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抽象表現とそのコンテクスト(文脈)-KOHEI -

アートは難しいものだろうか。結論からいうと現代アートは紛れもなく複雑なものが大半で、難しい。なぜなら抽象な表現を多く包括するからである。
しかしながら、作品が作られた時代背景を考えたりコンテクスト(文脈)を知ったりすることで作者がどのようなとことに美意識を持ち何を表現しようと努力したか、何を捉えようとしたいのか、どのような気分だったのか理解できてくると、とても面白い。

堅苦しい書き出しとなったが、先日(2019/10/30)に行ったTate moderenでイヴ・クライン(Yves Klein)の作品がピカソやモネなどの有名作品が並ぶ中でぽつん、と一作品のみ同並列で展示されており抽象表現について改めて気づいたこと、感じたことを書いていこうと思う。

イヴ・クライン(Yves Klein,1928年4月28日 - 1962年6月6日)は主に青色というテーマを軸に作品の制作を行ったアーティストである。一度リンクを見ていただけるとわかるかと思うがIKB 79と名付けられた
https://www.tate.org.uk/art/artworks/klein-ikb-79-t01513
青色単色をキャンバスに塗った作品がTate moderenには展示されていた。

青色のみがすっきり塗られているキャンバスが彼の絵として展示されていたのだが、他の会場で展示されていた別の作品ではキャンバスをよく見ると表面が波打っており、凹凸のマテリアルでテクスチャーの表現されているのが確認できた。

同じ抽象絵画の表現を行っていたマーク・ロスコ(Mark Rothko, 1903年9月25日 - 1970年2月25日)の絵も同時に部屋に展示されており、その絵を見たのちイヴ・クラインの作品を見てふと、気がついたのだが、彼の行っていたアイデアはマーク・ロスコとは違い青色単色をテーマに表現を行う、という色使いにおいて一貫したものであった。
そして、彼について調べるうちに青色、というシンプルなテーマを拡張するのに彼は様々な表現手法を研究し最終的にはパフォーマンスアートとという手法(当時では草分け存在であったらしいが)にも拡張したようだ。1958年に開催された「Le Vide」(The Void/空虚)展では展示物は何も展示することをせず、来場した3000人に対して青色のカクテルを提供した、という。

自分は抽象絵画において抽象的な表現をする画家が目指していたことは絵画の筆遣いや凹凸などのマテリアルをいかした絵の可能性という表現手法にフォーカスすることであり、そして彼らはその技術を美しいものと主張することができ、同時に人間の内面をよりビジュアルとして抽象的な表現として描いた、と考えていた。人間の感情や内面というものは風景画のように説明的でなく抽象的な表現にすることでより強調され、そしてその余白というものに鑑賞者のイメージが投影できるなんらかの装置のような役割を果たしたかったのだろう、と想像していたのだ。

しかしマーク・ロスコの絵とイヴ・クラインの絵を見比べたり、彼の経歴について調べていくうち、単に抽象絵画において表現され、実現されてきたのは表現されたビジュアルのみならずビジュアルからイメージさせられる動作、というものにフォーカスされ、ビジュアル的な表現手法だけでなく絵画を飛び出し"出来事"というパフォーマンスという表現まで拡張する、ということに事に気がついた。

特にイヴ・クラインが単色というテーマにフォーカスしていたのならば、よりそうなるだろうし、彼がパフォーマンスアートに傾倒したのもうなずける。

そして抽象的な表現がよりパフォーマンスめいたものになっていくと、ビジュアルそのものより"拡張されたものが評価せざるを得ない"ような状況に陥るのではないかということを彼のバイオグラフィーや動画などを見て感じた。抽象的な表現は、同時にそれに付随してくる様々なことが鑑賞者の評価対象になりうるのだろう。

今後も抽象的で鑑賞者に考えを迫られる作品は絵画のみならず舞台芸術にも多くなってくるかと思う。そしてまだ自分もまだまだ試行錯誤中であり多くのことを思考中の状態である。どのレイヤーで鑑賞者に伝えたいのか、それかどこを伝えたいのか今後も考えていきたい。

-KOHEI NAKATSU-

参考URL
*イヴ・クライン(Yves Klein)
https://sdart.jp/archives/884
株式会社SDアート HPでの作家説明
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC-%E3%82%A4%E3%83%B4-%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3-IKB65%E3%80%81-1960/dp/B004LKA7FI
Amazonのポスター
https://youtu.be/x0mYZbYdIpU
Blue Women Art - Yves Klein (1962)
https://youtu.be/BNDCxaIMZyw
1958 The Void, Yves Klein
https://matome.naver.jp/odai/2137914489185126901
NEVERまとめ
青に惹かれ自分だけの青を作った男/フランスの芸術家イヴ・クライン

*抽象表現主義 / Abstract expressionism
https://www.artpedia.asia/abstract-expressionism/
Artpedia アートペディア/ 近現代美術の百科事典
*“難解”なアートをどう読むか。
ベルトラン・ラヴィエの視点
https://www.tjapan.jp/art/17194101


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