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福島移住録 #5 いざ引っ越し

家と荷物の搬入の算段は付いたので、手続き関係を済ませれば、残るは実際の引っ越し作業のみである。5月下旬の某日、3日間に渡って引っ越しを実施した。

<1日目>

タスクは、荷物の搬出である。
内訳は、ヤマトの単身パックによる搬出と家電量販店による冷蔵庫・洗濯機・テレビなど家電の引き取りである。この二つは、引っ越し業者に任せれば一緒に済むのだろうが、バラバラに依頼しているので、こうなってしまう。

当日は、朝から荷物のパッキングと掃除を行う。ギリギリまで使っていた食器類などを段ボールに詰める。午前10時頃、先に家電の引き取りが来て、瞬く間に冷蔵庫・洗濯機・テレビが回収されていった。およそ10年にわたってお世話になった家電たちだが、最後はあっけなかった。
ヤマトは夕方に来る予定なので、それまで引き続きパッキングと家電があった場所の掃除を続ける。一人で黙々と作業をしていると、昼頃には一段落がついた。ヤマトに持って行ってもらうものの他に最低限のもの(着替えや洗面道具など)は、キャリーケースに詰めて自分で持って行く。それぞれのパッキングが済んだので、スマホで動画を見たり、ラジオを聞きながらヤマトを待つ。

午後4時頃に、予定通りヤマトさんが来た。のべ3人がかりで、荷物を搬出していく。荷物を運ぶステップとして、①家から玄関先に運ぶ、②家からトラックまで運ぶ、③トラックに荷物を詰め込む、の3つがある。①はそれなりに手伝えるのだが、③の工程がいろいろと工夫しなければならない(どの順番に荷物を載せるか、複雑な形状のものをどう省スペースで詰めるかなど)。そのやり方が担当者の頭の中にはあるのだが、私はそれが分からず、変な順番で荷物を出すことで余計な手間をかけてしまいそうで、挙動不審な動きしか出来ない。まあ、もちろん向こうはプロなので、こっちが右往左往しているうちに、どんどん荷物は持ち出されていく。結局、規定量ギリギリの荷物の量になってしまったのだが、なんとか収まった(いや、収めてもらったというべきか)。結局1時間弱かかって搬出作業は完了した。

終わってみると、家の中はがらんどう。1K6畳の狭い部屋であるが、荷物がなくなると思いのほか広く感じる。
近所の定食屋さんに行き、東京での最後の晩餐とする。何もない部屋に戻り、寝袋で一晩を過ごす。フローリングに直で寝るせいで、あまり寝られなかった。

<2日目>

いよいよ、新居へ移る。
旧居の鍵を引き渡し、福島へ移動し、新居の鍵を受け取る。加えて、ガスの開栓もある。

朝の9時半に、不動産屋さんへ行き、書類を書き、鍵を渡す。「ほう、福島ですか」という話をし、この3年間のお礼を述べて、店を後にする。新幹線の中で飲んでくださいと、お茶をいただく。
いよいよ、この街を離れるのだが、あまり感慨らしい感慨がない。キャリーケースを引きずりながら、最寄り駅に向かうなんて動作は、出張やら帰省やら旅行やらで何度もやっているので、さしずめ”またちょっとした旅行に行く”くらいの感覚にしかならなかった。

東京駅で、やまびこ号に乗り込み、福島へ。指定席を取ったものの、平日の中途半端な時間と言うこともあり、結構空いていた。自由席で良かったなと思いつつ、車窓を眺めながら肉の万世のカツサンドを頬張った。
1時間強、新幹線に揺られていると安達太良・吾妻連峰が見えてきた。いよいよだなという思いが、ここでようやく湧いてきた。

昼過ぎに福島に到着し、会社へ鍵をもらいにいく。担当の方と少し話して、新居に実際に着いたのは午後2時頃であった。改めてボロいなと思いつつ、鍵を開ける。荷物を置いて一段落したいところだが、まずすべきは掃除だったので、もってきた布巾を使って床拭きをしていく。掃除機、せめてハンドクリーナーが欲しかったが、そんなものはないので、無駄に広い部屋を一つずつ拭いていき、住めるようにしていく。

午後3時過ぎ、都市ガスの方がやってきてガスの開栓をしてもらう。作業自体は、さっさと終わったが、担当者の方が気を利かせて「こういうお風呂って使ったことありますか」と聞いてくださって、バランス釜講座をしてもらった。

夕方、掃除も一段落したので、近くのヨークベニマルに買い出しに行く。帰り道、黄昏時の信夫山と吾妻山を見て、本当に福島に来たのだなと痛感する。

家で缶ビールを飲み、ささやかに引越祝い。流石に疲れていたのか、よく眠った。

<3日目>

荷物の搬入に追われた。まず、朝一にテレビが佐川で届けられ、併せて引っ越しの挨拶用に手配した手土産も届いた。引き続き、部屋の掃除を続けていると、今度は近隣の電気屋さん(家電を購入した家電量販店の協力会社さんらしい)が冷蔵庫と洗濯機の設置のために来る。そちらも瞬く間に終わり、とりあえず洗濯機と冷蔵庫が使えるようになった。文明的な生活に感謝するばかりだ。
昼にインスタントのそばを食べて、引き続き掃除やらなんやらを続ける。ようやく、ヤマトさんが荷物を持ってきてくださったので、どんどん運び入れてもらう。真っ先に掃除機を手にして、掃除機がけを始めた。

流石にずっと一人で家の掃除やら、荷物の整理をしていて疲れたので、3時過ぎに家を出た。さっさと、現住所を証明するものが欲しかったので、市役所に転入届を出しに行く。マイナンバーカードで事前に出来る手続きはしていたので、実際に手を動かすことはほとんどなく、処理のために30分程度待った以外は、そこまで苦労もなく終わった。この足で免許証の住所変更もしたかったが、既に警察署の窓口は終わっていたので、日を改めることにした。
街を歩くと、改めてこじんまりとした街なのが分かる。ここでやっていくのかと、また信夫山を眺めながら考える。

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