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求めていたのはその話じゃない!

「お前ら、今日の夜めちゃくちゃ怖い話をしてやるから、あとでおれの部屋に来いよ」

小学校の時、少年野球で全国大会に行った時のこと。
監督、コーチ、選手で同じ宿舎に泊まっておりました。

準々決勝に勝った日の夕食のとき、高野コーチはボクらに言いました。

小学生の男子は怖い話を好きなやつが多い、、、かどうかは知らんが
ボクとボクの周りの背番号はもらっているけど全く期待されていない選手は、早く大会を終えて普通に夏休みに戻ってほしいと思って退屈な大会を過ごしていたので、そのとき高野コーチから発せられた『怖い話』というのはなかな効きが良く、楽しくない大会や宿舎暮らしを楽しませてくれるワードでした。

『怖い話ってなんだろう?』


友達数人とボクはご飯を食べて早々に風呂を終えて、胸を高まらせて高野コーチの部屋に行きました。

ドアをノックをして高野コーチの部屋に入りボクら3人はベッドの前に腰掛けました。

薄暗い部屋でなぜか薄い色のサングラスをかけていた高野コーチは、ちょっともったいぶって


「あのな・・・」

ぼくらは唾を飲み込みました。

一呼吸おいて、高野コーチは

「チェルノブイリで原子力発電所、爆発したやろ。あれ、怖いやろ・・・」

と言いました。

しばしの沈黙&キョトンとしているボクらをみて

「そんだけや!早よ部屋に帰って寝ろ!」

いやいやいやいや、、、確かに怖いっすよ。
幽霊なんかより全然怖いし、当時も酸性雨が降ってくるとか色々言われてたし、小学5年生のボクらもめちゃくちゃ怖いって思ってましたがな。

でもさ、今このときこのタイミングじゃないでしょ、その話!!

つか、お前に言われなくてもわかってたわ!!

完全に肩透かしをくらった補欠組のボクらは各々の部屋に戻ったのでした。

しかし、、今考えると高野コーチって面白い人だったな。
壮大なドッキリ(?)みたいな気分だったのかもなー。
メインの選手ではなく、たいして期待もされておらず退屈をしているボクらを選んでいるのも敢えてなのかもしれません。
そう考えるとなんだかお茶目で素敵です。

高野コーチは果物屋をやっていて、少年野球の練習には後部座席に果物を乗せた車で来ていたんだけど、いつも商品の果物に紛れてエロ本が乗っていて
、それが毎回金髪の女性の猛烈な巨乳モノだったというのも面白かった。

怖い監督やコーチがたくさんいた中で、いい意味で一番いい加減でテキトーな人だったし、今考えるととても好感の持てる人でした。あの当時、でっぷりとお腹が出てすげーおっさん感を出してたけど、ひょっとしたら今の自分より年下なのかもしれないと思うと、ボクも随分なおっさんになったものです。

高野コーチの果物店はボクが大学生の頃にひっそりと閉店をして、高野コーチの一家は地元の街からいなくなったと聞きました。噂によると、息子のギャンブルの負債でやくざな人にお店を奪われたとかそういう話もまことしやかに囁かれておりましたが、実際のところ良くわかりません。
もしそれが真実であったならば、本当に怖いものはチェルノブイリよりもギャンブルの負けですな。

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