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国産クラッカーシェア約90% 「カネコ」~火薬と花火とクラッカー~

江戸の花火師からクラッカーへの変遷

大洲に店舗を構えることが決まり、大洲市の周辺地域にどういうものづくりがあるのかを見ていたら、ある特徴的なものづくりを見つけました。

そうです、”クラッカー”です。カラフルな三角コーン型で紐を引っ張り、パンッ!っとなるあれです。

見つけたクラッカーは愛媛県宇和島市にあるカネコという会社のもので、現在の国産クラッカーの9割はそこで作られているとのことでした。

カネコは他に打ち上げ花火やブライダル事業などもしており実態が掴めずにいました。しかし、「花火・火薬」がキーになりそうに感じたので地域文化として紹介できるのではないかと思い、もう少し調べてみることにしました。

カネコは1884年に花火の製造と打ち上げをする花火屋として宇和島で創業しています。

遡ると宇和島は伊達政宗の長男・秀宗を初代宇和島藩主とする城下町であり、金子家の先祖は秀宗公とともに仙台から来た武士で、代々趣味としてつくった花火を神社に奉納していました。その趣味が江戸から明治になり時代の変化を受けて生業にしたのだと想像します。
※今後もう少し調べてみたいと思います。どなたか詳しい方がいらっしゃればお話を聞かせてください!)

花火は夏場に寄りがちな仕事なので、年間を通してどう商いをするか、そういった課題がつきまといます。

明治以降に海外の文化が入ってきた時に、先代の金子仁さんが花火と同じく火薬を使用するパーティークラッカーに着目して製造を開始、進駐軍のキャバレーに売り込みに行ったのが今につながっているとのこと。ちなみに日本ではクラッカーで通じますが、海外ではパーティーポッパー(ポッパー)と呼ぶらしいです。

そのクラッカーの製造は地域の方達を巻き込みながらの分業製造で、内職による手作業の多い工程でした。しかし、ある時から安価な海外製が台頭してきたことでそれに対抗できるようにと効率化・ロボット化を進めて、現在ではほぼ全ての工程を自動化しています。

独自の技術や構造で特許も保有し、高品質で低コストの商品づくりを実現。国産クラッカーとして他にはないものづくりをしています。定番の音とテープが飛ぶクラッカーはもちろん、テープが散らからないもの、音のみのもの、特大サイズなどの遊び心のあるパーティーグッズを数多く開発しています。

元々の花火の製造からは手を引きましたが、打ち上げを専門とする花火部を存続させながら宇和島でものづくりを続けています。実は愛媛大洲店の近くにある大洲城キャッスルステイの打ち上げ花火はカネコが担っているそうです。

花火を通して見る『地域文化』
変化するものづくり

ここで仕入れの意図について少し触れたいと思います。仕入れの時には色々と考えることがあるのですが、その要素の一つに「比較(事例収集)」があります。

あるもの(今回は花火)を知るためにはその対象物だけでなく、比較できるものがあることが重要だと考えています。比較することで多角的にそのものを構成する土地や歴史、技術、素材、つくりての考え方などを知ることにつながり、地域文化(人と人、人と土地との関係)の解像度が高められると考えています。

例えば木綿の織物だと、地元福岡の久留米絣の産地や織物の特徴を知るために、同じ木綿織物産地である愛媛のタオル、広島のデニム、兵庫の播州織、静岡の遠州織などの織物と比較するという具合です。MONPEの産地コラボシリーズはそれを形にしたものになります。

さて、今回のカネコの場合は会社の変遷、ものづくりと時代の流れでクラッカーという海外文化を取り入れて半世紀にわたり作り続けていることを知ることができます。

一方で福岡県には同じ花火(火薬)を扱う筒井時正玩具花火製造所があります。花火のルーツの仕事としてこちらも店頭に並べて比較してみようと考えました。もちろん単純な比較はできませんので、共通した素材を扱っているだけなのですが、火薬を使ったもので私たちの日常生活に溶け込んでいるものも他にあまりないと思います。

筒井時正玩具花火製作所がつくる「長手牡丹(東の線香花火)」と呼ばれる紙巻きの線香花火作りは今でも大部分を内職の方に支えられています。和紙に火薬を置いてコヨリのように紙を巻き上げて作る工程は技術を要する仕事として、周辺地域の内職の方達とともに続けられています。安価な海外製がほとんどを占める中、日本製の線香花火づくりが続ける努力を継続的にされています。

また、日本で筒井さんのところだけで作られている「スボ手牡丹(西の線香花火)」があるのですが、その花火の材料となる柄の素材(藁)が入手困難になるのが見えていたため、数年前から藁を取るためにお米作りをやり始めました。

さらに花火を楽しむ場所としての宿づくりなど取り組みも花火製造以外にも多岐にわたっています。昔からのものづくりも表から見えないところで変化をしており、なかなか一筋縄では残せない時代になってきています。

日本では数少なくなっている花火(火薬)の玩具を扱うメーカーとして紹介しつつ、日本で製造する上での努力、その玩具の楽しみ方や拡げ方、地域との関わり方など、形は違えど通じることがあるので、ものづくりを通して色々な方向から地域文化に繋がることを知る機会にできればと思っています。

それはそれとして、クラッカーを派手に鳴らして、線香花火をしっぽりと楽しんでください。

バイヤー春口

鹿面:八ツ鹿踊りで踊る人々がつける鹿のお面をモチーフにしたもの

少し余談ですが、宇和島周辺地域で今も続いている八ツ鹿踊りも伊達家が先代から持ち込んだようです。飛び火したところに似たような芸能やものづくりの技術がある不思議も、実は数百年前の藩主がキッカケとなっているようです。

つくりて紹介

カネコ
筒井時正玩具花火製造所

・うなDIGTIONARY
【#8】『ものづくりは、ものをつくるだけではない - 筒井時正玩具花火製造所の例 –』



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