「盆ダンス」オンラインライブ川柳句会

8月18日夜に、川柳句会ビー面のササキリユウイチさんと共催で、〈「盆ダンス」オンラインライブ川柳句会〉と題して、選者選形式および互選形式の川柳句会を開催しました。平日の遅い時間の開催でしたが、運営メンバーを含めて23名の参加がありました。また、選者として声をかけさせていただいた川合大祐さん(句集『スロー・リバー』『リバー・ワールド』、Zoom川柳講座「世界がはじまる十七秒前の川柳入門」講師)、竹井紫乙さん(句集『ひよこ』『白百合亭日常』『菫橋』)は、こころよくご承諾くださり、各題にもご投句いただきました。一方、川柳句会の選者が初めての方々による選は新鮮で、また様々なバックグラウンドの方のご参加があり、オンライン川柳句会、けっこういけるじゃないの!と気づく機会になりました。

まず、選者選による各題の入選句です。

題「サランラップ」 川合大祐選
こころざしなかばのサランラップから/今田健太郎
幻聴のさ・ら・ん・ら・っ・ぷへ帰る足/西脇祥貴
サランラップいったんもめん並ぶ空 金瀬達雄
Ⅲ度熱傷、芯まで痛ぇ/ スズキ皐月
亡霊の(音で感じる)おともだち/雨月茄子春
筆舌にサランラップの皺をやる/嘔吐彗星
サランラップの刃と脳波との噛み合わせ/嘔吐彗星
((((((((我)))))))) /まつりぺきん
(しのびこむ/あなたの心に)ップ[ハート]/まつりぺきん
産卵の応援ラップ かまセ~ッ/水城鉄茶
サランラップを基調とした叔父貴/榊陽子
消火器をサランラップに詠んでみた/太代祐一
剥がすのをためらうサランラップの絵/南雲ゆゆ
泣きたくなると旭化成に電話する/湊圭伍
 *
やぶれればサランラップの心理劇/軸吟

題「菫」 竹井紫乙選
Violet, おもむろに言いなりになる/嘔吐彗星
低音を拒みつづけているスミレ /艶之進三輪車
この幅は菫の影が通れない/今田健太郎
下書きの夢に菫が咲いていた /水城鉄茶
頷いた途端に弛緩する菫/藤井皐
菫語を操る人のオフ会へ/和枝
菫にこだわる人工言語/ササキリ ユウイチ
菫区の廃城でとる絵しりとり/川合大祐
住民票に菫の羅列/スズキ皐月
舌にのる特攻服のすみれ色/艶之進三輪車
痣のある音の出せないラジオです/まつりぺきん
さみしさは菫であって牙である/湊圭伍
美化室にすみれ人間マリアンヌ/西脇祥貴
  *
永遠の擬態すみれの眼は四つ/軸吟

題「夏」 ササキリ ユウイチ選
母の夏がこの左心室を通る音/スズキ皐月
永遠の沈黙二つ白い列/まつりぺきん
陽炎でいるやられたらやり返す/西脇祥貴
正座して青い数寄屋に利休鼠/まつりぺきん
痙攣はざっくり言って夏の味/水城鉄茶
ポロシャツLet’s加算発光GOODEND/嘔吐彗星
詰まるところ喉仏と太陽とHUG/嘔吐彗星
売春がプール開きをほのめかす/二三川練
痛くても打ち上げ花火を上げないで/雨月茄子春
ベスト盤のジャニスに塩と水と糖/艶之進三輪車
ピカになる名前も漕ぎ方も忘れ/西脇祥貴
夏至祭でミュートを解除した歌人/南雲ゆゆ
大天使イクサ改名せまる夏/金瀬達雄
  *
アメンボが墓石にさえももぐりこむ/軸吟

題「さかな」 二三川練選
スイミーが神の候補に躍り出る/下城陽介
恋人のアップデート中背ビレ/和枝
飽食の方程式に棲むさかな/西脇祥貴
今だって授業抜け出さないさかな/太代祐一
胸びれについた朱肉はとれにくい/暮田真名
子供らはさかなの群れに流転する/藤井皐
おさかなを咥えたままで散った花/金瀬達雄
監督が刺身になれるわけないよ/暮田真名
旧字のさかなLINE教えろ/ササキリ ユウイチ
せいかくにさかなのあせをつくりこむ/ササキリ ユウイチ
冷凍庫から木星へ行く魚/竹井紫乙
あらすじはいらないお造りさえあれば/雨月茄子春
  *
黒人も魚人も命乞いが下手/軸吟

