オーディエンスデザインとは?heldio#1062with3Ms特に北澤茉奈さん その2

 Manaさん第二弾をお届けしよう。その前に、オーディエンスデザインにおける聞き手の分類だけは再掲しておく。①アドレシー:直接話している相手、②オーディター(傍聴人):直接の話し相手ではないが聴こえている人。③オーバーヒアラー(立ち聞きする人)その会話を聴いている可能性がある人。④イーブスドラッパー(盗み聴きをする人)会話者が認識していない聴き手の存在。盗聴されているケースなど。
 では本題である。

③「天岩戸大作戦」をオーディエンスデザインで解明
 過疎化が止まらないと言われる全国の自治体の中で、回復の兆しを見せている自治体はどこが違うのか?過疎化対策としてまず自治体が力を入れるのが情報発信。わが街の魅力をいかに多くの人たちに伝えるか?メディアの媒体やsnsなどで情報発信して、観光客や移住者を増やそうとするのがほとんど効果をあげない。対して、回復傾向を示している自治体はそうした情報発信の前に、住民がやりたいこと、好きなことに熱心に取り組んでいる。その様子を外から見た人々が、面白そうだと気になり寄ってくる、そんなパターン。
 こうした取り組みを、古事記で登場する神話、即ち、天岩戸に引こもった天照大神を引き出すために他の神々が岩戸の外で踊り呆ける、それを聞いて顔を出す天照大神…そんな神話にちなんで「天岩戸大作戦」と私は勝手に呼んでいる。どんなに楽しい企画でも、誰しも宣伝を聞かされたり、無理強いされたりしては気が進まない。逆に、こっそり楽しんでいるのを外から見てると、羨ましくなり、参加したくなる、そんな人間の習性ゆえにひとは集まる、そんな理屈でこの作戦を推してきたのだが、そこにオーディエンスデザインの視座を加えるとまたまた解像度が上がる。
 過疎地区内においてなされている会話を種類分けしてみよう。①地元住民同士の「あれをやりたい」「これが面白い」といった会話がアドレシー。②そこに居合わせた観光客など外の人間がオーディター。以上でなされる会話はあくまで自然、外を意識した言葉のやりとりではない。③その様子がsnsなどで流れてきたのをたまたま聴いているのがオーバーヒアラー。もちろん、①、②でなされる会話がオーバヒアラーを全く意識していなか、と言ったらそうではない。彼らを多少は意識した単語のチョイス、文法は選んでいる。車の運転に例えるなら、安全運転のために100メートル先を見ながら運転してはいるが、数メートル手前もちゃんと視野に入っている、みたいな…。こうした会話を耳にするときと、メディアやsnsで宣伝している情報と接するときでは、外の人間の受け取り方は違うだろう。
 オーディエンスデザインの出番はこれからだ。この「天岩戸大作戦」、これをさらに極端に表現したのが「鎖国」である。仲間内で「いっそ鎖国宣言したら」という話になる。「もう外の人たちは気にしない」「私たちが面白いことだけやっていく」.外部に媚びて、右往左往するよりも自分たちのやりたいことをやる、これが結果的に人を呼び込むのでは?などと根拠なしで言ってたりするが、オーディエンスデザインの視座を入れると説得力がでてくる。
 この鎖国宣言、④イーブスドラッパーを作り出して、盗み聞くという状況を作り出している。意図的なイーブスドラッパーとでもいおうか。人は「ここだけの話」に弱い、他人のプライベートを覗くのも好きだ。そこに付け入る。つまり、鎖国宣言の効果を担保しているのはオーディエンスデザインなのだ。
(つづく)

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