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迷宮入り?犯人を捕まえてと訴える被害者の霊

1983年2月13日土曜日。イギリス・ロンドン郊外。超能力者のクリスティーン・ホーラハーンは危険な何かを第六感で感じていた。

クリスティーンは言う。

「何かおかしいとは思いましたが、部屋が冷たいのはなぜか分からないでいました。足音やドアの開け閉め音が聞こえます。憂鬱な気持ちになりました。何が起こってるのか分からないけど非常に激しい音だったから。」

その翌日、ジャクリン・プールという25歳の女性と連絡がつかないと彼女の友人が警察に連絡をする。ジャクリンことジャッキーが、2日間電話にも出ないと言う。

安否確認のために警察が部屋に入ると、性的暴行を受け絞殺された彼女の遺体を発見。

敷地内への強制侵入の跡はなく、窓もドアも壊れていない。彼女と付き合いのある人物だろうというのは明白だった。ジャッキーは電気コードで絞殺されていて、服は乱れ、私物は盗まれていた。

捜査チームを率いるランディー警視が言う。

「彼女は指輪やネックレス、ブレスレットなどをかなり所有していましたが、その多くがなくなっていました。彼女の指には取れなかった何かが残っていたと思いますが、外せるものはすべて消えていました。」

ジャッキーの遺体は発見されずに48時間放置されていた。警察は手がかりを求めてジャッキーの友人や家族に聞き込みを開始。襲撃の詳細を報道陣に公表する。

最初からたくさんの名前が挙がっていた。出て行った別居中の夫も含めて。

遺体が発見された翌日、現場から5㎞離れた所で、超能力者のクリスティーン・ホーラハーンは自分の能力が再び試される時だと感じていた。

クリスティーンが当時のことを語る。

「しばらくすると何かが見え始めました。それがだんだん大きくなって、形になります。そこから若い女性の輪郭が見えました。彼女はとても動揺していてイライラしているようでした。いちかぱちか聞いてみようと思って、私は若い女性が殺害されたことを知っていると言いました。私がジャッキー・プールと言う名前を出すと、彼女はジャッキー・ハントだと名乗りました。

なぜ彼女は自分をジャッキー・ハントだと名乗ったのか。

クリスティーンは続ける。

「そこでどうやって助けたらいいかと聞くと、彼女は自分を殺した犯人を知っていると言います。私は確かな証拠がないと警察には行けないと言いました。霊が現れて殺されたと言っている・・と言うわけにはいかない、有益な証拠が欲しいと。すると急に彼女は消えたんです。だからいなくなったのだと思いました。警察に行くことは不安でした。他のソースから得た情報だと疑われると思ったからです。」

クリスティーンはもっと手がかりが欲しくて仕方がなかった。霊は翌日の夜戻ってくる。

クリスティーンはその時のことをこう説明する。

「テレビを観ているようでした。ぱっと現れて・・別次元です。それから私は旅に連れられて行ったような感覚になりました。彼女が感じたことを私が感じている・・。アパートで、スローモーションで引きずられている感覚。彼女がまだその渦中にいるかのようでした。ひどかった。もがいているのも、何が起こっていたかも全て見えました。」

クリスティーンは、自分はサイキックを通しての殺人事件の目撃者で、ジャッキー・ハントという女性が若い男によって殺されたのを見たのに違いないと思った。

ジャッキーは自分の部屋のレイアウトをクリスティーンに見せていた。あまり手がかりはないが、犯人に裁きを・・!と被害者が懇願するのを無視できない。

クリスティーンは言う。

「私は彼女が経験した苦痛を理解し始め、警察に行って実際に彼女を殺害したのは誰か伝えることを考えました。 たくさんのことを考え始めます。 でも自分も守らなければいけない。 少し怖くもありました。」

クリスティーンは自分が見たことを警察に説明したいものの、警察は超能力の使用に懐疑的なことも知っている。嘲笑される危険を冒さなければならない。

クリスティーンは言う。

「どうすればいいのか分かりませんでした。警察に電話はかけたくはない。でももうジャッキーが私から離れないことも分かっていました。もはや助けを求めに来た被害者というより、友達のようになっていたからです。やがて、ジャッキーが私に『今電話して』と言っているのを感じました。耳の中で『今電話して』と言ってるのが本当にはっきり聞こえたんです。」

