問題を抱えている、彼が作り出したあらゆる問題を・・、彼は詐欺師です』と。彼女はそれを理解しましたが、信じたくなかったようでした。」

テリーはさらなる衝撃を受けることになる。

マリアンが言う。

「ロレッタがドアを開けて、書類を手にするのが見えました。それがどれだけ彼女を怒らせたのかも。家が差し押さえになったのが分かりました。彼女には寝耳に水だったのです。」

テリーが言う。

「私は、差し押さえなんてそれはおかしいと言いました。母が家を差し押さえにさせるなんてあり得ないからです。母は家を大変気に入っていましたから。」

テリーは差し押さえのことを警察に話すことにする。

パチェコ刑事が言う。

「我々は超能力者を使いません。使うのはDNAや指紋などの現代法医学です。他にも特定のことならできることはあるが、超能力・・、使ったことがありませんでしたし懐疑的でした。」

テリーが言う。

「私に分かるのは、マリアンが描写したことは当たっているように見えるということだけ、と言いました。他に何も手がかりがないなら、試しても損はないのではないかと。」

パチェコ刑事は言う。

「我々は調査をしました。そこで家が差し押さえられていることを知りました。誰も知らなかったことです。驚くべきことでした。もしかしたらサイキックも役立つのかもしれないと考え始めました。」

警察はトーのアリバイを崩そうと捜査を続けていた。トーによると二人は朝10時にテンピを出て、ツーソンのホテルにチェックインしたのが12時半。しかしホテルによると、トーは14時48分に一人でチェックインしたと言う。

彼のクレジットカード、銀行の明細書もまた違うストーリーを伝えていた。11時に彼はアウトレットモールで帽子を買っている。そして13時15分に給油所でサンドイッチを買っている。この二つの店は自宅からツーソンまでの通り道で、ツーソンから1時間弱手前のところにある。

警察はその食い違う時間帯に、トーがソノラ砂漠のどこかにロレッタの遺体を埋めたと考えていた。そしてトーをロレッタ殺害の罪で起訴する方向に向かっていた。

ロレッタ失踪1週間後、爆発的なことが起こる。マリアンに別のビジョンが見えたのだ。

「突然閃光のようにトーのビジョンが現れました。本当に悪い予感がしました。この男は自殺するか逃げようとするかのどちらかです。」

マリアンはすぐにパチェコ刑事に電話をする。

パチェコ刑事は言う。

「我々はトーの安否を懸念しました。もちろん誰にも自傷行為をしてほしくないが、最も重要なこととして、ロレッタがどこにいるのかまだ分からない。トーに何かあったら、彼女を見つける可能性は彼と一緒に消えてしまいます。」

警察はトーの安否を調べるが、問題ないように見えた。しかしその翌日、テリーはトーに何度も電話をかけるが出ない。パニックになった彼女は警察に連絡する。

警察が家に行くと、ガラージで延長コードにぶら下がっているトーを発見する。残されていたのは、ロレッタに会いに行くと書かれた遺書。彼女がどのようになくなったか、遺体がどこにあるのかの説明はなかった。

この男は自殺しただけではなく、ロレッタがどこにいるのかの手がかりを全て持ち去った。マリアンはトーの自殺について言い当てた。

ロレッタが失踪してから3週間経っても警察はロレッタの遺体を見つけることはできない。

テリーが言う。

「彼が自殺をしたことを知って、母を殺したのが彼だったら、母に何が起こったのか、真実を知る希望を全て失いました。母はどこにいるの?と。私は何が起こったのか知る必要がありました。母がどうやって殺されたのか。撃たれたのか。切りつけられたのか。殴られたのか。どのように死んだのかが分からないと、気が狂いそうになります。」

絶望的なテリーはマリアンをテンピに呼ぶ。彼女なら警察が見逃している何かが見えることができるかもしれない。彼らはトーが自殺したガラージから始める。もう少しで差し押さえられる家だ。

