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PSYCHO-PASSで本を読む
ーーー このnoteはネタバレを含みます ーーー
『PSYCHO-PASS』はフジテレビで深夜に放送されたアニメ。私はこの作品が好きなのですが、作品への向き合い方で後悔していることが一つあります。
それは本を読んでこなかったことです。
PSYCHO-PASSという作品(とくに1期)は文学や哲学書を引用した台詞がよく出てきます。例えば、第1話冒頭の槙島聖護と狡噛慎也が対峙する大事なシーンもそのひとつです。
槙島「正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。そのため人は正義に力を与えることができなかった」
狡噛「悪いな。俺は、誰かが、パスカルを引用したら用心すべきだと、かなり前に学んでいる。」
知性を感じる二人の会話に厨二心が震えると同時に凄く後悔したのを覚えています。活字が苦手で今まで本読んでこなかった私が本を読んでこなかったことを強く後悔したのは人生でこれが初めてです。
本を知っていると作品をより一層作品や登場人物、世界観に深く入り込むことが出来る気がしたので作品内に出てくる本をまとめてみました。
2023年5月、映画PSYCHO-PASS PROVIDENCEの公開に合わせて1期以降の全シリーズ分も追加しました
PSYCHO-PASS
『善悪の彼岸』 フリードリヒ・ニーチェ
深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている。
征陸「狡噛を理解するってのは、狡噛のように物を見て、狡噛のように考えるってことだ。それができるようになったとしたら、その時あんたのサイコパスは狡噛と同じ数字を叩き出していることだろうよ。」
征陸「狡噛は闇を見つめすぎた。そして今でもまだ見つめ続けている。あいつにとって世界でたった一つの正義ってやつは、闇の奥底にしかないんだろう」
に言った台詞
『1984年』 ジョージ・オーウェル
1期 4話:槙島聖護が読んでいた本
『1984年』は作家ジョージオーウェルによるSF小説。全体主義国家によって分割投資された近未来のディストピアが描かれている。反全体主義、反集産主義のバイブルとなっている。思想・文学・音楽など様々な分野で今なお影響を与えている近代文学の傑作。
『戦争論』 カール・フォン・クラウゼヴィッツ
槙島聖護の戦場の摩擦についての説明
槇島「あとはどんな摩擦が発生するか」
チェ「摩擦?」
槇島「クラウゼヴィッツだ。彼は戦場ではどんなに緻密な計画でも些細な要因で遅延する可能性を指摘した。机上の作戦はどんなに練っても机上のものでしかない。偶然のトラブル、天候などのコントロール不可能な要因によって作戦が直面する障害。これが戦場の摩擦だ。」
『人間不平等起源論』 ジャック・ルソー
征陸「人間不平等起源論って知ってるかい?」〜〜
征陸「二人のハンターが森にいて、それぞれ別々に行動して兎を狩るか、協力して大物を狙う。どちらが正しい判断か。」
常守「ゲーム理論の基本では後者。」
征陸「そう、それが人間の社会性だ。言葉、手紙、通貨、電話、この世のあらゆるコミュニケーションツールはこの社会性を強化するものだ。ネットにその効果があると思うかい?」
『さらば、映画よ』 寺山修司
1期 5話:槙島 聖護が御堂 将剛に勧めた本
槙島 「ねぇ君、寺山修司を読んだことは?」
槙島 「読むといい。戯曲『さらば、映画よ』。皆誰かの代理人なんだそうだ。代理人たちがさらにアバターを使って、コミュニケーションを代理させている。」
台詞
『十二夜』 シェイクスピア
1期 6話:女学校の文学の授業で扱っていた作品。シェイクスピアの喜劇。
