「海馬万句合」第三回―選句結果(作者名あり)

題①~③は海馬選、題④は川合大祐(第2回海馬万句合大賞受賞者)選。太字が秀句です。

ひきつづきTwitter(X)での句評を募集します。以降は、作者名を付しての引用をお願いいたします。

[ 作者名なしでの発表後、ご投句から転記する際の主催者のミスが2点判明しました。深くお詫び申し上げます。詳しくは末尾の「発表時の誤植、および、それに対する対応について」をご覧ください。]


① 題「くりかえし」

余熱から始める民の物語           西脇祥貴

吐きつ食いつポリエチレンの山河あり     西脇祥貴

好きというきみが透明になるまで       なかやまなな

スプーンを潰すスプーンを潰すスプーン    栫伸太郎

右手からふだんづかいの花吹雪        スズキ皐月

劇仕立てにした永久機関の輪          成瀬悠

馬小屋でゾエトロープが閉じている      西沢葉火

我々がどこから来ても邪魔な犬        スズキ皐月

宇宙図書館に肉場と馬糞海胆         川合大祐

フィヨルドに針を落として手毬唄       西沢葉火

ドンタコスじゃない「ったら」がスゴイんだ   雪上牡丹餅

骨の模様になるまで言った           雨月茄子春

また君の乳歯で橋が建っている         城崎ララ


軸吟  奇々怪々多士済々のマネキン忌

〈披講音声〉
https://www.youtube.com/watch?v=azVwOMpklbE&t=1s&ab_channel=umiumasenryu


② Straight, No Chaser (Live [Tokyo]) ―Thelonious Monk 
https://www.youtube.com/watch?v=S9QQbqupGe0&ab_channel=TheloniousMonk-Topic

そいつ、そいつがあの粗いアッシリア       西脇祥貴

ドライスキンに徹するべきだ           朧

浮いたまま歩いて夢をおびきだす         森砂季

水族館 歴史はいつもかわいそう         スズキ皐月 

隕石の降らない大半の日々よ           太代祐一

A little deaf; 砲弾の聞き手は僕だ         西脇祥貴

天皇の街にひとつの零を弾く           川合大祐

ドラムドラムあなたのへその見せどころ       水城鉄茶


瞼はふたつでもただ壊れてゆく          藤井皐

固唾もじじつ船酔いだとさ            ササキリユウイチ

文字盤に耳で飛ぶ象死んでいる          川合大祐


軸吟  チンピラのピアノが唄った遠いいくさ

〈披講音声〉
https://www.youtube.com/watch?v=q7DVJ8N4xrQ&ab_channel=umiumasenryu


③ 題「小町が行くぼくは一本の泡立つナイフ/石田柊馬」

ぼくたちはひとり切り裂きジャックたち       今田健太郎

日本語のような日傘に目が泳ぐ          ササキリユウイチ

はしるからだ(背中に浮いている初稿)       西脇祥貴

I, Robot. My handcuffs ran away and got eaten by that dog.   栫伸太郎

モリブデン鋼の付け文 小町より         石川聡

舌下にとろけるHuman Behavior          太代祐一

カリメロの巣に現代詩文庫なしわれらの詩刑    川合大祐

粘りつく夜霧を吐いておやすみなさい        成瀬悠

ソープカッティング(もいっかい言って)ソープカッティング   城崎ララ

チェックメイトはニトロの小瓶          西沢葉火


石田さん、おれは一顆のライムです        水城鉄茶

はるか茜にうだるマチズモ            高澤聡美


軸吟 ジャズのいいとこは芋も剥けるとこ

〈披講音声〉
https://www.youtube.com/watch?v=eBV8ghBh7yY&ab_channel=umiumasenryu


④ 題「界」川合大祐選

秋の単騎待ち@ふぢはらのかまたり界        西脇祥貴

御託はJ・Bの金歯を引っこ抜いてから言え     湊圭伍

通り魔に名前をつけられちゃったから        おかもとかも

掛け声が似ている川に出てみたり          城崎ララ

脱いできた毛皮とここですれ違う          城崎ララ

みてきてよ かわいい国のお湯加減         高澤聡美

泣かないでバブルスくんをつかまえて        まつりぺきん

視界一面さだまさし                 小沢史

どらやきのかいわいなかだししちゅえいしょん     藤井皐

ニラ あらゆる交点にいてますわ           西脇祥貴 


軸吟 ごくせんの墓を月下に磨きだす

〈披講音声〉
https://www.youtube.com/watch?v=29iSET2Gp1s&ab_channel=umiumasenryu


< 以後のスケジュール(予定) >
10月13日(金) 作者名あり選句発表
  ~ twitter/メールでコメント追加募集 ~
10月20日(金) 川合・海馬コメント発表
 ~ コメントへのコメントも歓迎 ~
11月3日(金) Zoomイベント「(仮題)海馬万句合第三回をしゃべり倒す」 [ ← 10月27日(金)から変更 ]
11月7日(金) 大賞句・コメント大賞発表  [← 10月31日(火)から変更]


* 発表時の誤植、および、それに対する対応について

「選句結果(作者名なし)」発表後、現在まで二点の誤植が確認されました。主催者のミスです。投句者、読者、ゲスト選者の方々にご迷惑をおかけいたしました。お詫び申し上げます。

1点目は、題「小町が行くぼくは一本の泡立つナイフ/石田柊馬」の特選句「はるか茜にうだるマチズモ」についてです。「選句結果」発表時には、この句が「はるか茜にうだるマチスモ」(「ズ」であるべきところが「ス」)となっていました。作者からご指摘を受けましてご投句が「ズ」であることを確認し、すでに訂正しております。

2点目は、題「界」の特選句「ニラ あらゆる交点にいてますわ」です。こちらも作者からのご指摘で、ご投句は「バニラ あらゆる交点にいてますわ」であることが分かりました。確認したところ、ご投句のメール本文から選句用のExcelファイルに移す際に、主催者がミスをしていたことが分かりました。

こちらの句については、句の内容、性質が大きく変わることから、作者およびゲスト選者の川合さんにご意見をいただきまして、「ニラ あらゆる交点にいてますわ」のかたちで特選句(作者は投句者)として、事実関係を説明(この文です)することに決定いたしました。作者およびゲスト選者にはご了承いただきましたが、主催者のミスで、作者の意志を外れた作品改変となったことを深くお詫び申し上げます。


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