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【前世の記憶】著名人の前世の父と夢で逢う少女


アメリカ・ミネソタ州。

キムとフィルにはアニッサという娘がいる。アニッサは24時間の陣痛の後に生まれた。

赤ちゃんの頃のアニッサはよく泣き、いつも抱っこしていなければならない手のかかる赤ちゃんだった。

幼児期になると他人を気遣う優しい子になる。アニッサは悲しそうな人を見れば何かしてあげようとした。他人の気持ちに敏感なように感じられた。  

アニッサが5歳の時、不思議なことを言うようになる。

ある日車の後部座席で興奮してはしゃぐ娘に、何をしているの?と聞くと、

「ママ、ママ、ベイリーが来てる!」

と言う。

ベイリーはキムが昔飼っていた犬で子供たちが生まれるよりはるか昔に亡くなっている。

「ママ、ベイリーが私の足元にいるの、見えないの?」

キムは子供のイマジネーションだと思い、その話を聞いたフィルも興味深いと思ったくらいで、夫婦とも特に何も考えなかったと言う。

ある朝アニッサが飛んできて再び不思議なことを言う。

「ママ、前のお父さんが夢に出てきたの。フィルお父さんじゃないよ。彼は今のお父さんだから。」

アニッサは続ける。木々が輝いている美しい野原で、前のお父さんと詩を書いたり歌ったりした。前のお父さんと天国にいたと。その描写はとても詳細なものだった。

彼女が描く前のお父さんの絵には、変わった髪型にショートパンツを履いた男性が描かれ、その手にはタバコが握られている。彼は本を書き、それが職業だったとアニッサは繰り返し言った。その絵を何度も何度も描いていた時期もある。

アニッサは自分自身をニューヨークという国出身の女の子だと表現した。彼女は自分がそこに住んでいたと思っていて再度訪れたがっていた。その詳細な情報の数々に、キムは何かがあると感じたがそれが何かは分からない。

アニッサが8〜9歳の頃、1人で寝るのを嫌がるようになり、両親や兄弟と一緒に眠りたがった。ドアも開けたままでないと眠れないため両親はドアも閉められない。

そんな毎日が続いた後、さすがに1人で眠るべきだとの両親の考えから、再び自分の部屋で眠るようになるが、彼女は自分を囲むように枕を並べてバリケードを作っていた。何も目に入らないように。鏡も反対側にして視野に入らないようにしていた。

両親が何を恐れているのかと聞くとアニッサは、夜になると何かが見えると言う。

ある日アニッサは孤児の少年について語った。少年はは病気で、アニッサは彼は毒を盛られたのだと感じていた。彼は鏡を通して彼女の元にやってくる。彼女が準備をしている時に隣に現れるのだ。

アニッサはずっと防虫剤の匂いがすると言う。彼女が描くその少年の絵には、穴の開いた服を着た男の子が描かれていた。

その少年は常にアニッサの側にいて離れようとしない。彼女はとても怖がっていた。1人でバスルームにも行けないほどに。バスルームに行く時はドアは開けっぱなしにした。閉めてももはや1人にはなれないのだから。

両親は娘はどこかおかしいのではと心配になる。看護師であるキムが信頼する小児科医師に相談すると、小児セラピストを紹介される。娘が精神的な病気を抱えているのかと思ったキムは動揺し、娘の将来を心配した。

しかしセラピストは面談の後、精神的な病気ではないと結論づける。キムは一種の安堵感を覚えた。

一方で全く別の恐怖も感じていた。それなら次はどうしたらいいのか。

アニッサはとてもクリエイティブな少女で、詩や音楽、短編小説、瞑想などを書いていた。中には彼女の年齢での知性とは思えないものもあった。

一連の出来事を踏まえて、キムは娘が前世の記憶を思い出しているのではないかと思うようになる。

クリスチャンとして育った彼女にとって、前世や輪廻転生といったものは、悪いとかあり得ないとかいうわけではなく、ただ決して議論されることのない話題だったのだ。

アニッサが9歳の頃、フィルはセント・ポールにあるホッケーの試合のチケットに当たる。試合の後、アリーナを後にし、家族で公園を歩いていた時のこと。

「なんかここにいるととても幸せな気分。ここで結婚してもいいくらい。」

アニッサはそう言うと、突然走り出し

「ママ、パパ、来て!」

と手招きをする。アニッサは銅像の前に立っていて、その銅像に腕を回している。

「ここに居たんだ。これが前のお父さんよ。夢の中に何度も訪れてくれるの。」 

フィルは興味深いとは思ったものの、イマジネーションかもしれないしたまたまそれがこの人物だったのだろうと特に何とも思わなかった。

両親がその銅像の説明板を見ると、F・スコット・フィッツジェラルド(フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルド)の銅像だと言うことが分かる。

