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書評『ファイナルガール』

悪のファイナルアンサー

ファイナルガール――それはアメリカの批評家Carol J.Cloverが『男性、女性、そしてチェーンソー:モダンホラー映画におけるジェンダー(Men, Women, and Chainsaws: Gender in the Modern Horror Film)』で作り出した用語であり、主にスリラーやホラー映画で、最後にひとり生き残る女性のことをさす。彼は、ジェンダー論的な視点でホラー映画を解釈しており、映画のなかでなぜ女性がサバイブするのかというと、現代においては男性の成熟が難しくなったために、その理想が女性の側に託されたのだと説明する。
本書『ファイナルガール』が、そのことをふまえて書かれたのかどうかはわからないが、まさに前述したような問題が自然に組み込まれた、批評性の高い非常にクレバーな短編集であることは間違いない。

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