2010年02月10日深夜。前園直樹グループと小西康陽さん

暫くの間、他所にあげていたセットリストの掘り起こしを続けます。感想は当時のものですが、ここでは極力その時の文章のままで。

これは2010年2月に開催された前園直樹グループのライブの時のメモ。非常に個人的な話を書いていますが、もう10年以上前の誕生日前日に、更にその10年ほど前を回想しているという日記です。ややこしい。

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2010-02-11

昨晩というか今朝早くというか。小西康陽さんが主催したイベントを観るため久々に下北沢に向かった。暫く世田谷区に住み渋谷に通っていた時期があり、シモキタはいつも乗換の駅。当時親しかった友人の中には小劇場に出ていた者も居たりしたから、この街に来ると甘酸っぱいものから泥臭いものまで思い出が溢れてしまう。そんな下北での話。

小西さんのイベントが開かれたのは、下北沢にあるモナレコードというライブスペースを持つレコ屋。24時開始なのに僕は3時間も遅れて入ったので、参加出来たのは前園直樹グループの二部とその後のラウンジDJタイムだけ。でも十分だった。多くの関係者や音楽を愛するオーディエンスが作り出す温かい空気に包まれながら、僕は「家に戻ってきた」かのような不思議な感覚に包まれ泣きそうになっていた。

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今から10年ほど前、僕は小西さんに随分とお世話になった。まだ社会人駆け出しに近かった自分が当時携わっていた仕事でクラブイベントを主催することになり、小西さんにプロデュースをお願いしたのが縁。ピチカート・ファイヴが無名だったデビュー当時(ノンスタンダード時代)から、延々とピチカートマニア歴を重ねていた僕にとって小西さんと関われたことはとてつもなく幸運なことだったが、更に幸運だったのはそのイベントが一過性のものではなく、3年にわたって行われたことだ。

関わったDJは小西さん、池田正典さん(Mansfield)、福富幸宏さん、コモエスタ八重樫さん、須永辰緒さん。更に集大成となった3年目は小西さんがその日限りのバンドを率いて登場、パーカッションに猫沢エミさん、コーラスには野本かりあさん、そしてゲストボーカルに夏木マリさんと、今考えてもゾクゾクするようなメンバーで固められていた。フライヤーには信藤三雄さん率いるCTPPが関わり、演出にはロマンチカの林巻子さんも加わっていた。企業のスポンサーするイベントという枠組みを大きく越えたこのプログラムは、一ファンとして僕が参加したい、というイベントそのものだった。小西さん、そして事務所の方々、制作会社の方々と思いを共有し、長い時を過ごしたことは今でも大切な宝物として自分の中にある。

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僕はその後会社を離れ、それ以来仕事で小西さんと関わることはなかった。小西さんの仕事のメインがスタジオワークとDJ活動に特化し、更に僕がしばらく東京を離れたこともあり、小西さんにお会いする場もなくなっていた。途中、小西さんが体調を崩されたという噂を耳にして実はずっと気になっていたのだが、いつの間にかきっかけを失ってしまった、というのが正直なところかもしれない。

そんな折。最近、と言っても1年ほど前だったかと思うが、小西さんが新しいバンド「前園直樹グループ」でピアノを弾きはじめたと聞いた。これはきっかけになるな、ライブを観にいけるな、と思った。そして真夜中のイベントへ、ということになる。

前園直樹グループ
(10 Feb 2010 - 2nd Set / 下北沢モナレコード)

01. 時計を止めて(水橋春夫)
02. 悲しい酒(石本美由起-古賀政男)
03. 星影のワルツ(白鳥園枝-遠藤実)
04. 恋人たちの時間(山上路夫-村井邦彦)
05. 黒い花びら(永六輔-中村八大)
06. 子供たちの子供たちの子供たちへ(小西康陽)
07. SHOW(山下達郎)
08. 地球はメリーゴーランド(山路路夫-日高富明)
09. 好きなんだから(小坂忠)

- encore -
10. 夜明けのうた(岩谷時子-いずみたく)

前園直樹: Vocal/Guitar/Percussion
小西康陽: Piano/Chorus
羽立光孝: Bass/Chorus

()内は作詞者-作曲者。穏やかなアレンジで、曲の良さが際立ってました。

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ライブが終わった後、下のラウンジでフリマなどを眺めていたら、小西さんとバッタリ(という表現も変だな)。少し驚いた表情の小西さん曰く「ライブの時、(客席に)似た人がいるなと思ってたよ」。相変わらず優しい目をした、飾らない小西さんがそこにいた。一気に時が戻っていく。

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縁というのはありがたい。ただし関係は自らの意思や行動で変化する。日々の忙しさに対処できず、「これも縁」とうそぶいて徐々に連絡を取らなくなり、転職や引越を機に疎遠になっていった知人や友人たちは今、どこで何をしているんだろう。

SNSを通して、オフラインで疎遠になった繋がりを補完できるようになってきたのはうれしいこと。でもそのことで安心し繋がりを大切にする努力、しなくなってきている自分がいるような気がしてならない。ましてやそのような繋がりがない人と言ったら疎遠になる一方だ。

区切りの日(痛)なので、ちょっと青臭く、深い思いに沈む2月11日の昼下がり。その前に手紙でも書くことにしようかな。誰かと飲みたい気分だけれど。

取り急ぎ。皆、ありがとう。これだけは齢を取る前に言いたかった。

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