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小説

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私の書いた小説をまとめています。
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#小説のかけら

小説のかけら 5【ただ月の光が見下ろしていた】

 人の話を真面目に聞く気はあるのかと、ついに彼が私のイヤホンをそれでも気を遣ったのか片方…

有未
4か月前
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小説のかけら 7 【居場所を探して】

 壊れかけのノイズが耳から遠くで鳴る。壊れかけの愛はとても脆く儚く悲しかった。夜明けの空…

有未
1年前
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小説のかけら 6 【君はまるで太陽のように】

 切り取られた真夏の空が浮かぶ。僕はそれをぼんやりと眺め、流れる汗を拭うことなくそのまま…

有未
1年前
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小説のかけら 4 【たとえば傘のない日に雨に遭うように】

 たとえば傘のない日に雨に遭うように、偶然のように私の記憶は思い出に出会う。傘を持たない…

有未
2年前
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小説のかけら 3 【君を探して】

 手作りのスコーンにクッキー、淹れたての紅茶。隣には君。太陽はまだ高い位置で輝き、私たち…

有未
2年前
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小説のかけら 2 【それでもきっと恋だった】

 寂しさが必要な愛だった。寄り添っても消えない虚が、いつまでも私の心にあった。その人の痛…

有未
3年前
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小説のかけら 1 【閉じた世界での祈り】

 時計の針が日付の変更を刻む頃、扉の開く音がした。なくしたなにかを見付けたような、そんな気持ちで私は恋人を迎える。私たちは、たったふたりで完結していた。世界など、どこにもなかった。離れていれば会いたいが募った。開け放した窓から確実に夏の気配を感じ、蝉の声を聞く。私たちは、そっと窓を閉めた。  君が好きだと言えたなら、どんなにか私は心救われるだろう。たとえば君に心寄せるひとがいたとして。たとえば君は私を思っていなくても。ただ、子供のような心で、君が好きですと。君に伝えられたな