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【超能力捜査】霊視的中・迷宮入り?アメリカ身元不明迷殺人事件


アメリカ、ペンシルベニア州の田舎町。 

身元不明の殺人事件の解決は、この事件とは無関係な地元男性の殺人事件の捜査から型破りな形で始まる。

殺人が稀なこの田舎町で、さらに珍しいのは、ロバート・ワーナー刑事が初めて超能力者に会いに行くということだ。超能力者のローレン・ティボドー博士は、亡くなった男性の家族と協力して捜査をしていた。

超能力者がどのようにビジョンが見えるかは人によって違う。

ローレン・ティボドー博士は言う。

「多くの人は視覚的に認識します。テレパシー聴覚で認識する人もいます。直感で理解する人も、肌から感じる人もいます。だから認識する方法は少なくとも4つあります。」

ロバート・ワーナー刑事は言う。

「事件を解決のためにあらゆる手段を使うつもりでした。失うものは何もなかった。周囲の反応が分からなかったので、超能力者に会いに行くことは多言していませんでした。」

彼は超能力者ローレンにも、訪問の目的も、警官ということも伝えていなかった。しかし彼が座るとローレンは「警察関係ですか?」と聞く。刑事であることを彼女が知るはずがなかった。

ワーナー刑事はその時のことを語る。

「彼女は言いました。『あなたは2件の事件に取り組んでいて、そのうちの1件は何年も解決されていないような古い事件ですね』と。その時1つの事件しか担当していなかったので『いいえ1件だけです』と答えました。」

ローレン・ティボドー博士が微笑む。

「私は、『いいえ2件の未解決事件がありますよ』と言いました。彼は1件だけと言って喋り続けていましたけど。」

ワーナー刑事が言う。

「彼女はクレイジーだと思いましたよ。最初は何を言ってるんだろうと思いましたが、言われたことが頭から離れなくて、彼女の言ってることは何だろうと考えてたんです。そして別の事件を思い出しましたが、私はまだ担当ではなかったんです。彼女は私がそれに取り組むことになると言いました。事件解決が見えると。その時点で興奮しましたね。」

ローレンが言っている別の事件とは、1984年に起こった未解決の殺人事件。クリスマスの二日前に、町外れで女性の遺体が発見される。被害者は首を絞められ、ロープで縛られていた。遺体は緑の毛布に包まれ、ペンキが飛び散った布で再び包まれていた。

検死の結果、遺体は30歳くらいの女性で、薬物乱用歴があることが判明。法医学捜査はまだ初期段階にあり、身元を特定する手段もなく、犯人の身元を知る手がかりも見つからなかった。

被害者はJane Doeと呼ばれ、地元の墓地に埋葬された。

*英語で「名無しの権兵衛」に相当するのは、ジョン・ドウ (John Doe) 。 Doe 自体に架空の姓の意味がある。 ジョンは、ありふれた男性の名前であり、女性が対象となる場合は同様の理由でジェーンが用いられ、ジェーン・ドウ (Jane Doe) となる。「身元不明者を指す仮名」「当人の名前を隠す場合に使う偽名」という法用語で、必ずしも死体を指すわけではない。TVドラマなどでも、身元不明者や、本名を隠している人の呼び名として使われる。

ジェーン・ドウ が殺害された時、ローレンは大学生で違う州に住んでいた。ワーナー刑事は彼女がその事件について言及したことに衝撃を受ける。

ワーナー刑事は言う。

「彼女が言及しているのは、私達が抱えている2件の事件についてです。彼女がなぜ知っているのでしょう。そして一つは20年も未解決のまま眠っていた事件です。それで彼女に電話をしました。」

ローレンがその時のことを語る。

「電話で話している時に、ルート78を横切る緑色の小さなライトが見え始めました。あたかもニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア州東部の地図を見ているようでした。それが横切る時、ブルックリン橋に向かって上向きに見ました。街のエネルギーの匂いさえ感じて、ニューヨークと関連しているのが分かりました。私は、トラックの運転手は容疑者として上がっているかと尋ねました。トラックの運転席の側面がずっと見えていたからです。」

ワーナー刑事が言う。

「彼女にお礼を言って、頭に留めました。その時はまだ担当ではなかったんです。2か月後、上司がある事件のケースを取り出して言いました。『君はここにしばらくいるのだから、これに取り組んで見てほしい』と」。

ワーナー刑事がローレンに会いに行った最初の事件は未解決のままだったが、その時点では、ローレンが言及した別の事件に焦点を当てる。ローレンは犯人はトラックの運転手だと予見していたが、案の定、最初の捜査での主な容疑者の一人は確かにトラックの運転手だった。