雑詠 雨月茄子春
母さんはスピノザ茹でたら出掛けます/藤井皐
辻斬りの夕餉に食べたきなこ餅/下城陽介
きらいだの形で潰れている蝉/竹井紫乙
眼孔にワイキキビーチ作ろうね/榊陽子
溢れでるYouTubeの音from肺/スズキ皐月
ダイイングメッセージから音が出る/暮田真名
宇宙はきっと絵に描いた中村/西脇祥貴
小一で学んだはずの護身術/金瀬達雄
握手の中で潰れてる鍵/嘔吐彗星
知恵の環をくわしく叫ぶ柔道家/川合大祐
ダークマターのぬいぐるみだね/水城鉄茶
自主的に染色体がもっちもち/今田健太郎
エジソンの脳を見る目が変わりそう/暮田真名
頭から生えた欅が身に余る/下城陽介
ひどくねぢれた吊り橋をいちにち噛んでた/湊圭伍
法律を持ち出す大好きな森で/榊陽子
  *
デビルバットゴースト*覚えていてほしい*デビルバットダイブ/軸吟

会の後、各題秀句(運営メンバーのものを除く)となった次の4句で、投票を行いました。

美化室にすみれ人間マリアンヌ/西脇祥貴

大天使イクサ改名せまる夏 /金瀬達雄

あらすじはいらないお造りさえあれば/雨月茄子春

法律を持ち出す大好きな森で/榊陽子

結果は「法律を持ち出す大好きな森で/榊陽子」がトップとなり、作者には賞品として、川合大祐さんのZoom川柳講座「世界がはじまる十七秒前の川柳入門」6回分の参加チケットが贈られました。

選者選の後、各題秀句に選ばれた作者に席題を決めてもらいました(「お茶」「ぼんやり」「そら耳」「愛」「ホラー」の5題)。その後、Zoomの「投票」機能をつかって「いいね」選という新発案の選形式を試してみましたが、「投票」の準備に手間がかかり、けっきょく、「お茶」と「ぼんやり」の2題のみで終了(句についての短い議論は有意義でしたが)。会後に、互選というかたちで席題秀句を選びました。

題「お茶」
お茶犬を乾かす暇はないはずだ/暮田真名 秀句
お茶の葉の緑を蒸したうさぎとか/下城陽介 次点(以下、同点句)
頭からつま先までがあまいお茶/竹井紫乙
こんな世に妻が番茶をシェイクする/金瀬達雄

題「ぼんやり」
東西に出てくると可能なんですか/榊陽子 秀句
ぼんやりとした人数のこどもたち/今田健太郎 次点

題「そら耳」
そら耳はスポーツなんですよ 歩け/榊陽子 秀句
住んでいた畳のシミのウェブサイト/まつりぺきん 次点

題「愛」
その夜空頂戴ちくちくしてあげる/南雲ゆゆ 秀句
シャガールの羊の背中から食べる/藤井皐 次点

題「ホラー」
如月の窓の外にもぼくの部屋/湊圭伍 秀句
ジャパニーズホラーに帰る場所がある/暮田真名 次点

オンラインライブでの川柳句会はまだそれほど開かれていないと思うのですが、やってみた結果は、意外と?、川柳の選者選の形式はオンラインでもいけるのではないか、というものでした。とくに、選者吟で初選者をされた方々がおだやかな、雰囲気のある読み上げをしたところに可能性を感じました。対面の句会では、はっきりと声をはって披講することが求められますが、そのぶん単調に、また(特別に披講上手の方々を除いては)句にそった読み上げが難しくなる傾向にあります。オンラインではより自由な発声、リズム、テンポでの披講が可能なのではないか。

後半の「いいね」選(投票機能で、即座に「いいね/まあまあ/いまいち」を選んでいき、みなで結果について話し合う)は、やってみた感じは、俳句の互選とそれほど変わらない印象。時間的なことを考えれば、「夏雲システム」で即吟句会を行うのがより効率的だと思いました。とりあえず、いろいろ試してみないと何がうまく行くか分かりませんので、これはこれで成果ですね。

さまざまなオンラインツールを組み合わせて、またリアルな対面句会とデジタル技術の組み合わせで、川柳をもっと面白く共有するイベントは可能なはず。これからもいろいろ試していきます。みなさんも、アイデアがあれば即実行!、で可能性を切り開いていきましょう!

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