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喪失

行きつけのバーで知り合った彼女と偶然街で出会ったのは6月の初頭、よく晴れた昼下がりでした。

その人とはあんまり話したことはなくて、
ちゃんと話をしたのがその時が最初だったんだけど
思いのほか話がはずんで、
お互い時間があるなら立ち話もなんだね、、ということになって
近くの喫茶店に入ってお茶を飲むことになったのです。

明るくて快活そうに見えた彼女は
話しているうちに少し影のある人だということがわかって
ボクもその頃はあまり気分がすぐれない日が続いていたせいか、
なんだかお互い話し足りなくなって、後日改めて飲みに行くことになりました。

東京の下町のなんの変哲もない、でも味わい深い雰囲気の居酒屋さんに行ったのは
確かその翌週くらいだったかしら。

お酒が進むにつれボクらは随分打ち解けあったのです。
身の回りの出来事や他愛もないことからお互いの悩みまで
淀みのない言葉で2人とも気兼ねなくお話をしたのでした。

帰りの電車。

まだ飲み足りないねということになり降りる駅の一つ手前の駅で降りて
なんとなく飲み屋さんがある方向へ向かって歩いていると
正面から友達とその彼女が歩いてきました。

一瞬お互い気がつかないくらいその友達と会うのは随分久しぶりで
再会を感動しつつもぼくにはちょっと気がかりなことがありました。

その頃、ボクは仕事のちょっとした揉め事に巻き込まれていて
詳しくは書けないけど、あまりその友達やその周辺の人たちと会ったり話したりしにくい状況だったのです。

なので、久々に会えた感動はありつつも
なんとなく話にくい状況ではあったのだけど、
少し酔っ払っていたこともあり
色々話もしたいからちょっと飲みに行かない?と言ってみると
彼らも飲みに行くところだったらしく4人で近くの居酒屋に入りました。

お酒を飲みながら、ボクは自分の置かれている環境や
彼や彼の周りの人たちがおそらく感じているであろうことに対して
弁明に近かったのもしれないけど説明したり、
それについて思っていたことを話すと
彼は、周りの人間はそう思ってるかもしれないし、
ボクの置かれている立場は確かに若干めんどくさいのかもしれないけど
それはそれだし、ボクらは同じ年なんだから
そんなことを気にせずこれからも飲もうよと言ってくれました。

思っていたことが話せてすっきりしたせいか、
その後は何を話したか忘れちゃったけど
4人とも信じられないくらい笑って盛り上がったとても良い酒の席でした。

ボクはとても良い気分で彼女と2人で一駅分を歩いて帰ってきました。


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