「本当の女心は決して私どもに劣りはいたしません。たしかに我々男は、もっと言葉にも出し誓いを立てたりもいたしますが、本当は心にもない見せかけだけの場合も多いございます。私たち男は、口先だけは立派なことも申しましょうが愛情で立証することは滅多にございません。」
『マクベス』 シェイクスピア
1期 6話:文学の授業でシェイクスピアの喜劇を授業で受けた女子生徒に、王陵璃華子が伝えたシェイクスピアの悲劇作品。※この会話の後(4:32)、女の口元のアップが映り、何か口パクするが何と言ってるか不明
王陵「シェイクスピアの喜劇は退屈ね。」
生徒「お嫌いですか?」
王陵「悲劇は好きよ。とくに『マクベス』と『タイタス・アンドロニカス』」
生徒「その二本が面白いんですね」
王陵「ただ面白いだけじゃない。特別に残酷なの」
が女子生徒に送ったメール
『タイタス・アンドロニカス』 シェイクスピア
王陵璃華子が好きなシェイクスピアの悲劇作品のひとつ
王陵「私の好きなのはタイタスの娘ラヴィニア。父のせいでトラブルに巻き込まれて、彼女は敵に性的暴行を受け、舌を切り取られて両腕を切断される。これは俺の命より大事な可愛い子鹿だった。かわいそうに。ラヴィニアは自分の父に殺されるの。」
槇島「辱めを受けた命から解放されて、ラヴィニアは幸せだったと思うかい?」
王陵「娘が辱めを受けたあとも生きながらえ、その姿をさらして、悲しみを日々新たにさせてはなるまい、でしたっけ?槇島先生」
槇島「美しい花もいずれは枯れて散る。それが命あるもの全ての宿命だ。ならいっそ、咲き誇る姿のままに、時を止めてしまいたいと思うのは無理も無い話だね。だかしかし、もし君が彼女を実の娘のように愛していたというのなら、君はあの子のために流した涙で盲目になってしまうのかな?」
王陵「あら、それは困りますわ。だって私、これからも、もっともっと新しい絵を仕上げていかなければならないもの」
の対話
槙島「ゴートの女王タモーラのセリフだったかな。可愛い息子たちからのご褒美をうばうことになる。あの子達の情欲は満たしてやらねば。」
槙島「さぁ狩が始まるぞ。しらじら明けの朝、野原は芳しき香り、森の緑は濃い。ここで猟犬を解き放ち、声高く吠えさせよう。真夜中になるとここは、何千もの悪魔や、シューシューと威嚇の音をたてる蛇、何万もの小鬼や身体の膨れ上がったヒキガエルどもが集まって、身の毛もよだつ狂乱の叫びを上げる。」
槙島「この女の涙を見るのは、あなたの名誉になる。ただし、心を火打ち石にして、涙の雨だれなど跳ね返すこと。」
槙島「さて、その舌でしゃべれるなら告発するがいい。誰に舌を切られ、誰に犯されたか。思いの丈を書いて訴えるがいい。その二つの切り株で字が書けるなら。」
槙島「この女の生涯は野獣に似て、哀れみに欠けていた。死んだ今は、夜鳥程度の哀れみが似つかわしい」
『死にいたる病』 キルケゴール
王陵 璃華子の父が好きだったキルケゴールの言葉
王陵「人間は動物より勝っているからこそ、言い換えれば人間は自己であり精神であるからこそ、絶望することができるのである。」
『暴力』 ミシェル・ビビオルカ
雑賀譲二による公安局刑事課向け?の講義での発言
「個人主義の高揚は暴力を助長する。フランスの社会学者ミシェル・ビビオルカからの著作からだ。さらにビビオルカは主体を奪われた個人がその不可能性を覆すための暴力もありうると展開した」
『パイドン―魂の不死について』 プラトン
医療用サイボーグにつてのインタビューを受ける泉宮寺がインタビュー内でプラトンの引用を使う
泉宮寺「不思議なんですよ。なぜみんな早く不自由な肉体を捨ててしまわないのか。」
泉宮寺「肉体は魂の牢獄だとプラントは言いました」
『情念論』 デカルト
槙島がドミネーターを向けながらも何もできない常守に対してデカルトを引用する
槙島「デカルトは、決断ができない人間は、欲望が大きすぎるか悟性が足りないのだと言った」
『闇の奥』 ジョセフ・コンラッド
1期 13話:狡噛慎也(こうがみしんや)が療養中にベットで読んでいた本
