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スガシカオ

好き。だけど素直に好きなわけじゃなくて、どこか悔しくて、どこか泣きたくなる好き。それが僕にとってのスガシカオさんだ。

「言わなくてもわかってるよ」と人を包み込む荻窪の夜道に、スガシカオさんの曲「愛について」はこの上なく合う。
歌詞通り、木枯らしに震えながらすずらん通りを抜ける夜。歌詞通り、この曲はかじかんだ手を温めてくれる。どことない不安に駆られていた僕は、ゆっくりと拳を解く。サビが流れる。シンコペーション気味のベースが目の前をはらりはらりと踊る。未熟さと傷ついた日々を、笑って思い返させてくれる。

"Oh baby 僕は君に話しかけてる。あの日のように。いつものように"
愛について/スガシカオ

この歌詞。僕が一番好きな歌詞だ。笑ってしまった。思わず笑ってしまった。素敵すぎて、悔しくて、「なんでそんなとこまでわかってくれるの」と呟いてしまう。この一節を聞くだけで、僕の心は落ち着く。歩を進めながら、届かないかもしれない思いを口に出す。忘れていないことを、自分でも確認する。あの日のように、また話せる日が来ればいいのに。月を見る。いつものように君のことを考えてしまう自分が、少し悔しい。なんて優しく包んでくれる歌詞なんだろう。

涙を流し、切なさをまぶたの裏に浮かべ、素晴らしい日々を願う。
そんな自分でも「いいんだ」と、この曲は教えてくれる。


もう一曲。むず痒くなるほど好きな曲が「月とナイフ」だ。
包み込みたい優しさと、ぶつけて壊してしまいたい愛おしさ。好きなことが苦しくて、ひとしきり泣きじゃくった後のような、感情の美しさに、アルペジオが映える。スガシカオさんのギターは、いつだって表情を見せてくれる。この曲の表情は、雑踏から夕焼けを眺めている。「これだけ好きなのに伝わらないのも、まぁわかってるけど。」と訳される「好き」を歌っているように、僕には聞こえる。かぐわしい風に靡かれたい。

この曲で愛しているのは、Aメロのコード進行。「ムネをナイフでさいて、えぐり出してもいい」この、「り出」の部分でDからG#m7-5に進行するここの「G#m7-5」が唄う、朗らかでどことなく寂しい気持ちが、狂おしく好きだ。静かな愛と激しい愛の両方を握っているこの曲に、このコードが絡みあう。アンビバレントな人間の優しさを汲み取ってくれる、素敵な曲だ。

駄文長文にお付き合いくださりありがとうございました。

#note #日記 #懐かしくて泣きそうになるよ #スガシカオ #月とナイフ #愛について


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