殺人捜査チームは犯人を突き止めるために24時間体制で動いていた。侵入の後がなかったことから警察は、犯人はジャッキーと顔見知りだと推定する。

ジャッキーには非常に多くの友人がおり、70人以上の容疑者の中から消去していかなくてはならなかった。多くはすぐに消去できたが、同時に多くの人物が詳細に調査され、出だしから捜査はとても困難なものとなる。

クリスティーンは、嘲笑されるリスクを冒し警察に連絡する。

ランディー警視が言う。

「自分がそういうことを信じるタイプではないことは認めざるを得ません。でも同時に、少しでも役に立つ可能性があるのなら試さなければいけません。」

バッターズ巡査とスミス巡査が、クリスティーンの話を聞くために派遣される。 クリスティンは知らなかったが、殺人現場に最初に到着した警官がバッターズ巡査だった。彼は2003年に亡くなっている。

亡き夫の人生を変えたその日のことを覚えているというバッターズ巡査の妻、アン夫人が当時のことを振り返る。

「夫が被害者の遺体を発見したのは初めてだったと思います。第一発見者ということで彼は現場に何時間も居ました。アパートのレイアウトも状況も当然よく知っています。そこにあったもの、壊れたものやひっくり返ったもの、不自然に思えたものとか・・。 夫は自分以上にそこまでの詳細を知る人はいないだろうと言っていました。」

クリスティーンは言う。

「ついに来たわよ、と私は言っていました。あなたがここにいることを願ってる、ここまで来たんだからあなたがここにいてくれなきゃ、と。そしてジャッキーは・・ちゃんとそこにいたんです。私はジャッキーと同調していました。 彼女は説明できることはすべて説明し、私にできる限りの詳細を教えてくれました。」

クリスティーンの最初の情報は大当たり。バッターズ巡査はジャッキー・プールの旧姓がハントだったことを知っていた。

ジャッキーはクリスティーンに家の中を案内し、全てがどこにあるのかを見せていた。 クリスティーンはキッチンに処方箋用紙、2つのカップ、黒いアドレス帳が見えると言う。

それはバッターズ巡査がジャッキーのアパートで見たものと一致していた。 これらの詳細は報道機関に公表されていない。

クリスティーンは言う。

「彼女がどこに横になっているかも、彼女の手も見えました。 指輪を2つ着けていて、彼女の手から外せなかったものでした。」

ジャッキーのジュエリーの紛失は報じられたものの、2つの指輪がつけられたままだったことは報道されていなかった。

ジャッキーはクリスティーンに、犯人が着ていたジャンパーを捨てようとしているが、それを手に入れることはとても重要だと強調した。

クリスティーンは生前のジャッキーや彼女の知り合いに会ったことはない。しかしトランス状態の時の彼女は、ジャッキーの家族や友達の名前を多く口にした。その中の名前の一つは謎のまま。

謎の名前はバーバラ・ストーン。その人物についてジャッキーが特に何かを語ったわけではないが、クリスティーンは彼女からの情報は全て警察に提供する。

捜査チームの誰もバーバラ・ストーンという名前を聞いたことはなかった。不可解な名前があったにもかかわらず、バッターズ巡査はクリスティーンの洞察力に驚く。

クリスティーンは言う。

「この時点になると、バッターズ巡査は、ジャッキーに聞いてほしい、と言っていましたね。犯人をどう描写するか聞いてほしいと。ジャッキーは、犯人はおうし座だと言いました。 暗い雰囲気と褐色の肌をしていて、タトゥーがあると。」

クリスティーンは警察官に、犯人のプロフィールを伝えているようだった。しかし名前に勝る情報はない。

クリスティーンは言う。

「トランス状態に入るために静かに、とてもとてもとても強くジャッキーと波長を合わせる必要がありました。彼女を本当に近くに連れてこなければいけません。彼女が実際に私の中に入ったのを感じました。」