船乗りマーロウはかつて、象牙交易で絶大な権力を握る人物クルツを救出するため、アフリカの奥地へ河を遡る旅に出た。募るクルツへの興味、森に潜む黒人たちとの遭遇、底知れぬ力を秘め沈黙する密林。ついに対面したクルツの最期の言葉と、そこでマーロウが発見した真実とは。
『幸福論』 ウィリアム・ラッセル
槙島とチェのチェスをしながらの会話で登場する
槙島「ラッセルの幸福論を読んだことは?」
チェ「ないですね」
槙島「退屈の反対は快楽ではない。興奮だ。興奮するのなら人間はそれが苦痛でも喜ぶ。」
『あらかじめ裏切られた革命』 岩上 安身
1期 14話:槙島聖護がソファに座りながら読んでいた本
20世紀最大の実験、ソビエトは無残に崩壊した。都市に拝金主義が横行しマフィアが跋扈する時、地方では血みどろの民族紛争が激化する。色褪せた理想、剥出しの欲望。モスクワ、グルジア、チェチェンなど歴史的な大転換の現場にとびこみ、渾身の取材でロシアの闇に迫った講談社ノンフィクション賞受賞作。
『虐殺器官』伊藤計劃
槙島とチェの対話
槙島「まるである日突然、虐殺が内戦というソフトウェアの基本仕様と化したかのようだった」
チェ「知ってますよ、その本。Project Itoh。」
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック
フィリップ・K・ディックを読んだことがないというチェ・グソンに槙島が最初に読む一冊として勧めた本。※この会話中、槙島はマドレーヌを紅茶につけて食べている
槙島「普通でない町か。なんだろうな、昔読んだ小説のパロディみたいだ。この町は。」
チェ「例えば、ウィリアム・ギブスンですか?」
槙島「フィリップ・K・ディックかな。ジョージ・オーウェルが描く社会ほど支配的ではなく、ギブスンが描くほどワイルドでもない」
チェ「ディック読んだことないな。最初に一冊読むなら何が良いでしょう」
槙島「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」
『記憶屋ジョニィ』 ウィリアム・ギブスン
PSYCHO-PASS1期 3話に出てくるフロッピーディスクには『Johnny Mnemonic』というタイトルがつけられている。『Johnny Mnemonic』はウィリアム・ギブスンの短編小説『記憶屋ジョニィ』を原案に作られた映画。15話でチェのギブスン好きが槙島に指摘される。このディスクはチェが作ったものだとわかる。
槙島「どうでもいいんだけどさ、凄腕のハッカーがギブスン好きってのは出来過ぎだな」
『裁きの門』マーセデス・ラッキー※
PSYCHO-PASS1期 16話 タイトル「裁きの門」。マーセデス・ラッキーの著作と関係しているかは不明
裁きの門(さばきのもん Oathbreakers )は、アメリカの小説家マーセデス・ラッキーによるファンタジー小説。傭兵隊<太陽の鷹>に入隊したシン=エイ=インの女戦士タルマと、魔法の剣<もとめ>を持つ女魔法使いケスリーがレスウェランのお家騒動に巻き込まれる様が描かれる。
『パンセ』 ブレーズ・パスカル
槙島「正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。そのため人は正義に力を与えることができなかった」
狡噛「悪いな。俺は、誰かが、パスカルを引用したら用心すべきだと、かなり前に学んでいる。」
『大衆の反逆』 オルテガ
狡噛「悪いな。俺は、誰かが、パスカルを引用したら用心すべきだと、かなり前に学んでいる。」
槙島「そうくると思ってたよ。オルテガだな。もしも君がパスカルを引用したら、やっぱり僕も同じ言葉を返しただろう。」
『悪徳の栄え』マルキ・ド・サド
公安局局長(禾生)が槙島に返した本
局長「以前、君に借りていた本なんだが色々と身辺がごたついたせいで紛失してしまってね。同じものをさがすのに苦労したよ」
槙島「驚いたな。君はー」
『ガリヴァー旅行記』 ジョナサン・スウィフト
