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匙投げ小説執筆法 4.とにかく書きはじめよう

とにかく書きはじめよう


物語の書きだしは、小説執筆の最難関です。車でいえばエンジンが温まっていない状態ですから、うまく発進できません。上手に書けなくて当然です。とにかく書きはじめてしまいましょう。多少まどろっこしくてもぎこちなくてもおかしくても、あとでいくらでも直せます(過去を改竄できるのが小説執筆の醍醐味です)。まず、勢いよく始めることが大切です。


魅力的なファーストシーンのコツはいくつかありますが、とくに大事なポイントを挙げます。

① 動きのあるシーンから

思わせぶりなプロローグは、かえって読者の興を削ぐことが多いので、それなしに物語が成立しない!という場合でないかぎり書かないことをおすすめします。

物語の始まりは、退屈な動きのないシーンよりは、すでに事件が起こってキャラや状況が動いているシーンが理想です。むろん、動きの少ない穏やかなシーンから始めることもできますが、その場合はのちの波乱の予感が必要です。


②主人公は最初か次の段落で登場させる

なるべく早く読者が感情移入できる対象(できれば主人公がベスト)を登場させましょう。主人公の外見的特徴(容姿・服装・年頃・性別など)がわかればなお良いです。姿形のわからないキャラに感情移入してもらうのは至難の業です。


③主人公は何かがうまくいっていない

主人公はピンチや葛藤に見舞われているほうが読者は興味を持ちやすいです。そのピンチや葛藤が物語の本筋に絡むものであれば、いうことなしです。なんの葛藤もなくうまくいっている話は自慢をきかされている気分になりますし、物語として深みに欠けます。摩擦力なしに車が走れないように、小説に推進力を与えるにはキャラの葛藤が必要です。


④説明は後回し

読者の気を惹こうと、出だしで何もかも説明しようとしないでください。小説の読者は設定をわかりたいのではなく、シーンを楽しみたいのです。まずは何が起こったかだけを書きましょう。謎を残さなければ、読者の興味は惹けません。いきなり回想シーンに入って経緯の説明が延々と続くのは論外です。説明は物語が進んでから少しずつするのが得策です。


⑤続きが気になるように終わる

ファーストシーンの終わりは、このあとどうなるの? と読者に思わせる切り方にしましょう。④と重なりますが、謎はページを捲る原動力になります。


⑥物語の結末を意識する

ファーストシーンの多くは、ラストシーンと呼応します。物語の始まりを書くときは、物語の終わりを意識してください(ネタバレはしないように)。ラストシーンに迷ったら、ファーストシーンに立ち返るのも手です。


ファーストシーンが書きあがりましたか? 一つシーンが書けたら、続けざまに次のシーンの出だしを書いてしまいましょう。キリのいいところでやめてしまうと、次に原稿に向かったとき、続け方を思いだすのに苦労します。

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