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【前世の記憶】先住民?石器を語り狩り道具を作る息子


アメリカ、ニューヨークのブルックリン。アネットとカーライルには2人の息子がいる。次男の名前はオーガスト。

オーガストはおとなしい子供だったものの、体力があって運動神経が良く、精神的にも強かったことから、父カーライルは息子を軍人のようだと思っていた。

彼はアルファベットや色など、すでに知っているかのようにスムーズに覚え、ブラックジャックの遊び方、数学の概念を覚えるのも早かった。カーライルは息子を地味に負けず嫌いだと表現する。

オーガストが3歳のある日、アネットは本の読み聞かせをしていた。その本の内容は、ある朝ひな鳥が巣から落ちて母鳥を探すが、母鳥が誰か分からない、そこで周囲に、あなたは私のお母さんですか?と聞いてまわり、無事に見つけるというもの。

本の最後になるとオーガストは母親を見て言った。

「僕は自分のお母さん分かるよ。ママがお母さんだって知ってるの。雲の上からママのこと見てたから。」

アネットは聞き返す。

「本当?雲の上からママが見えたの?」

「うん、ここに来る前ね。」

そう答える息子にアネットは聞く。

「ママを上から見てたなら、どうやってここに辿り着いたの?」

「ジャンプしなきゃいけなかった。そして紐を滑り降りなきゃいけなかった。少し怖かったけど、紐に捕まってママのところまで降りてきたの。」

「どこに?どうやってママのお腹に入ったの?」

「頭のてっぺんから入ってお腹まで行った。僕がママを選んだんだ」

と母のお腹まで指でなぞる。

彼は作り話をするような子供ではなく、自分にとって意味のないことを繰り返して話すような子でもない。不思議なことだとカーライルも息子の発言に注意を払う。

それから間もなく、アネットが寝かしつけている時のこと。オーガストが

「ママはずっと僕のママじゃなかったんだ。ママの子になる前に別の家族がいたの。ママはいなかった。」

と言う。

さらに、家族に送り出されて自分達は行かなきゃいけなかったと言う。そして「森に行かなくちゃいけなかった」と何度も繰り返した。森で動物を見つけて捕まえなくてはいけなかったと。彼は「僕は男の子だった。大人じゃなかった。」と言った。

彼が言うには、男は皆、森に行って特定の任務を成し遂げる義務があった。それにはスキルを要し、危険を伴った。いわゆる通過儀礼のようなものだと言う。両親は通過儀礼や、冒険旅行について話したことはなく、両親が知る限り彼はテレビで見たこともなかった。どこからその考えは来たのか、両親は不思議に思う。

4歳の頃、突然ベッドに飛び乗り、

「これが昔踊っていたダンスだよ」

と言って、前後にステップをし始めたことも。

彼は何かを収集するのが好きだった。海で石を集めたり、公園で棒を拾ったり、自分が重要と思ったものならなんでも集めた。

両親はそれらを集める息子を待つのに多くの時間を費やした。彼が棒を探すには公園の奥まで行かなくてはいけない。そしてそれらの棒を拾い、引きずって帰るのだ。こうして集めたものを飾っていた。

両親はいつも彼のポケットにある棒や鳥の羽、石などを捨てるはめに。最初は単に子供が拾っているだけだと思っていたが、その収集癖は変わることはなかった。アネットは特に心配もしていなかった。息子がナイフを持ち歩くことに異常な関心を示すようになるまでは。

そのうちオーガストはナイフを所有したいと言うようになる。昔はナイフを持っていたので使い方が分かると言うのだ。

家族は銃やナイフを持っておらず、ハンティングにも行かない。

アネットは聞いた。

「ナイフを保持するにはまだ早い。持ったところでどうするの?ただ見ているだけになるわよ。だって使わせないから。」

すると彼は、

「使わない、持ってるだけ。見てるだけでいいんだ。」

と言い、さまざまな角度から両親を説得する。それならデコレーションとなんら変わらないからと、両親は条件付きで小さなナイフを買い与えることにする。

ナイフを勝手に出したりしないこと、誰にも見せないこと、手の届かない場所に両親が保管することが条件だ。

そして数種類の小さなナイフを購入すると、それを見つめては興奮した。彼はその仕上がりを高く評価しているように見えた。

それから4〜5日後、学校から帰ると、彼は外で棒を削りたいと懇願する。

今まで一度もさせたことはないことだ。が、一度願望を満たせば満足するかもしれないと思い、アネットが隣で見ることを条件に許可を与える。

すると彼はたちまち棒を全て削ってしまう。そしてアネットを見ると言った。

「血も出てないし大丈夫だよ。ナイフの使い方は知ってるよ。」

この時の彼はわずか6歳である。

カーライルも息子がナイフを武器としてではなく、ツールとしての使い方を知っていることに驚く。

彼はその棒をその後も大事にした。

彼が話すことの一部が通過儀礼を指している可能性を感じたアネットは、ネイティブアメリカンの男性がやらなければいけなかったことなどを調べ、いくつかの部族の記録を見つける。