シビュラシステムの仕組みを知った槙島が局長に行った台詞
槙島「まるでバルニバービの医者だな。スウィフトのガリバー旅行記だよ。その第三編。ガリバーが空飛ぶ島ラピュータの後に訪問するのがバルニバービだ。バルニバービのある医者が、対立した政治家を融和させる方法を思いつく。二人の脳を二つに切断して、再び繋ぎ合わせるという手術だ。これが成功すると、節度のある調和のとれた思考が可能になるという。この世界を監視し、支配するために生まれてきたと自惚れている連中には、何よりも望ましい方法だと、スウィフトは書いている。」
『権力と支配』マックス・ウェーバー
雑賀「マックス・ウェーバーの言葉を借りれば、理想的な官僚とは憤怒も不公平もなく、さらに憎しみも激情もなく、愛も熱狂もなく、ひたすら義務に従う人間のことだという。シビュラシステムはそういう意味では、理想の官僚制的行政に近いかもしれない。ただしそれは公表されているシビュラの仕様がすべて真実という前提の上での話だ」
『監獄の誕生』ミシェル・フーコー
具体的な引用や作品名は出てこないが『監獄の誕生』を読むとフーコーの権力論が理解できるかもしれない。
雑賀「もしこの席に槙島もいたら、どんな風に参加してくると思う?」
狡噛「あいつは、マックス・ウェーバーを持ち出された次の瞬間には、フーコーやジェレミー・ベンサムの言葉を引用して返すでしょう」
[槙島]「システムというよりは巨大な監獄では? パノプティコン。一望監視施設の最悪の発展形。最少の人数で最大の囚人をコントロールする。」
狡噛「もしかしたら、ガリバー旅行記あたりも引用するかもしれない。あの男はシニカルで歪んだユーモアの持ち主です」
雑賀「なるほど、進みすぎた科学と政治への風刺として」
狡噛「そういう男です」
『刑罰理論』ジェレミー・ベンサム
具体的な引用や作品名は出てこないのが上記の対話でジェレミー・ベンサムの名が出てくる。会話の中のキーワードとしてパノプティコン(ベンサムが提唱した刑務所の囚人監視施設の方式)があり、理想的な刑務所として『刑罰理論』の中で提案されている。
PSYCHO-PASS 2期8話、雑賀先生と鹿矛囲との対話でも、「パノプティコン」の話はでてくる。
鹿矛囲「かつてシビュラシステムに変わる国民支援制度が経済省から発案され議論を呼んだ。それは交通と銀行を管制しその全てを把握する。パノプティコンと呼ばれるシステムだった。」
雑賀「パノプティコン。かつてジェレミー・ベンサムが収容所の建築形態として構築した全事象監視システムの名称だ」
『マタイによる福音書』
13章24-43節に出てくる毒麦のたとえを、槙島が引用している
槙島「イエスは別の例えを持ちだして言われた。天の国は次のように例えられる。ある人が良い種を畑にまいた。人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った。」
『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャー※
1期22話で狡噛が槙島を追い詰めるシーンは、この作品のオマージュではないかという説がある。以下の台詞からも槙島は狡噛に殺される覚悟ができていて、この場所を自ら好んで選んだようにも思える。
槙島「僕が君以外の誰かに殺される光景はどうしても思い浮かばないんだ」
『失われた時を求めてースワン家のほうへ』 マルセル・プルースト
22話(最終話):狡噛慎也がラストシーンで読んでいた本。
1期は、たばこの吸い殻と読みかけのこの本のアップで終わる。
「最も長い小説」としてギネス世界記録で認定されている。ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』などと共に20世紀を代表する世界的な傑作とされ、後世の作家に多くの影響を与えている。
