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全微分可能性と複素微分可能性

複素平面から複素平面への関数$${w=f(z)}$$は、$${z, w}$$の実部虚部をそれぞれ$${z=x+iy, w=u+iv}$$とすると、$${u(x,y)+ iv(x,y)=f(z)}$$と表すことができる。この$${u(x,y), v(x,y)}$$はそれぞれ実数値の二変数関数であり、これを並べることで、ベクトル値関数を定めることができる。

つまり、$${f:\mathbb{C}\to \mathbb{C}}$$は$${(u,v):\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2}$$とみなすことができる。

このベクトル値関数$${(u,v)}$$が微分可能(全微分可能)であることは、$${u, v}$$がともに全微分可能であることと同値なので、ベクトルを用いると、

$$
\begin{pmatrix} u(x,y)-u(x_0,y_0) \\ v(x,y)-v(x_0,y_0) \end{pmatrix}
=
A
\begin{pmatrix} x-x_0 \\ y-y_0 \end{pmatrix}
+
o(\lvert(x,y)-(x_0,y_0)\rvert)
$$

となる行列$${A}$$が存在することである。基底を明示して$${e_1=\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}, e_2=\begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix}}$$を用いると、

$$
(u(x,y)-u(x_0,y_0))e_1 + (v(x,y)-v(x_0,y_0))e_2 \\
= A((x-x_0)e_1+(y-y_0)e_2) + o(\lvert(x,y)-(x_0,y_0)\rvert)
$$

とも表せる。

一方で、複素微分可能性は

$$
f(z)-f(z_0)=\alpha(z-z_0)+o(\lvert z-z_0\rvert)
$$

となる複素数$${\alpha}$$が存在することである。これを実部と虚部に分けて書くと、

$$
(u(x,y)-u(x_0,y_0))+i(v(x,y)-v(x_0,y_0)) \\
= \alpha((x-x_0)+i(y-y_0))+o(\sqrt{(x-x_0)^2+(y-y_0)^2})
$$

である。

$${o(\sqrt{(x-x_0)^2+(y-y_0)^2})=o(\lvert(x,y)-(x_0,y_0)\rvert)}$$に注意して、二つの式を比較しよう。

実関数としての全微分可能性は

$$
(u(x,y)-u(x_0,y_0))e_1 + (v(x,y)-v(x_0,y_0))e_2 \\
= A((x-x_0)e_1+(y-y_0)e_2) + o(\lvert(x,y)-(x_0,y_0)\rvert)
$$

であり、複素関数としての微分可能性は

$$
(u(x,y)-u(x_0,y_0))+i(v(x,y)-v(x_0,y_0)) \\
= \alpha((x-x_0)+i(y-y_0))+o(\sqrt{(x-x_0)^2+(y-y_0)^2})
$$

である。さらに、見やすさのために

$$
\Delta u=u(x,y)-u(x_0,y_0) \\
\Delta v= u(x,y)-u(x_0,y_0) \\
\Delta x = (x - x_0) \\
\Delta y = (y - y_0) \\
o = o(\sqrt{(x-x_0)^2+(y-y_0)^2})=o(\lvert(x,y)-(x_0,y_0)\rvert)
$$

とおくと、上の式は

$$
\Delta u e_1 + \Delta v e_2 = A(\Delta x e_1 + \Delta y e_2) + o \\
\Delta u + i \Delta v = \alpha(\Delta x + i \Delta y) + o
$$

となる。さらに、$${\mathbb{C}}$$を実ベクトル空間として基底$${v_1=1, v_2=i}$$をとることにすると、$${\alpha=a+bi}$$倍を行列表示したとき$${\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a\end{pmatrix}}$$となることから、

$$
\Delta u v_1+ \Delta v v_2 = \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}(\Delta x v_1 + \Delta y v_2) + o
$$

となる。ここが一般の二次正方行列ではない、という制約を与えるのがコーシーリーマン方程式である。

つまり、複素関数の場合も上のようにして実関数と見たとき、

実関数としての全微分可能性は、以下を満たす行列$${A}$$が存在すること。

$$
\Delta u e_1 + \Delta v e_2 = A(\Delta x e_1 + \Delta y e_2) + o
$$

であり、複素関数としての微分可能性は、以下を満たす行列$${\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a\end{pmatrix}}$$が存在すること

$$
\Delta u v_1+ \Delta v v_2 = \begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix}(\Delta x v_1 + \Delta y v_2) + o
$$

という違いがあることがわかる。


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