するとパナマとコスタリカの境界線にあった部族に、オーガストが言っていたこととの類似点を見つけた。

オーガストの8歳の誕生日の前、家族はロングアイランドの小さなビーチで兄と遊んでいた。彼は一つの石を拾うとアネットの元へ飛んできて言う。

「これ、矢じりだよ!」

矢じりとは、矢の先端につけ、射当てたとき突き刺さる部分のこと。

石にしか見えないアネットが、「本当?」と言うと、彼は「これは矢じりだよ」ととても自信ありげに答える。

家族皆でその石を見ていると、彼はそれを裏返し、言った。

「なんかこれおかしい。僕が使ってたタイプじゃない。これは違う。」

どこが違うのかと聞くと彼は紙に描いて説明する。

「これが僕が使っていた矢じり。」

彼の矢じりには下の方にもっと窪みがあった。

その夜、彼は、

「博物館へ行かなくちゃ。この矢じりのことを聞きたい。」

と言う。NYに帰ってから行くことにするが、旅行の間も彼は毎日矢じりを手にしては眺め、その感触を感じていた。

「僕はこれが何か分かる。でも誰が使っていたか、どこから来たのか知りたいんだ。あと周りに誰がいたか。」

アネットは、もしこれが鏃ではなく石だと言われたら、息子が打ちひしがれるのではないかということを心配していた。

NYへ帰ると博物館に彼を連れて行き、息子が見つけた石を見てくれる人はいないかと尋ねる。オーガストは職員に矢じりを渡し、その答えをじっと待つ。

職員は言った。

「君の言う通りだよ、これは鏃だ。」

振り返れば、これまでの息子の話しに間違いはなかった。この矢じりがその証拠でもある。彼が言っていたことは想像や夢ではなく、作り話でもなかった。

オーガストはブルックリンに住む少年でもあり、インディアンボーイでもあるのだ。息子は前世を生きていたのだと、少しの疑いもなくなった。

「このケースでは自分が間違っていて良かったと思いました。息子が数年かけて訴えてきたことだったからです。」

オーガストはその事実に非常に誇らしげだった。自分が過去に使用し、作っていたもののおかげで、他の誰も気づかないようなことに気付けたのだから。

彼はその矢じりを小さな袋に入れて、ベッドの上で大切に保管している。それなしで眠ることはなく、今でも毎晩チェックしている。

オーガストは17歳になっていた。

「矢じりが本物だと鑑定してもらったことが前世に関する最後の記憶です。ある意味、鏃は前世の記憶の象徴とも言えます。」

アネットは、母親の母親、つまり彼女の祖母が養子だったことを人生の後半になってから知った。血統を調べていくうちに祖母は、コスタリカまたはパナマの部族だったことを知る。

オーガストは言う。

「家族がセントラルアメリカの部族と繋がっていることはとても興味深いと思います。直接僕の経験と関連があるのか分からないけど、あるのかもと思ってます。ミステリーな部分ですね。母が僕の前世の経験を受け入れてくれたのを通して、自分自身が受け入れることを容認しました。ある意味、一人じゃないと知っていたからかも。だから前世について語ってもいいんだと安心できたんだと思います。受け入れられてるって分かってたから。」

アネットは言う。

「母がよく偶然はないと言っていましたが、この件を通してその通りだと思います。オーガストは部族精神をベースボールに移行させたのに気づきました。チームメイトにも同じ戦士気質をもたらしているんです。」

アネットは続ける。

「彼は今では現世に時間を費やしているので、前世のことを覚えている必要はないのだと受け取りました。前世からのポジティブな一面を持ってきて、美と優雅を持って向上しているように感じます。息子をこのうえなく誇りに思います。」

オーガストはもうすぐ大学生。大学にも矢じりを持っていくと言う。

「将来はまた別の人生のような気がしています。いいことも苦労もあるだろうけど、それも通して人生。以前は時間についていつも混乱していました、特に小さい頃は。何度か瞬きをしたら全てが終わる、人生が終わってる気がしていました。瞬きと瞬きの間に何をするかで自分が決まる。その記憶があるから、また別の人生の可能性があるかもと思える、最善を尽くそうと思うんです。」


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