眠りと覚醒の間の曖昧な夢想状態の感覚、紅茶に浸った一片のプチット・マドレーヌの味覚から不意に蘇った幼少時代のあざやかな記憶、2つの散歩道の先の2家族との思い出から繰り広げられる挿話と社交界の人間模様、祖母の死、複雑な恋愛心理、芸術をめぐる思索など、難解で重層的なテーマが一人称で語られ、語り手自身の生きた19世紀末からベル・エポック時代のフランス社会の諸相も同時に活写されている作品である。
文学史上最も難解な長編とされているこの本を読んでいる狡噛の知能の高さや今後の孤独な長い旅路を示しているのだろうか。
また、この本の主人公はマドレーヌを紅茶につけて食べる。それと同じことをやっていた人物がいる。それが槙島である。(PSYCHO-PASS1期 15話)
死して尚、狡噛と槙島との繋がりを感じさせるシーンになっている。
劇場版『PSYCHO-PASS』では冒頭でこの本の引用が登場。また序盤に現れたテロリストはこの狡噛の文庫本を所持している。プルーストは1期からの繋がりを見せる意味で登場させたと脚本の深見さんはインタビューで語っている。
人生は生きている竹馬に乗っているようなもの。竹馬は協会の鐘楼よりも高く伸び、やがて人は歩くことが危険で困難になりついには落下する
PSYCHO-PASS 2
『地獄の季節』アルチュール・ランボー※
鹿矛囲が雑賀との会話の中でいう「地獄の季節」というのは、作中でのパノプティコンの不具合により起きた過去の事故を指しているのでアルチュール・ランボー著の『地獄の季節』と全く関係ないかもしれない。
鹿矛囲「僕は理由を探し。やがてたどり着いた。地獄の季節に」
劇場版『PSYCHO-PASS』
『黒い皮膚・白い仮面』フランツ・ファノン
傭兵ルダカンダが読んでいた本。メモ代わりにするくらいなのでとくに思い入れはなさそう。ファノンを引用した理由については、ストーリー原案・脚本を担当した虚淵玄(ニトロプラス)と、共同で脚本を担当した深見真の2人にインタビューで書かれている
ルダカンダ「個々のレベルでは暴力というのものは原住民を劣等感から解き放つ。そしてものの見方や自滅的な態度を変化させ、恐れ知らずのプライドを持つ人間に変貌させる。フランツ・ファノンだよ。」
劇場版 PSYCHO-PASS 傭兵ルダカンダの台詞
『地に呪われたる者』フランツ・ファノン
狡噛が拷問を受けながらルカダンダとする会話の中で引用が出てくる
ルカダンダ「国家が崩壊した世界では暴力の民間化が行われる。なぜなら組織された暴力の独占こそが国家の本質だからだ。暴力が拡散するとそれは政治以下的なものになる。社会的憤怒を源泉とした組織的暴力だ」
狡噛「地に呪われる者、か。ポストコロニアルかぶれの傭兵とは始末が悪い」
劇場版 PSYCHO-PASS 狡噛とルカダンダの台詞
PSYCHO-PASS SS
『罪と罰』ドストエフスキー
「罪と罰」はCase.1のサブタイトルにもなっていて、作中でも松来ロジオン(通称ロージャ)と宜野座の会話の中で明確に出てくる。
松来「松来ロジオンだ。ここで潜在犯たちの素行を管理する保全管の仕事をしている」
宜野座「罪と罰。それでロージャか」
ロジオン「ろくな名前じゃないだろ。さすがに老婆をことしたことはないがね」
『論語』孔子
テンジンと狡噛が出会い食事中の対話で出てくる「義を見てせざるは勇なきなり」というフレーズは、孔子の書いた『論語』の中に出てくる言葉だ。
テンジン「あなた日本人ですよね。日本では義理人情に勇気ありといいますよね」
狡噛「義を見てせざるは勇なきなり、だよ」
『恩讐の彼方に』菊池寛
Case.3のタイトルにもなっておりテンジンの父の持っていた本。作中テンジンは狡噛の助けてもらいながら読み進め自身の境遇とも重ねていく。
テンジン「この本なんだけど」
狡噛「恩讐の彼方に」
テンジン「父の遺品のひとつで。たまたまこれだけ持ってたの。でも日本語がうまく読めなくて。」
狡噛「勿論教えてやる」
PSYCHO-PASS 3
『くるみ割り人形とねずみの王様』E.T.A.ホフマン