犯人は今どこにいるのか・・。未解決事件の記憶は薄れ、証拠は汚染され、証人は死亡する。この事件では、被害者の名前さえ分からず、犯人も分からない。

しかしこの20年で法医学は大きな進歩を遂げた。

ワーナー刑事の最初の挑戦は、被害者女性の身元を明らかにすること。被害者は麻薬中毒者だったことから、犯罪歴がある可能性は十分にあると考えた。それなら彼女の指紋はファイルに残っているだろう。

AFISは犯罪者全員の指紋がある国家データベース。この女性が殺害された1984年には存在しなかった。ワーナー刑事が被害者の指紋を提出したところ、案の定、彼女は軽度の麻薬犯罪で逮捕されていた。

ワーナー刑事が言う。

「マーガレット・カルシアーノとマーガレット・グラヴァッシが該当しました。グラヴァッシは彼女の結婚後の苗字です。彼女は70年代に1年間結婚していました。結婚後の苗字では何もヒットしません。しかし旧姓ではブルックリンで250件くらいヒットしました。そして最初にかけた電話が彼女の母親でした。」

マーガレットの母親、ジョアン・カルシアーノが言う。

「マーガレットという名前の娘さんがいますかと聞かれました。私はイエスと答えました。彼はペンシルベニアの刑事だと言います。そして1984年にあなたの娘さんを見つけたと言いました。『彼女を見つけたとはどういうことですか?』と聞くと、彼女は殺害されたと言いました・・。」

この20年間、ジョアンは母親だけが理解できる恐怖を感じて生きてきた。娘が生きているか死んでいるか分からないという恐怖。ようやくそれに終わりが来た。

ジョアンは続ける。

「安堵でした。少なくとも、心の中では娘は生きていないと分かっていたからです。でもどこにいるのか分からなかった。娘は切り刻まれていて見つからないのではないか、埋められて二度と見つからないのではないか・・。本当にいろんな考えが頭をよぎりました。彼女がいなくなって寂しい・・。とても美しい子でした。なんでもできる人生だった・・。そう・・。でも終わってしまった・・。」

ワーナー刑事が言う。

「この、20年前に娘を亡くした女性は、最後に娘に会ったのは1984年の12月19日だったと言います。娘と口論になり、彼女の頬を平手打ちした・・。娘はドアから飛び出し、それが娘を見た最後の時。それが母娘の別れ方だったのです。」

母娘は、薬物依存のことで口論になっていたのだ。

翌日、ワーナー刑事と相棒は、ニューヨークのブルックリンに住むジョアンのアパートに向かう。そこには家族や友人がいて刑事達を歓迎。マーガレットの写真を見せて身元確認をした。解剖時の写真も。

ジョアンが言う。

「確かに私の娘でした。娘だと特定するのは辛いことでした。」

ジョアンが言う。

「誰が彼女を殺したか心当たりはあるか聞かれました。私は『はい』と答え、男の名前を教えました。」

そこにいた全員が間違いなくピーターだと言う。ピーター・イオサと名乗る男が最後に彼女と一緒にいるのが目撃されていた。家族の話によると、彼は彼女に致命的に惹かれていて、彼女が他の人といると腹を立てた。彼女よりもかなり年上で、20歳ほど離れていた。

ジョアンが言う。

「彼は私の娘に夢中でした。彼女を殺したのは彼だと分かっていました。娘と同じ日に姿を消したからです。それが12月19日でした。」

彼は短気でキレやすかった。実際、彼女を平手打ちしたこともあった。

ジョアンが言う。

「娘は薬をやっていました。彼はそれを買うお金を渡していたのです。彼女にはお金が必要だった。彼は誰も彼女を手に入れることはできないと言ったそうです。」

刑事達には、彼が容疑者であるという感覚があった。ただ彼を見つける方法が分からなかった。署に戻って探し初めるが、ピーター・イオサという人物はニューヨークでも全国探しても見つからない。アメリカには約56万人のピーターが住んでいる。

ワーナー刑事はローレンに電話する。

ローレンがその時のことを語る。

「彼と話し始めてからまもなく、とても視覚的な、映画のようなビジョンが見え始めました。彼が事件について描写している時、トラックの運転手が見えてきました。大柄という感じはしません。ほっそりしていて喫煙者なのは確か。トラックの白いドアが開いて、出てくるのを運転手の肩越しに見ているような感覚でした。厚いキルティングされたチェック柄のフランネルシャツ・・、冬のコートの代わりに着るようなシャツ・・。間違いなく冬のように感じました。近くに水のような匂いのする爽やかな涼しさで、どこか水辺近くのトラックの停留所です。このケースでは通り道の五大湖だろうと思います。彼の心理的なプロフィールを見てるようで、殺人の常習犯だと確かに感じる。数多くの性的暴行などをしています。」

一回限りの犯行ではなく、連続殺人犯の仕業・・。

ワーナー刑事は言う。

「彼を捕まえなければいけない。一人殺しているならまたやるだろう。その間にも何人殺しているのか分かりません。危険です。」

ワーナー刑事はピーターの名字を聞き出そうと、マーガレットの元彼に電話をする。彼は、苗字は知らないが、一度告訴状を出したことがあると言う。その記録があるかもしれないため、ニューヨーク市警に連絡したところ、ピーター・ウィリアムズということが判明。

