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関東の土の香りと自由な暮らし

春のこの時期になると独特の香りがします。
ぼくの地元の春の匂いとは少し違っていて、きっと関東ローム層の土の香りなんだといつからか勝手に理解しております。

3月も半ばを過ぎると、卒業だとか新学期とかボクには経験がないですが就職とか、まぁこれまでの世界から別の場所に行く不安とワクワクというものに包まれてなんとなく世の中も浮き足立っている気がします。

もう20年以上も前だけど、地元を離れ上京し(厳密にいうと横浜ですが)
関東の春を過ごしたときに感じたこの匂いは不思議なものでいまだに懐かしくて少し甘酸っぱい気分にさせるものです。

たかが20年でも時代は刻一刻と変わっていて、そしてまた同時に自分も変化しているので、あの頃思っていた夢が夢でなくなったり、いつしかそんなものを追いかけていなくなってしまった自分もそこにはいるわけです。
あの頃からは想像もできませんが。

大学の進学で上京したものの、
ミュージシャンになりたくて音楽を勤しみ
まぁ、いっときは小さく(ごく矮小ですが)売れて
その後も少し夢を追いかけたけど
なんだかそんな夢も中途半端になり
(そもそも世の中的にミュージシャンという職業自体があまり実態をなさなくなってきたし)
いつのまにかデザインやらイラストやら撮影やらを覚えてそれが仕事になっています。きっとこの先、人生がバズるとこもないでしょうし、
(別に生きてさえいられれば、バズらなくて全然良いんですが)
行き当たりばったりでブレながら生きていくんでしょうな。

で、そんなことをぶつぶつ言いながら平日のお昼に仕事もしないでこんな文章を書いているわけです。

思えば、ボクが上京した頃の世の中って最後の終身雇用の時代でしたね。
当たり前のように就職して、大企業に入れれば一生安泰だと。
ボクの地元なんて考えが偏っている田舎なので、そのレールから外れて謎の暮らしをするというのは当時はものすごく白い目で見られておりました。

地元の友達に普段なにやってるの?って聞かれて
「ごくごく個人的なコラムを書いていた」
って言ったら
今でも普通に
「は?」
ってなりますが。

しかしまぁ、あの頃に比べると自由に働くことや、よくわからない職業に随分と人権(?)が与えられたものですね。よくわからない職業のほうが稼いでいる場合もあるしね。

職業に限らず、結婚とか性別とか、いろんなことが自己責任で自由になったのは、本当に良かったですな。

こないだ高田馬場近辺の住宅地を夕方歩いていたのですが
家並みから漏れているオレンジの光を見たとき
なぜだか世の中はちょっとずつ良くなっているのかもなぁという気分になって不意に胸を熱くしました。
なぜだかわからないけど。

ちなみに春になって暖かくなると頭のちょっとほんわかした人がたくさん世の中に出てくるとよく言われておりますね。気分が良くなって思わず街を徘徊してしまうのかもしれません。

東京でコートなしでも過ごせるようになった頃。
というか超最近のこと。
友達と飲んでいて居酒屋が閉店になったので、近所のコンビニのベンチの前で飲んでいたら、年齢不詳の女性がほかのベンチの席が全然空いてるにも関わらずなぜか僕らの隣りに座って
ま、その時点で結構怖かったんだけど、
その人があまりにもたくさんの書類を持っているのに気になって
「すごい書類の量ですね」
って思わず声をかけてしまったら
ちょっと瞳孔が開いたような目とものすごい低い声で
「ねぇ、なにしてんの?」
とボクの質問を無視して質問返しをしてきて、その時の気配があまりにも怖くて
ボクと友達はヤバイって思ってその場から逃げようとしたんだけど
その人はボクらを追いかけてきて
めっちゃくちゃボクの近くまで接近して
「アキがあんな風になったの、知ってたでしょ?」
「え?なんすか?知りませんよ」
「ねぇ、全部知ってたんでしょ?なんで教えてくれなかったの!!!」
と意味不明なことを叫びだしたので猛ダッシュで逃げてきました。

その時のその人のちょっとイっちゃてる目。
恐ろしすぎて一生忘れられませんな。

それぞれの春。
それぞれの自由。

せっかく春の話なのに、、、アキってなんだよ。

写真:8年くらい前に御茶ノ水あたりを散歩したときに撮ったもの。なんでこんなの撮ったんだろう・・・。

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