第三期では梓澤廣一がこの本を読む描写が何度も出てくる。彼にとってのクラカトゥクとは何かは『PSYCHO-PASS FIRST INSPECTOR 後編』で名言される
梓澤「ホフマンのくるみ割り人形とねずみの王様」
小畑「面白いの?」
梓澤「戦争シーンがいいんだよ。くるみ割り二行は悪いネズミと戦う兵士。魔法で醜い姿にされた姫を助けるため、世界一硬いクラカトゥクくるみをかち割らないといけない。クラカトゥクはなんのメタファーだと思う」
『ギリシャ神話』
3期はサブタイトルにギリシャ神話絡みのものが多い
1話 ライラプスの召命
2話 テウメソスの生贄
3話 ヘラクレスとセイレーン
4話 コロッセオの政争
5話 アガメムノンの燔祭
6話 カエサルの金貨
7話 Don’t take God’s name in vain
8話 Cubism
PSYCHO-PASS 3 FISRT INSPECTOR
『大阿蘇』三好達治
慎導篤志がシビュラシステムの前で幼い息子の灼に言った台詞は「大阿蘇」の引用である。これをトリガーに灼の記憶は封印された。
彼らはそこにみんな静かにたつてゐる
ぐつしよりと雨に濡れて いつまでもひとつところに 彼らは静かに集つてゐる
もしも百年が この一瞬の間にたつたとしても 何の不思議もないだらう
雨が降つてゐる 雨が降つてゐる
雨は蕭々と降つてゐる
※映画 PSYCHO-PASS PROVIDENCE内でもこの言葉を使う人物が出てくる
映画 PSYCHO-PASS PROVIDENCE
『??』??第?章??節???
作品冒頭 砺波告善の台詞からはじまる。序盤は新約聖書の引用のようにも聞こえるが、本の引用かどうかは不明
「神の愛が無限であるように 神の怒りもまた際限がない
兄弟よ、この世の邪悪に鉄槌を下せ」
『新約聖書』第一章18節 テモテへの手紙
序盤の戦闘で聞こえる台詞。雑賀と狡噛のプロファイリング中での会話で『新約聖書』の引用だとわかる
狡噛「ヒントになるかはわかりませんが戦闘中に声を聞きました。あれは新約聖書の一節です」
雑賀「どこだ?」
狡噛「あなたについて以前予言されたことにしたがってこの命令をあたえます。その予言に力づけられ雄々しく戦いなさい」
雑賀「テモテへの手紙だな」
狡噛「はい、第一章18節」
『ヨハネの黙示録』
雑賀「砺波はパウロに自分を重ねているのかもしれないな」
狡噛「引きこもりの先生はヨハネっぽいですね」
雑賀「パトモス島で黙示録でも書くか」
キリストの愛弟子ヨハネはパトモス島に流刑となり、ある時啓示を受けて『黙示録』を書いたとされている。
まとめ
書き出してみると私が覚えていた印象的なシーン以外にもかなり本の引用が出てきていた。当時、意味もわからず気付かずにスルーしてしまっていたことを思い知らされる。全ての作品を読むのは難しいけど、気になった作品だけでも読んでみるとより作品への理解が深まるかもしれません。
追記 2023.5.26。『劇場版 PSYCHO-PASS PROVIDENCE』を観るにあたり今回全シリーズを復習し直し追加しました。アニメ一期がとにかく本の引用が多いのがわかります。
情報を整理するなかで『劇場版 PSYCHO-PASS』のストーリー原案・脚本を担当した虚淵玄(ニトロプラス)と、共同で脚本を担当した深見真の2人にインタビューを見つけました。そこには文学や哲学の引用を一期で散々やったから劇場版ではもういいだろうと思ったが塩谷監督にいれてほしいと言われたというエピソードや「頭がいいやつほど強いという世界観」について語られています。こちらも面白いのでぜひ読んでみると良いと思います。
『劇場版 PSYCHO-PASS PROVIDENCE』についても、機会があればまた別の切り口でNoteを書いてみたいかなと思います。ご一読いただきありがとうございました。
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