キムは彼についてよく知らなかった。帰宅して調べると、彼はアメリカで最も有名なアメリカの小説家の一人で、「グレート・ギャツビー」を書いた人物だった。

アニッサが描いていた前のお父さんは変わった髪型だったが、娘が単に思いつきで描いたものではないことは分かっていた。

キムはいくつかの写真をプリントアウトしカウンターに置いてみる。

アニッサはそれを見つけ手に取ると

「ここにあったわ、ママ。実物はこういう外見だったの。」

と言う。

これまでの一連のことが一つにまとまる。

アニッサの前世の名前は前世のお父さんと似たような名前だと言っていた。そこで娘について調べると、F・スコット・フィッツジェラルドの娘は、スコッティという通称だったことが分かる。

彼女はニューヨークに何年も住んでいて、作家、ジャーナリストでもあった。

キムは娘と興味深い関連があると思った。前世のお父さんが夢に出てきた時、アニッサはたくさんの詩や音楽を書いていたからだ。そしてその間は「ニューヨークという国」に行きたいという衝動もより一層強いものになっていた。

キムにはもはやこれが偶然だとは思えなかった。

最初のうちは懐疑的だったフィルも、これには何かがあると感じ、娘が架空の話をしているのではない、娘に起きていることは真実だと思うようになった。 

アニッサは16歳になっていた。彼女は言う。

「小さい頃は何もかもがもっと困難だった。見えているものをどうやってコントロールしたらいいのか分からなかったし、自分自身をどう説明したらいいのかも分からなかった。自分は他の子たちと比べてすごく変わってると感じてた。最初は前世のお父さんが夢に出てき始めたの。夢の中では一緒に詩を書いたり本を書いたり、歌ったりしてた。彼はスーツを着てきちんとした身なりをしてた。髪型はサイドにかけて滑らかな変わった髪型。お父さんからとても愛されている自覚があったの。彼の銅像を見た時、F・スコット・フィッツジェラルドと書いてあって、夢の中ではいつもお父さんにフィッツジェラルドと言ってたの。だからあの銅像を見た時、すぐに引かれた。私のお父さんだって。」

キムは娘をサポートする方法を探さなければと感じていた。家族は再びF・スコット・フィッツジェラルドの銅像を訪れる計画を立てた。さよならを言うために。キムが娘に伝えたいことは、現世にフォーカスをするということ。

前世とのつながりが分ってから、娘にこれまで起こっていたことをたくさん受け入れられた。今まで説明がつかなかったことの因果関係がはっきりしてきたから。そしてそれ以降も前世とのつながりから学び続けている。

両親が娘の経験、前世、魂との繋がりを受け入れたことはアニッサを強くし、ありのままを認められた安堵感も与えた。

アニッサには自分の前世に関する敏感な面を知っていて支えてくれる友達もいると言う。

F・スコット・フィッツジェラルドが娘宛に書いた有名な手紙がある。彼はその中で娘へのアドバイスやサポートを書き記している。

キムはその手紙を娘に渡すことを考えていた。どれだけ彼女を支え、その前世を支えているかを知ってもらうために。

その手紙の中には、過去にフォーカスするのでなく、将来にフォーカスするのでもなく、現在にフォーカスせよ、という部分がある。

それがキムが娘に伝えたいことだった。現在にフォーカスするということを。アニッサはその手紙を読んだことはないはずである。

アニッサは前世のお父さんにさよならを言う準備はできていると感じていた。

「前に進んでアニッサとして生きていきたいと思ってる。また前のお父さんの銅像へ行くことがとても楽しみ。終止符が打てると信じてる。」

そして家族は再びF・スコット・フィッツジェラルドの銅像の前へ来た。

キムが言う。

「アニッサ、渡したいものがあるの。これはあなたの前世のお父さんが娘宛に書いた手紙よ。過去や将来を心配することなく現在にフォーカスすることはあなたにとってとても重要なことだと思うの。」

彼女は感謝の言葉とともに言った。

「これはとてもよい大切なメッセージだと思う。これで前に進める気がする。」

アニッサはそれ以降、前世について話すことはなくなったと言う。

後にアニッサは語っている。

「ママがあの手紙をくれた時、過去や将来を心配しないように言われて、大きな衝撃を受けたの。前世のお父さんからの言葉だから現在にフォーカスできる。自分らしく生きられれて幸せになれると。」

長いこと前世のお父さんにこだわってきたアニッサだが、フィルはそれを気にしたこともなければ気分を害したりすることもなかったと言う。

「それは過去の話でこれが現在だから。これまでもこれからも最終的に自分がアニッサのお父さんだから。残りの人生も最高のお父さんとして生きていくつもり。」

最後にキムが言う。

「娘が安全で幸せで健康でいることが親として望むことの全てです。それが過去であれ現世であれ。」























 

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