クリスティーンは、無意識を解き放つリモートライティングと呼ばれる技術の力を借りる。この超能力によって犯人の名前が明らかになることを期待して。

クリスティーンは言う。

「ジャッキーが名前を綴るのを手伝ってくれました。誰かが私の手を実際に取って、とてもゆっくり書いているようでした。とってもゆっくりね。書いた瞬間にPorkeyという名前が浮かび始めて、とてもクリアになりました。 ジャッキーは犯人のニックネームだと言います。ニックネームで知られていると。バッターズ巡査が私に言ったのを覚えています。『Porkey,Porkey…間違いないですか?』と。私は書いた紙を見せました。彼はそれを見てかなり驚いていましたね。 その時点で私は何かが当たったこと、何か重大なことが起こったと分かりました。」

ポーキーという名前を聞き、2人の警官の背筋が震える。それはジャッキーのボーイフレンドの友人、アンソニー・ルアークのニックネームだったのだ。ジャッキーもよく知る人物。ポーキーは既に第一容疑者で事情聴取も受けていた。

その日、バッターズ巡査はクリスティーンの能力を確信し、捜査チームに戻る。彼は捜査チームに超能力者の証言を信じるよう説得しなければならなかった。

ランディ警視は当時のことを語る。

「私はバトラー巡査に言いました。彼女は地元の噂話を聞いたのだろうと。彼女は調査に役立つ情報を全く持っていませんでした。」

ジャッキーはジュエリーを盗まれているが、それは犯人を追う上で極めて重要である。

ランディー警視は言う。

「私はバトラー巡査に言いました。彼女は周囲で人が話すのを聞いたのだろうと。彼女は調査に役立つ情報を全く持っていませんでした。」

警察は超能力者の仕業を軽視し、ポーキーから真実を導き出そうとする。

ランディー警視は言う。

「クリスティーンはバッターズ巡査に、犯人はおうし座で20代前半。ダークヘアで褐色の肌にタトゥーがあると伝えていました。驚いたことに、これはポーキーのプロフィールと一致していました。」

ジャッキーの霊はジャンパーに注目を集めようと必死だった。ポーキーの家を捜索中、ゴミ箱から見つかったジャンパーを警察は回収。そのジャンパーから、ジャッキーの服の繊維が見つかった。

この証拠によりポーキーとジャッキーの接触がリンクする。しかしポーキーの言い分はこうだ。ジャッキーが亡くなった週にジャッキーと会ったから接触があったのだと。

クリスティーンからの犯人の指摘も警察の容疑もあったにもかかわらず、捜査15ヶ月にして捜査チームは解散することになる。

ランディー警視は言う。

「証拠はありました。しかし当時は起訴するには十分ではなかったのです。遺族がまだ解決策を見つけられない時に解散したのは非常に残念でした。」

バッター巡査の超能力者と協力したいという訴えは無視され、彼は捜査チームの解散に対処するはめになる。

アン夫人は言う

「夫はとても悔しがっていました。このために多くの時間を費やしてきたからです。証拠も十分にあると思っていましたから。」

クリスティーンは言う。

「犯人が殺人の罪から逃れたことにジャッキーは非常に怒っていました。犯行後も彼は全く感情がないかのようにその場を立ち去っていましたから。」

クリスティーンも警察から信じてもらえなかったことに憤りを感じていた。

「私にできることは全てやった。情報は全て提供した。ジャッキーがくれた情報は真実で信用のできるものです。これ以上自分にできることはなかった。ただどういうわけかずっと、いつか罪は裁かれると思っていました。それがいつかは分からなかったけど。」

クリスティーンにはこの未解決事件が再捜査されるとの確信があった。そして時は来る。

1999年、クリスティーンは再び問題を抱えた霊の訪問を受ける。

クリスティーンは当時を振り返る。

「金髪の女性が見えました。ジャッキーのようでした。でも思い過ごしかもしれない。それがどういう意味を持つのか理解できないでいました。」

クリスティーンは知らなかったが、警察は1999年に一般人からの新たな情報の通報を受け、再捜査していた。その後ポーキーは自動車犯罪に関与し、彼の DNAプロフィールは国家 DNAデータベースに登録される。

