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DaVinci Resolve ノードツリーを公開 〜 LUT を使った標準セッティング

アイドルグループ『AiDOLOXXXY』のミュージックビデオを題材にした色調整(カラーグレーディング)の記録。DaVinci Resolve のTIPS として公開中の3本の動画のトピックをまとめて、記事にしてみました。

<撮影素材>
Blackmagic URSA Mini Pro G2
Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K
収録形式:ProRes422 HQ
解像度:URSA 4,608 x 2,592 / BMPCC 4,096 x 2,160
ISO:800
<編集環境>
DaVinci Resolve 16 Studio
Neat Video v4 Pro
MacBook Pro 15-inch, Late 2016
プロセッサ:2.9 GHz / クアッドコアIntel Core i7
メモリ:16 GB 2133 MHz LPDDR3
グラフィック:Radeon Pro 460 4 GB
Intel HD Graphics 530 1536 MB

1. Cinema LUT を使ったノードツリーの組み方

ノードツリーにもいろいろな組み方がありますが、この記事ではデジタルシネマのごく標準的なものを紹介したいと思います。

まず全体の説明として、大きく3つのセクションで構成しています。どのノードを活かすか?活かさないか?は作品により変わりますが、組み方は毎回同じです。

ポイントとしては、LUT の前に何を置くか?LUT の後に何を置くべきか?に注意して、効率的に作業できるよう組んでいます。

▶︎ プライマリー:基本調整
▶︎ LUT / トーンカーブ:質感の調整
▶︎ セカンダリー:色の調整・仕上げ

2. 質感の調整

まずはコントラストを適正にしてから、細かい調整をしていきます。手順は以下の感じです。

1.  LUT を配置。ノードキーNode Key)で濃度を 50% に設定する。

2. LUT 前にトーンカーブを配置して、波形モニターを見ながら明るさのレンジ幅を調整する。とりあえず、ハイライト90%、最暗部5% あたりにしておく。

3. さらに質感を変えたい場合は、LUTの濃度を変えてみたり、LUT 後にトーンカーブを配置したり、好みの質感に調整する。

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3. プライマリー調整

次に LUT 前の部分「プライマリーPrimary)」の調整をします。ざっくり言えば、ホワイトバランスだったり、露出だったり「撮影時にやっておくべき」ことを修正する部分です。

LUT 前に配置しますが、コントラストの淡い LOG の状態では、色も明るさも判断できないので、手順としては LUT などでコントラストを付けたあとに調整することになります。

ホワイトバランスの修正→ ColorTemp/Tint
露出の補正→ Offset
照明の修正 → Power Window

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ポイントは「ノイズ除去」を先頭に配置してる点です。ノイズの処理は時間がかかるので、先頭に配置して裏でレンダリング(Smart Rendering)しておくことで、それ以降のノードをいじっても、その影響を受けずにレンダリング効果を保つことができます。

特に SONY の撮影素材(S-Log)は暗部ノイズがすごいので、上質なクオリティを求める場合には、全カットにノイズ除去を適応したりします。プラグインは「Neat Video」を使います。

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露出の補正に関しては「オフセットOffset)」を使います。何度かテストをしたところ、このパラメーターがカメラの露出の変化といちばん近い動きをする、というのが理由です。

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4. セカンダリー調整

最後に LUT 後の部分「セカンダリーSecondary)」の調整をします。ここではクオリファイアー(Qualifier)で色や明るさの領域を選択して、色や質感を部分的に調整したり、彩度を調整したり、おもに色の最終仕上げをする感じになります。

LUT 後に置いてるのは、LUT 前だとコントラストが淡い状態なので、色や明るさの領域を選択しきれないというのが理由です。

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全体の彩度を上げる場合は、彩度(Saturation)より、ブーストColor Boost)を調整することで、より自然なニュアンスで発色をよくすることもできます。

仕上げに「Filmconvert Pro」のようなプラグインを使うと、ギラつきがちな人工物の発色を抑えたり、粒子を加えて、デジタル特有のつるっとした質感に印画紙プリントのような手触り感を出したり。シネマティックな質感に厚みを持たせることも可能です。

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あとがき

カラーグレーディングの TIPS をいろいろ公開してるのですが、ここ数年でそのメソッドも大幅に更新されそうな感じがあります。

視聴環境が TV 画面から、iPhone など広色域(P3)のモバイル環境に移行しつつある中で、デジタルシネマの現場でも、モニタリングの環境に苦労する場面がたくさんあります。

これまで HD 時代の基準だった「Rec.709 2.4」環境でグレーディングされた映像を iPhone で見ると色が薄く見える、という問題をどう解決するか?

DaVinci Resolve では『RCMResolve Color Management)』という新しいシステムを通して、その問題を解決しようという流れがありますが、今後はそのあたりがテーマになりそうですね。

今回のこのミュージックビデオは、動画制作のオンラインサロン 『UMU TOKYO』が制作を担当しました。デジタルシネマのライティング、DaVinci Resolve の色調整に興味のある方は、ぜひご参加お待ちしてます。


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