マリアンが言う。

「ガラージへ行くと、とても冷たい存在がやって来ます。私は、『テリー、トーが私たちと一緒にいる』、と言いました。そしてその時、彼が私の心に飛び込んできて叫び始めました。『彼女は砂漠にいる、彼女は砂漠にいる、砂漠にいると言ったじゃないか!』と。それはとても強力で圧倒されるものでした。これをテリーに伝えるのはとても難しいと分かっていました。でも残念なことに、私には彼女の母親がビニールに包まれて、ほとんどミイラになっているのが見えます。砂漠の非常に浅い墓に埋葬されているのも見えました。」

警察は既に彼がロレッタをソノラ砂漠に埋めたと疑っていた。しかしマリアンはある特定の物の詳細を見ていた。

マリアンが言う。

「ブルーが見えます。青に囲まれてる気がします。そして子供たちの笑い声が聞こえました。子供達がメリーゴーランドでぐるぐる回っているのが見えます。なんてことだろうと思いました。これが最大のキーの一つになるのは、ロレッタはこのメリーゴーランドから130メートルも離れていないところにいるということです。」

マリアンは警察に情報を共有する。その頃警察は新しい手がかりを得ていた。

トーは12時半に砂漠で携帯電話をかけていた。彼がその時間にいたというツーソンのホテルからは150キロも離れている。彼はツーソンのホテルにチェックインしたのが12時半と言っていた。つまり説明できなかった2時間の間にその電話をかけていた。

警察は彼が電話をかけた場所の近辺にロレッタを埋めたと考えた。何百人ものボランティアが協力して探すが、見つけられない。

砂漠はとても広大で、手がかりがあったとしても遺体を見つけることは困難だ。

半年経ってもロレッタにつながる手がかりはなく、捜査は打ち切られる。しかしテリーは諦めない。その後数ヶ月、毎週土曜日に地元の人も観光客も同様にロレッタを探す。彼女はヘリコプターでも探した。

テリーが言う。

「毎回探しに行く度に母のことを考えていましたが、残りの人生をこんなふうに過ごさないでよいことがどれほど重要なことだったのか・・と思いました。母を砂漠に置いておくつもりはありませんでした。そんなことはさせない。見つけるつもりでした。」

マリアンが言う。

「テリーは毎日探していました。遺体を見つけるのは彼女のカルマではないと最終的に告げなければいけませんでした。失踪後1年くらい経った時に、ハイキングをしている人に見つけられるから・・と。」

2006年1月、廃墟となったモーテルからわずか130メートルのところで、ハイキング中の家族が頭蓋骨につまずいた。彼らは、その上に多数の岩が置かれた浅い墓を発見する。遺体は袋に包まれていた。歯科記録からロレッタ・バウワーソックスの遺体であることが確認される。死因はビニール袋による窒息だったことが判明。

テリーが言う。

「母がついに見つかったと聞いた時、『ああ、ありがとう神様!』と思いました。もう探さなくていいんだとホッとした・・。私には終止符が必要でした。その場所まで運転した時、ブルーのモーテルがあったてびっくりしました。こんなにブルーなのに今までどうして気づかなかったの?と。今までずっとその直前で止まっていたんです。」

隣には青く塗られた子供の遊び場もあった。彼らが1年間探し続けた砂漠では、青いトラックや青い車は一台もなかった。 しかし、そのすぐ先には廃墟となったモーテルがあったのだ。 屋根はブルー。 そこには青く塗られた古いガソリンスタンドもある。 さらにその後ろには青い給水塔があり、庭には青いトラックが捨てられていた。

警察は12月13日にロレッタが生きていた最後の時間を再現。この日彼女は家の差し押さえの通知を発見した。15時33分、彼女は銀行に17回電話をかけた中の最初の電話をしている。