偶然だったのか、それともジャッキーがクリスティーンに殺人犯の追跡が再び始まったことを知らせようとしていたのか・・。

この間に最先端の DNA技術が開発され、警察がジャッキーのアパートから採取した法医学証拠を検査できるようになった。

遺伝子データベースの導入はまったく新しいものだった。2001年から現在に至るまで、DNA技術は非常に正確であるため、法医学者はDNA プロフィールから 10 億人に 1 人の個人を識別できる。

犯罪現場から採取された犯人の体液とジャッキーの爪の下から抽出された皮膚が法医学で検査される。しかし結果には12か月かかった。

そして12か月後、ポーキーのDNAと完全に一致したという結果が出る。驚くべきことに、犯人は18年前にクリスティーンが名前を書いた人物だったのだ。

罪から逃れたと思っていた事件で逮捕されたことに唖然とする犯人は、2001年8月に裁判にかけられる。

ランディー警視は言う。

「私達は長いこと彼が犯人だと知っていました。ようやく・・彼が長いこといなくなってくれることを望みます。皆が判決が正しい方向に進むことを願っていました。証拠は非常に強力でしたが、陪審員に100%確信を与えることはできません。遺族は非常に心配していました。」

バッターズ巡査は2週間の裁判に出席する。彼はクリスティーンがジャッキーの霊から受け取ったという130の具体的なポイントをリストアップしていた。彼女が言ったことがどれだけ正しいか確かめるために。

アン夫人は言う。

「夫は自分の目で確かめたかったのだと思います。自分で証明したかったのでしょう。クリスティーンが提供した情報の量が他の殺人事件の捜査にも利用できるのであれば、明らかに大きな価値があるはずです。」

バッターズ巡査のメモによると、ジャッキーの個人情報、犯行現場の配置、ジャッキーがどうやって犯人と知り合ったのかなど、裁判中に明らかになった情報と120の事実が一致していた。

クリスティーンは被害者もその家族も、友達グループについても全く知らなかった。それにもかかわらず、彼女が提供した多くの情報が正確だと証明された。

DNA鑑定により、ジャッキーが殺された当日、ポーキーは彼女のアパートにいたことが証明される。ジャッキーがクリスティーンに話していた茶色のジャンパーも証拠として提出されていた。1983年から警察が密封袋に入れて保管していたジャンパーは、裁判で証拠として提出され、重要な役割を果たした。

ポーキーはこれまでの供述を一転。殺人があった夜にジャッキーを訪ねたが、自分が去った時は彼女は生きていたと主張する。検察の確かな証拠がこれに異議を唱えた。 そして2週間後、陪審は満場一致でポキの有罪判決を下し、彼は終身刑を宣告される。はっきりとした殺人動機は不明。

ジャッキーの家族についに正義が下された。

ランディ警視は言う。

「最終的に有罪判決が下されたとき、遺族は本当に大喜びでした。歓喜の声をあげて叫んでいました。」

しかし18年前にクリスティーンがジャッキーの周囲の人物としてあげた謎の名前・・バーバラ・ストーンとは誰だったのか。

アン夫人が言う。

「裁判で夫はジャッキーの兄弟の横に座っていました。夫がバーバラ・ストーンという名前を知っているかと聞くと、彼はもちろん、ジャッキーの親友だと言います。バーバラはジャッキーが亡くなる1~2年前に交通事故で亡くなったと。それが謎の名前の答えでした。」

ジャッキー・プール事件へのクリスティンの関与はニュースの見出しを飾る。

アン夫人は言う。

「クリスティーンはかなり優れていたのでしょうね。夫はこの情報はジャッキーから直接来た以外には考えられないと言っていました。それだけの詳細をクリスティーンが知っていることはあり得なかったからです。」

クリスティーンは古い友人の最後の訪問を受ける。

クリスティーンは言う。

「ジャッキーは笑っていて幸せに見えました。18年前に見た彼女とは別人のように。彼女が安らぎを見つけたことをとても嬉しく思いました。でもこれで全てが終わってしまったようで少し悲しくもなりました。彼女は私の人生でとてもとても特別な存在でしたから。」

そしてジャッキーはいなくなる。 この並外れた関係は20年近くにわたって続いた。

ポーキーは18年間、本来持つべきではなかった自由を手に入れたが、18年後にようやくこれが正義となった。









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