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寺、燃ゆ

〜〜幽霊飴〜〜
浄土寺の前にあった飴屋に夜な夜な飴を買い来る女性がおりました。
その女性が飴を買いに来るようになったあと、
店主が売り上げを勘定するとそこには必ず木の葉が1枚入っているようになりました。店主は女の人が置いていったお金が木の葉に代わるのだと思い、ある夜女性の後をつけていくと、その女性は浄土寺の墓地に消えていきました。
店主がその事を浄土寺の住職に相談すると
「もしかして、この間亡くなった妊婦の方かも」といい、
その女性のお墓を調べるとなんと元気な赤ちゃんがそこに。
「赤子を幽霊になっても飴で育てていた」というお話から地元の人々はその飴を【幽霊飴】と呼ぶようになり毎年地蔵盆の時期(8月の23日、24日)には今でもその飴は売られております(おそらく)。

この幽霊飴というのは、ボクの育った三重県桑名市のお話で
ここに出て来る浄土寺というお寺は実家のボクの部屋の窓を開けると
正面にデデンと見えるくらいの場所あります。

かなり大きなお寺で立派な本殿が建っており、
ボクが小さい頃は近所の子供たちと一緒にそこで遊んだり
裏の墓地を通り抜けると近道になっていたのでそこを通り抜けたりしていました。

確か15歳の頃(今から30年くらい前)、ちょうど今時分の春休みに
いとこが家に遊びに来ていました。

夜も更けていましたが、
ボクは布団に入りながらいとこの馬鹿話に耳を傾けて笑っていると
窓の外でバチバチという音が聞こえてきました。

最初は気にもとめていなかったのですが
鳴り止まないその音が気になったのでカーテンを開けてみると窓の外が真っ赤です。

ボクの部屋から何軒が家を隔てた正面にある巨大な浄土寺が燃え盛っているではないですか!

ものすごい火柱と煙、バチバチと木が焼ける音と焦げた匂い。
現実ではないような景色が目の前に広がっていて驚きと恐怖と通り越してボクといとこはしばらく見入っていました。

そうこうしているうちに近所が騒がしくなり
消防車が何台もかけつけ、
ボクといとこも野次馬になって燃えている寺を見に行きました。

当たり前ですが現場は騒然となっていて、消防士の人が大声で何かを叫びながら
お寺の横に建っているいる家の玄関を突き破り横側からの消火作業に挑んでいます。
突き破られた家の廊下はホースで物がなぎ倒され水浸しになってビショビショです。
ボクよりも寺の近くに住んでいる顔見知りの知り合いも心配そうに消火の様子を伺っておりました。

翌朝、明るくなってから部屋の窓を開けて外を見ると
今まで目の前にそびえ立っていた浄土寺が黒く焼けた骨組みだけになっていて
なんともいえない不思議な光景でした。

死傷者はおらず、本殿のみが焼けただけで、火もほかに移らなかったのが不幸中の幸いでしたが
子供の頃からなじみがあった立派なお寺が焼け落ちるというのはなかなかの衝撃でした。

その後、浄土寺は取り壊されしばらくの間プレハブみたいな建物で急場をしのいでおりましたが、現在は昔と比べたら小さくなったものの綺麗な本殿が建っています。

先日、地元に帰ったとき浄土寺の横を通りかかった際に綺麗になった本殿を見て
ふと30年前の火事のことを思い出したのでした。


ところで人が生きていて火事に遭遇する確率というのはどれくらいなのでしょうか?

ぼくはこれまで5~6回くらいは火事に遭遇したり、消火のお手伝いをしたりしています。これは多いのか少ないのか・・・。

一番直近だと近所のラーメン屋の火事ですね。
これは消防署や警察に連絡したり消火器を撒いたりしたのでぼくの火事経験の中ではかなりヘビーな部類でしたな。

とにもかくにもみなさん、火の元には十分ご注意を!!

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