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3. 川口さんが語る、おいしいコーヒーとは?|カフェ・デ・コラソン川口勝さん インタビュー

カフェ・デ・コラソンのオーナー川口さんのインタビュー。 第1回「カフェ・デ・コラソンってどんなカフェ?」第2回「川口さんがバッハで体験したこと」に続いて第3回はおいしいコーヒーについて語っていただきました。

川口さんが語る、おいしいコーヒーとは

― おいしいコーヒーを淹れるにはどうしたらよいのか教えて下さい。

良質なコーヒーのポイントは3つです。 一つには欠点豆が取り除かれていること、2つ目は豆が新鮮であること、それから焙煎が適正であることです。

3つのポイント。シンプルですね。
それぞれのポイントについて詳しくお聞きしました。

ポイント① 欠点豆が取り除かれていること

グレードが高いとされている豆を仕入れても、必ずカビていたり腐っていたりする欠点豆は入っているそうです。川口さんはそれらを丁寧に一つ一つ取り除いてから焙煎します。大変手間のかかる作業で、せっかく仕入れた豆の一部を捨てることになりますから、このプロセスを大切にするコーヒー屋さんは多くないといいます。

ポイント② 豆が新鮮であること

コーヒー豆は焙煎してからの時間の経過による劣化が大きいそうです。だから、焙煎してからなるべく早く飲むことがポイントです。

家庭でおいしいコーヒーを飲むポイントも、新鮮な豆を使うこと。どんなに上手に淹れても、豆が新鮮なうちに淹れないとおいしいコーヒーができない。淹れ方よりも豆の新鮮さが大切なのです。

ポイント③ 焙煎が適正であること

豆のタイプにあった焙煎度がその味を活かすことになります。カフェ・デ・コラソンでは浅煎りから深煎りまでたくさんの種類のコーヒーが並べられています。「適正な焙煎」とはどういったことなのでしょうか。

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― ハイチのコーヒー、きょうはじめていただきますが、すごくおいしいです。コーヒーは濃くて深い味のが好きで、浅煎りのコーヒー飲む機会はあまりなかったのですが。

これはアメリカンタイプ。どちらかと言うとお茶っぽい味です。ほうじ茶っぽいあまり苦味がない味。これが浅煎りの特徴です。

アメリカンタイプはよく、お湯で割っていると勘違いされますね。薄いっていうので。昔アメリカでは浅い焙煎度のコーヒーが飲まれていたのでこういう名前が付いています。でも「薄い」っていうのと「焙煎度が浅い」のは全然別なんです。アメリカンはお湯割りコーヒーと思っている人がいるけれども、実はそうではないんです。

― 僕もお湯割りだと思ってました(笑)

浅煎りすると苦味が出なくて、酸味が残ります。焙煎度が進むにつれて、つまり熱が加わるにつれて酸味が抜けていくき、苦くなっていきます。だから、深煎りは苦みがあって酸味が少ないんですね。これが基本的な考え方です。

コーヒー豆の種類によっては、焙煎度合いが深くても酸味を感じるものもあれば、浅い焙煎でも酸味のないものがあったりとか、いろいろ変わって来ます。それが面白さになっていくんですね。

ブラジルはこういう味ですよ、コロンビアはこういう味ですよとかいうよりも、ブラジルをどう焙煎しているのかコロンビアをどう焙煎しているのかによって味の出方が違うんです。 あるお店で飲んだコロンビアがおいしくて、「ああ、自分はコロンビアが好みに合うんだなあ」と思ってほかの店でコロンビアを注文したら、前飲んだのとぜんぜん違うというのが、十分起こりうるんです。

― そういえば、コロンビアの浅煎りって、あまり飲んだことがないんですけど

そこに今度、「豆のタイプ」というのがあって、浅い焙煎に向いているコーヒーもあれば、深く焙煎するのに向いているコーヒーっていうのもあるわけですよ。 たとえばモカっていうのは酸味のコーヒーって言われるのは、酸味の浅い側に向いているコーヒーだからそうなんですよ。

逆に、コロンビアとかは焙煎度が後半のほうが、味が向いています。それじゃあ浅い焙煎にしたらそうなるかというと、結構渋みが残ってしまったりして、ちょっと飲みづらくなります。

― 結構複雑なんですね。豆の向き不向きと焙煎の浅い深いの組み合わせ

それを「適正な焙煎」と我々は言っていますけど、それぞれ豆のタイプに合った焙煎にしていくというのが、ひとつの、絶対条件だと思ってます。

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― こうやって拝見すると、浅煎りから深煎りまでいっぱいありますね。

そうですね。いろいろな方のお好みに合わせたり、いろいろな方の楽しみを広げるといった意味では、味の個性のはっきりしている方が面白い。それでうちはこういうメニュー構成にしています。

コーヒー専門店では、深煎りの濃い味のコーヒーを中心に取り揃えているところが多いですけど、例えば年齢が高齢の方だったら、食べ物が濃いのは苦手、コーヒーも濃くて苦くてというのが苦手という方が多いですよね。そういう人はアメリカンタイプがおいしいし飲みやすいです。

うちは地域で生活しているいろいろな人が来るお店なので、そういう人にもおいしいと思ってもらえるコーヒーを用意すべきだと思っています。同時に、苦くて濃いというのが飲みごたえがあって好きという方にはそういうコーヒーも用意しておかなきゃいけない。だから、偏りがない、いろいろな味を用意していますね。

当たり前のことをきちんとやる

川口さんが繰り返し強調していたのは、「当たり前のことをきちんとやる」ことでした。不良豆を丁寧に取り除くなど、おいしいコーヒーの淹れ方からサービスまで、その姿勢は一貫しています。シンプルさの中に力強さを感じました。そして川口さんが焙煎して淹れるコーヒーはとてもおいしいです。

おいしいコーヒー、落ち着く雰囲気のカフェ。その背景には「当たり前のことをきちんとやる」こだわりと、たゆまない努力が隠されているのだと思いました。

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(この記事は2013年9月にUmio's Food Blogで公開されたものです)

カフェ・デ・コラソンについて

602-0943 京都市上京区小川通一条上る革堂町593-15
営業時間: 9:00~18:30
定休日: 日曜日・第3月曜日(祝日の場合は営業)
http://cafe-de-corazon.com/


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