18年間のパートナーが住宅ローンの支払いを横領しているという彼女の最悪の恐怖を銀行は確認している。彼女がトーに問いただすと彼は、自分の嘘が暴露されるのではないかとパニックになり、彼女の背後に忍び寄り、ビニール袋を頭からかぶせ窒息させた。

パチェコ刑事は言う。

「この事件に関わってから、サイキックを使用することについて、断然私はそれほど懐疑的ではなくなったと言えます。」

マリアンは言う。

「ロレッタが見つかったと電話を受けた時、ついに終わったのだと、ただ安堵しました。」

トーはロレッタ殺害の裁判にかけられることはなかった。死んだ男を裁判にかけることはできない。

テリーは言う。

「母を助けるために何もしなかったことを申し訳なく思っています。もっと早くに彼女を家から連れ出さなかったことを。世の中には、孤独を抱えている女性がたくさんいることを知りました。彼女達は愛に飢えている・・。そして残念なことに、それを利用する男性がいるということ・・・。だから女性たちには・・、もし一緒にいる相手に何か問題があると感じていて、相手のことを確認していないのであれば、是非してくださいとだけ言いたい。」

ロレッタはテリーが10代の頃に離婚している。その後彼女はデートしても、適切な人を見つけられなかった。

年齢を重ねると、相手を見つけるのが難しいと悲しんでいたロレッタに、ルームメイトを募集する広告を勧めたのはテリーだった。母親には一緒にいてくれるルームメイトが必要かもしれないと思い、部屋がいくつもある大きな家の一部屋を賃貸に出し、その中から候補を探すのも一案ではないかと考えた。もしそのルームメイトが人生のパートナーになれば、それは最高の出来事ではないかと。

ロレッタはお金も地元の名声もすべて持っていたが、彼女の人生に唯一欠けていたのは愛だった。

スコットランドの発明家と名乗るトーが彼女の部屋を借りることに決めたのは 1986 年のこと。彼はイギリスからアメリカに戻ってきたばかりだと話した。

しかし、空港で財布を盗られたという彼は、身分証明書、クレジットカード、現金さえも全く持っていなかった。ハンサムで魅力的なトーに ロレッタは惹かれるものの、慎重になった。

彼女は審査のためにテリーも加えたディナーの席を設ける。彼は自分は発明家であり起業家として成功していること、ドナルド・トランプとともに学生時代に無数の学位を取得したこと、世界中の企業投資家から投資を集めている最新の発明について話す。その魅力的な話術に母娘が引き込まれるのは簡単だった。

こうして謎の男はロレッタの家に引っ越してくる。幸いなことに、トーはとても器用で親切だった。二人の間に ロマンスが芽生えるまでに時間はかからなかった。

ロレッタはアリゾナのビジネス界に深く関わっており、富裕層との深いつながりがあった。投資家の資金を必要とする発明家のトーにとって非常に有利である。 こうして彼はロレッタの友人や同僚の輪にネットワークを広げていく。 トーは知識が豊富で、魅力的で、インスピレーションを与えるため、ロレッタの友人たちはすぐに魔法にかかり、彼の発明に投資する。

しかしその後彼らはなぜ自分たちの投資に何の利益も見られないのか疑問を持つようになる。 ロレッタも、彼が経済的に全く貢献していないため、同様に心配し始めた。 彼女は警察の友人にトーの背景を調べてもらうように依頼。

結果、ドナルド・トランプ氏とともに通っていた大学でいくつかの学位を取得していると主張していたのは嘘だった。 トーは嘘をついたことを認めるが、虐待と苦痛に満ちた子供時代を過ごしたことを話す。 彼のトラウマの話はロレッタの琴線に触れ、彼の言い訳を受け入れた。

事件後警察は、トーがロレッタと出会った頃に刑務所から釈放されたことを明らかにした。彼はスコットランド人でもなかった。女性を騙したこともこれが初めてではなかったと言われている。

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