YouTube のカラーシフト対策まとめ
Mac 版の DaVinci Resolve、Adobe Premire Pro で書き出した動画、YouTube にアップした動画が明るくなってしまう “カラーシフト問題” を解決するには? QuickTime Player の NCLC タグ問題、Rec.709-A の運用に関する情報をまとめて紹介します。
1. はじめに
動画の視聴環境が TV からモバイル端末(YouTube)へと変化する中で、どんな環境で、何のモニターを見て映像のルックを決めればいいのか?は、映像制作をする上での大きな課題となっています。
具体的な問題としては、たとえば、動画編集ソフトで仕上げた映像を iPhone のディスプレイ、YouTube のアプリ上で見ると色が浅く感じられたり、視聴環境によりコントラスト感が変わってしまう、みたいなものがあります。こうした問題は、何が原因で起こるのか?どうすれば解決できるのか?
この記事では、Mac 環境で DaVinci Resolve、Premiere Pro から動画ファイルを書き出したり、YouTube に動画をアップロードすると起こる、カラーシフトの解決法に関する情報をまとめていきたいと思います。
2. 書き出した動画の明るさがシフトする原因は?
まず Mac 環境では「DaVinci Resolve、Premiere Pro で書き出した動画をデスクトップ上で再生すると、編集ソフトのビューワ画面で見ていた状態と明るさが変わってしまう」というガンマシフトの問題があります。
この問題のおもな原因は、QuickTime で使われる NCLC タグというメタデータで、その解決法もはっきりしていますが、それを正しく理解するためには、以下のトピックをざっくり押さえておく必要があります。
3. Macの色空間は Display P3
sRGB、Adobe RGB、Rec.709 など、色空間にはいろんな規格がありますが、iPhone をはじめ最近のスマートフォンの多くのモデルで採用されているのが Display P3 という規格です。
これまで映像の世界では、HDTV 放送は Rec.709、Web 空間は sRGB という規格が定番でしたが、Apple が開発した Retina ディスプレイのように、従来よりコントラストが高く、あざやかな色彩を表現できるディスプレイが登場すると、より広い色空間が必要になった。ということで誕生したのが 、Display P3 です。
この Display P3 は、デジタルシネマの標準規格 DCI-P3 をもとにした規格で、色域は(sRGB より約 25% 広い) DCI-P3 と同じですが、白色点は D65、ガンマは 2.2 なので、色域以外は sRGB と同じ となっています。下の画像は右側が sRGB、左側が Display P3 の色域を示しています。
Apple 製品のディスプレイは色を表現できる範囲が広いので、Rec.709、sRGB など従来の色空間で仕上げた映像を見ると、コントラストが弱く感じられる、という点がポイントとなります。
4. Macの色管理システム ColorSync
Mac のディスプレイで見える色は、Mac の色管理システム ColorSync により管理されています。この ColorSync は、色域・ガンマ・色温度などの情報が書き込まれたメタデータ(ICCプロファイル)をもとに、画面の色やコントラストを調整する機能となっています。ColorSync の設定は、システム環境設定>ディスプレイの階層で確認することができます。
カラープロファイルの欄には、sRGB、Adobe RGB、Rec.709 など色空間の規格がずらりと並んでいますが、初期設定では Mac のディスプレイに最適なキャリブレーションのされた「カラー LED」が選択されているので、この設定は特別な目的がない限り、そのままの状態にしておきます。またカラーグレーディングをする場合は、環境光に合わせて自動で白色点(色温度)を調整する True Tone、Night Shift などの機能は OFF にする ことが推奨されています。
この ColorSync は、QuickTime Player、Safari、FCPX など Apple 純正のソフト上では有効に機能しますが、たとえば、DaVinci Resolve、Premiere Pro などの動画編集ソフトは、基本的には ColorSync の影響を受けない構造になっている、という点がポイントになります。
5. QuickTime のメタデータ問題とは?
写真・デザインの世界では、Adobe Photoshop、Illustrator などから書き出される画像ファイルに、Adobe RGB、sRGB などの色空間の情報(ICC プロファイル)を埋め込むことで、色管理をするのが一般的となっています。では、これが動画の場合はどうなるのか?
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