遺伝(ノーベル賞特別企画)-CRISPR/Cas9-No.4

CRISPR/CasシステムのInterferenceフェーズについて、記載していきたいと思う。

前回、Expressionフェーズを記載した。

TypeⅠ~Ⅲがあり、

TypeⅠでは、crRNAはCascade複合体になる。

TypeⅡでは、Cas9-tracrRNA:crRNA複合体が形成される。

TypeⅢ-Aでは、Csm複合体にcrRNAが結合し、TypeⅢ-Bでは、Cmr複合体にcrRNAが結合する。

Interferenceフェーズについて、

crRNAがある種のCasタンパク質と結合し、Casタンパク質-crRNA複合体が形成される。

そして、いずれのタイプの場合にも、crRNAはCasタンパク質-crRNA複合体を細菌に侵入してきた標的DNAまたはRNAへ誘導する役割を担っている。

画像1

図1 Interferenceフェーズの概要

crRNAの塩基配列が外部から侵入してきた核酸の1部に対して相補的な配列を保つ場合、Casタンパク質-crRNA複合体はcrRNAとの相補的な結合によって核酸に結合し、それらを分解する。

TypeⅠシステムでは、Cascade-crRNA複合体に結合したCas3が2本鎖DNAを切断する。

画像2

図2 大腸菌TypeⅠ-EシステムによるDNAの分解

Cascade-crRNA複合体はcrRNA部分との相補的な結合によりDNAに強く結合する。

次にCascadeのCse1サブユニットの働きによってDNAの2本鎖は部分的にほどからRループが形成される。

このとき、Cascade自身も構造変化をお越し、ヒスチジン-アスパラギン酸(HD)ドメインとヘリカーゼドメインを持つCas3タンパク質がCascadeに結合する。

Cascadeに結合したCas3は、まずHDドメインの働きによってDNAの片側の鎖の1箇所を切断する。

すると、Cascade-crRNA複合体はDNAから遊離する。

そうして、2本鎖DNAはCas3のヘリカーゼドメインの働きによって解かれ、さらにHDドメインの働きによって分解される。

TypeⅡシステムではCas9が2本鎖DNAを切断する。

画像3

図3 Cas9によるDNAの分解

Cas9-crRNA:tracrRNAから構成される複合体がcrRNA部分で標的DNAに相補的に結合する。

Cas9のHNHドメインがcrRNAと相補的に結合したDNA鎖を切断し、RuvCドメインがもう片方のDNA鎖を切断する。

TypeⅢ-Aシステムでは2本鎖DNAが切断されるがそのために必要な因子は同定されていない。

TypeⅢ-Bシステムでは、Cmr複合体が1本鎖RNAを切断する。

画像4

図4 各種Cmr複合体によるRNAの分解

PfCmr-crRNA複合体の場合は、crRNAの3’末端から数えて14塩基目の1階所で標的RNAを分解するため、3’ルーラーメカニズムと呼ばれている。

TtCmrは標的1本鎖RNAをcrRNAの5’末端側から順に6塩基の間隔の5箇所で切断するため、5’ルーラーメカニズムと呼ばれている。

**********

ようやくCas9がでてきました!

次の回ではCas9によるゲノム編集について、記載していきたいと思います。

引用文献:新海暁男 CRISPR-Casシステムの構造と機能 生物物理 2014;54(5):247-252

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?