ワーナー刑事はその名前から、彼がミルウォーキーで生活保護小切手を引き出していることを追跡。ローレンの予見通り、彼はトラックの運転手だった。彼の主なルートの一つがブルックリンからウィスコンシン。これもローレンの予見通り五大湖を通る。

ワーナー刑事が言う。

「私が初めてピーターに会った時、会いに来た理由を伝えました。顔から血の気が引き、蒼白になっているのが分かりました。青ざめていてかなり緊張していた。最後にマーガレットを見たのは、彼女をメサドンクリニックに連れて行った時で、車から降りるのを見たのが最後だと言います。彼女を見て自分は足を洗ったのだとも。彼女と親密だったことは否定しませんでしたが、殺害は否定しました。」

*メサドンクリニック
オピオイド使用障害の治療薬を調剤する医療施設のこと

ワーナー刑事には確固たる証拠が必要だったが、事件を引き受けた時からそれは存在した。全ての証拠は研究所に再提出される。

法医学の技術の発達により、遺体が包まれていた毛布にあった一本の髪の毛がピーターのものであることが判明。あとは彼のDNAサンプルを採取する必要があった。

ワーナー刑事は言う。

「彼は喜んでDNAサンプルを提供してくれました。彼は我々が髪の毛を持っていることは知りませんでした。そこを去る前に私は、犯人は彼だと思っていることをキッパリ伝えました。我々は彼はミルウォーキーに長くはいないだろうと思っていましたが、案の定、私達が訪れてから数週間後にそこを去りました。」

DNA分析の結果、マーガレットが包まれていた毛布にあった一本の髪の毛とピーターのDNAが一致することが判明。

ワーナー刑事が言う。

「ツーサンで彼を逮捕した時、彼は多くを語りませんでした。無罪の主張もしませんでした。彼が言ったのは、逮捕状を読んで髪の毛の件を知ったこと。それが衝撃を与えたのだと思います。その時点でもうこれまでだと気がついたのでしょう。」

ピーター・ウィリアムズは第一級殺人罪で起訴される。しかしペンシルベニアへ戻された彼は、裁判の1か月前に癌で死亡した。

ワーナー刑事は言う。

「裁判まで行けたらよかったのにと思います。陪審で有罪とされた方がどんなに良かったか。家族や友人にとってもその方が明確な終結になっただろうと思います。」

ジョアンは言う。

「欺かれたように感じました。彼が娘を殺した時、彼女がどこにいるかも分からなかった。法廷で彼の顔が見たかった。私に会ってほしかった。再び欺かれたような気がしています。辛かった・・。というかすごく気分が悪かった。泣き崩れました。あんな終わり方は嫌だったから。彼には私に会ってほしかったのです。でも、うまくはいきませんでした。」

マーガレット・カルシアーノの身元が明らかになった時、母親の要請で遺体は掘り起こされ、現在は母親の家から数ブロック離れた墓地に埋葬されている。

ワーナー刑事は言う。

「座ってブルックリン橋を眺めていた時、ローレン博士が言ったこと全てを考えていました。そしてその全てが当たっていたことに気づきました。その時は理解できなくて、生かせてなかったのですが、線に沿って進んでいくと全てのピースが収まりました。断片的な情報を得る時、やるべきことはパズルのようなもの。ジグゾーパズルが当てはまるか試してみなければいけません。全てのピースをはめ込むことができたら犯罪が解決します。」

ローレンは言う。

「人々が行き詰まるところはそこだと思います。超能力は心霊的なもので、とてつもなく大きくて魔法みたいなものと思っている・・。でもそうではありません。それは単に情報を識別する別の方法です。成功するための最高の秘訣は、非常に実践的なことだと言えます。これは事件解決に役立つだろうと思ったら使う。解決策ではなくツールとして見るべきです。超能力者は事件は解決しません。解決するのは警察。助けがある場所では、良いものと悪いものを選別することだと思います。」

ワーナー刑事は最後に言った。

「もしローレン博士のところに行ってなかったら事件は解決しただろうか。うーん・・。物事の仕組みが奇妙ですね。まるでなるべくして起こっているような気がします。物事には理由があって起こっていると感じます。」

有罪が証明されるまで全ての容疑者は無実だ。ピーターウィリアムズが裁判前に死亡したため、彼がマーガレットを殺害したか誰も確かなことは言えないが、この話にはまた別の展開がある。

容疑者死亡で裁判がなかったため、当局はピーターのDNAを国家データベースに提出することを許可されていない。そのため、他の未解決事件を解決しようとしている場合、ピーターを容疑者としてチェックすることはできないのだ。彼が他にも殺人を犯したのか、何回殺したのかは永遠に分からないかもしれない。

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