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居心地の悪いお店やバツの悪いこと

松村雄策さんがお亡くなりになりました。
松村さんは元々ミュージシャンで、のちに渋谷陽一、岩谷宏、橘川幸夫さんらと共にロッキング・オンを作った人。
ボクは今も昔もそれほどロッキング・オンに興味があったわけじゃないけど、高校生だった頃、姉の彼氏(年上)が松村雄策さんのエッセイをよく読んでいて、それを借りてボクも読ませてもらい、音楽だけではなく色々なことを学んだのです。

立川談志のことを知ったのも松村さんのエッセイだったなぁ。

高校生の頃、音楽やカルチャーを話す仲間があまりいなかったボクは松村さんの本を読んで、気持ちを埋め合わせておりました。ボク自身の趣味嗜好も色々変わってきたので、ここしばらくは松村さんの本を読むこともなかったのですが、訃報を知り昔を思い出してなんだかぽっかり胸に穴が空いた気分です。

蕎麦屋で飲むという行為はまだ流行っているのでしょうか?
コロナになって『飲み屋』の話はあまり聞かれなくなったけど
そのちょっと前までの飲みブーム??の頃は蕎麦屋飲みというのもよく聞かれました。
これからはどうなるんでしょう?

うちの近所の蕎麦屋に父親(推定65歳)が店長で料理担当、息子(推定35歳)がホールを担当しているというお店があります。

親子2代で微笑ましいと思う人もいるかもしれませんが、ここの蕎麦屋はそんな微笑ましいものではなくてこの2人、死ぬほど仲が悪いのです。

ボクは親父さんのほうとは顔見知りで(街であったら軽く挨拶をする程度の仲)、息子さんのほうは全然知らないのですが、蕎麦を食べに行ったり飲みに行ったりしても親父さんはいつも厨房の中にいて、顔を合わせることもあまりないわけです。

んで、まぁそんなことは気にせずに普通にお店に食ったり飲んだりしているわけなんだけど、だいたい毎回、店内は殺伐としております。

なぜならお客さんの注文を聞いた息子が厨房に料理を伝える時の対応が、もう喧嘩腰だからなんですわ。

なかなか料理が出てこない時なんかは、厨房の親父さんに向かって
「鳥わさとキスの天ぷら、早くしろよっ!!お客さんを待たせてんじゃねーよ!!」
みたいな怒声。

親父も負けておりません。
注文した物が品切れだったときなんか、厨房の中から
「それ、品切れだって言っただろっ!何聞いてんだバカやろう!!」と
怒声で応戦してたり。

とにかく客をヒヤヒヤさせる蕎麦屋なのです。

ある日、お昼ご飯を食べに行ってもりそば+小エビのかき揚げ丼セットを頼んだときのこと。

出て来たかき揚げ丼にエビが入ってないという事件が起こりました。

どうしたものか。。。
エビの一つや二つで文句言うのも大人気ない。
しかし、、三つ葉だけのかき揚げ丼というのも心もとない。

でもって、ここでエビが入ってないというクレームをホール担当(息子)に伝えるとまた厨房と一悶着起きそうだ。

言うべきか言わぬべきか。。

まぁ、でも普通に考えたら新しいかき揚げ丼が出てくるだけか、お代が少し安くなるだけだし、まぁ逆にこれくらいのことならそんなに問題は起きないだろう、とタカをくくって
とはいえ小声で
「すみません、このかき揚げ、エビ入ってないです」
となぜか申し訳なさそうに言うワタクシ。

すると案の定、息子は鬼の首を取ったように
「親父!!天丼にエビが入ってないってよっ!!」
ここまではまぁ想定内。
「お客さんが文句言っているよ」
となぜか責任を少しこっちになすりつける息子!!

『おい!その言い方微妙じゃねーか!おれ小声で申し訳なさそうに言ったよね?なんかこっちがガッチガチにキレてるみたいじゃん』

と思うや否や予想外の展開!

まさかの親父(店長)、普段は厨房から文句を言って応戦しているだけなのに、この時に限って
「そんなことねーだろ」(誰だそんなこと言ってる客は!!)
と厨房から出てきちゃった。

息子
「このお客さんのかき揚げ丼」
とボクにゆび指し確認。

親父、ゆーっくりとこちらを見てボクだということに気がついて怒りの形相が薄れて照れてバツの悪い様子。

こちらも
「いや、そういうわけじゃ」(超小声)
でなぜか会釈なんてしちゃってます。

「ごめん、もう1回作るね」
「いやいや、別に大丈夫ですから」

居心地悪〜〜。

昔、バンドでデビューしたての頃。
恵比寿にMILKというクラブがあって(超懐かしい)そこに遊びに行きました。

まぁクラブというところは大概薄暗いんだど、あそこは特に薄暗くて(自分調べ)いまいち人の顔が認識しにくいわけですわ。

一番地下のフロアの隅っこで酒を飲んでいたら暗がりの中から声を掛けられました。
近づいていってもよく顔がわからないし、誰だ???みたいな顔をしていると
「こないだ会った〇〇だよ」
と以前一度共演したことがある先輩ミュージシャン。

先輩ミュージシャンのことを誰??みたいな顔で見て、自己紹介までさせてしまうという若干申し訳ない無礼なことをしてしまったわけです。

これはイカン!
失礼つかまつった。

後から来る当時のバンドのメンバーのドラム・アラキにもきちんと伝えておかねば。

アラキという人は、わかる人はわかると思いますが、だいたいに於いて雑、ガサツを絵に描いたような男です。良く言えば細かいことを気にしないワイルド感、悪く言えば、、やはり雑、ガサツ。

上の階のフロアに行き待つこと5分。
颯爽とやって来たアラキに
「〇〇さんが来てて、今さっき下のフロアで会ったけど、暗くて全然顔もわからなかったから、お前、誰??みたいな反応しちゃって。多分まだ下のフロアにいるからお前も粗相のないようにしたほうがいいよ」

と忠告したわけです。

アラキは人の話を聞いてんだか、聞いてないんだかわからないオペーッとした反応で、こいつは確実に自分と同じ粗相をすると踏んだボクは逆にアラキと一緒にその人のところに行って挨拶をしてしまおうとできる大人の先回り対応を試みたのです。

地下の薄暗い中に〇〇先輩はいました。
若い子たちと一緒に談笑しとります。

「〇〇さん、うちのドラムのアラキです」
「お、こないだはお疲れ〜」
軽いタッチでアラキに挨拶をしてくれる〇〇さん。

その人の顔をマジマジと見て
次の瞬間!
「え?誰でしたっけ??」

おい、アラキーーーー!!!!

できる大人の先回り対応、不発。
いや、むしろ暴発。
わざわざ連れていったおれ、なんなの?

「お前、こないだ一緒に共演した〇〇さんだろ!」
ちょっとキレ気味でアラキをうながすと

彼は超軽いタッチで
「あーーー。うっすうっす。おつかれっす」

となにも気にせずだらしなく笑っているアラキ。

〇〇さん、いい人だったから何も気にしてなかったけどさ。

なんだかこれもこれでバツ悪な瞬間でしたな。

写真:文章とは関係ない団地

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