2010年01月16日 松たか子さんのライブを観に行ったら大瀧詠一さんに遭遇した思い出話

2010年の1月17日にとあるサイトに書いた日記ですが、こちらに転記します。11年も前の日記なので文体が若かったり、稚拙だったり、古い情報なども散見されますが、まあなるべく当時ものをそのままで載せようかと…(もちろん一部修正はしておりますが)。

そう言えば、松たか子さんはこの年を最後にコンサートツアーは止まったまま。いつかまたオリジナルを歌う松さんのライブを観たいものです

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福生行きの切符買って~ お守りに~♪

昨晩(2010年1月16日)、「坂の上の雲」のおひいさま役・松たか子さんのコンサートツアー初日を観に、福生まで行って参りました。アルバムは殆ど持っているし、ミュージカルでは何回か生で拝見していますが、ワンマンライブは実は初めて。本当はもっと自宅に近い中野サンプラザ公演(3月)に行こうかと考えていたのですが、その日は友人の結婚式と被っていて都合がつかなかったことと、ナイアガラーの聖地・福生でのツアー初日という組み合わせに魅力を感じたこともあり、じゃあ福生見物がてら行くか…ということでこの日を迎えたわけです。で、コンサート会場に至るまでのあれやこれやについて話を始めると終わりそうに無いので割愛して。

松たか子 Concert Tour 2010 "Time for Music"
(16 Jan 2010 / 福生市民会館)

実は今回、サポートメンバーが誰なのか会場入りするまでよく分かっていなかったのですが、会場で手に入れたコンサートパンフにメンバーのインタビューを発見。なんとギターに佐橋佳幸さん(これは当たり前か)、キーボードに柴田俊文さん、ドラムスに小笠原拓海さん…そう、山下達郎バンドのテクニシャンたちですよ。更にサックスには佐野元春さん(&HKB)、小坂忠さん、鈴木祥子さん他、ミスチル、桑田圭祐さん、槇原敬之さん、福山雅治さん等のサポートで超がつく売れっ子の山本拓夫さん。ベースの川内啓史さんは観るのが初ですが小笠原さんとバンド活動をしている凄腕の若手らしいと。うわっ、いいメンバー。

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自分の席は比較的後ろの方だったのですが、何しろここは1000人規模の比較的小さいホールでしかも左右で言うと真ん中寄り、3列前がPA卓という(ステージからはちょっと遠いけれど)音響的にベストポジション。いいぞいいぞ、なんてテンションを上げていた開演5分前…ふと顔を上げると、少し離れたところからやや年配のご夫婦がこちらに向かって歩いて来られるのが目に入りまして。

あ、あ、あ・・・ ○×△□!・・・大瀧詠一さんじゃありませんか! 「サハシさん人脈」しかも「福生」ということを考えると予感が全くゼロというわけではなかったのですが、それでも殆どメディアに出てこない仙人のようなお方ですからね、驚いたのなんのって、もう。

そんな僕の錯乱に気づかれることもなく、ズシズシと近づいてきた大瀧さんは、とうとう目の前まで来てしまいました。僕がU列24番。大瀧さんはT列24番。そう、なんと大瀧さんは僕のちょうど一つ前の席だったのです。50cmほど先に大瀧さんの後頭部… 「Baby 接近遭遇、出会いは七不思議」とはまさにこのことか!

…と言うわけで、ステージ方向を向くと師匠の後頭部越しに松さんを観るという、まあとんでもない図式で2時間を過ごすことになってしまいました。もう、気が散って仕方が無い。

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以下、本編のレポート内容が薄いのはご容赦を。何しろ後頭部に気を取られていたからなあ。

今回のライブ、前半はニューアルバム「Time for Music」を中心に構成、後半は既発シングルをたたみ掛けると言うバランスの良いセットリスト。松さんの穏やかで上質な音楽世界を、佐橋バンマスと凄腕ミュージシャンズが丁寧にポップにまとめていて、とにかく鉄板な内容。で、松さん、ホントに歌上手い。ピアノ上手い。そして美しい… 更にオーディエンスも非常に上質(変に煽らないし、じっくり音楽聴いているし)。まるで大貫妙子さんのライブにいるかのような心地よさがありました。敢えて言うなら、もっとバンドメンバーが(達郎バンドやHKBの時のように)ソロ回しを派手に入れてくるかと予想していたのですが、その辺りは松さんの歌を聴かせることに徹して極力丁寧に、という演奏でしたね。初日だから、というのもあるかもしれませんが。

印象的だったのはライブ中盤。「Time for Music」では英語、日本語両バージョンがレコーディングされていた「500miles」ですが、この日は「この詞がとても好きで」という松さんのコメントと共に清志郎さん作詞の日本語バージョン。佐橋さんと柴田さんのみが演奏に参加し、彼女のアカペラが響き渡る場面などもあって、改めてシンガー松たか子の持つ歌の力を十分に認識させられました。そう言えば昨年11月(注:2009年11月13日SHIBUYA-AX)の高野寛さんのライブでも、アンコールの最後に清志郎さんが詞をつけたこの日本語バージョンが歌われていたなあ、なんてことも曲中に思い出してみたり。

さらに「曲を書いていただくことで素敵な女性との出会いがあった。『役者魂』というドラマの主題歌をとある女性の歌手の方が書いてくださった時、最初に送られてきた歌詞がものスゴイ達筆でびびった」と当時のエピソードを紹介しつつ、続けて演奏したのが竹内まりやさん作「みんなひとり」 ・・・いやあ、グッと来ますね。

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「作詞・作曲 市川染五郎、現・松本幸四郎*、歌 その娘でお送りします」なんてMCで始まったアンコール1曲目は、やはり「Time for Music」収録の「野バラ咲く路」カバー。更に柴田さん→山本さん→小笠原さん→川内さん→佐橋さんの順にソロ回しを兼ねたメンバー紹介をすると、最後に「私も佐橋っちゃ佐橋・・・。いえ、松たか子でお送りしました~」とジョーク交じりに自己紹介、そのまま「コイシイヒト」になだれ込むエンディングはアンサンブルの素晴らしさが堪能できるピースフルな空気感に包まれていました。しみじみ良かった。 (*注: 2021年3月時点では、現・松本白鴎さんですね)

で、セットリストです。記憶が確かならこれであってる筈。僕の注意力が終始散漫になっていた(笑)ことを差し引いても、ホントにいいライブでした

01. So Long
02. I NEED YOU
03. WIND SONG
04. 君となら
05. きっと伝えて
06. Time for Music
07. 500マイル
08. みんなひとり
09. ほんとの気持ち
10. 未来になる
11. 僕らがいた
12. 黄昏電車
13. 優しい風
14. 山手駅
15. 時の舟
16. 明かりの灯る方へ
17. 明日、春が来たら 97-07

encore
18. 野バラ咲く路
19. メンバー紹介~コイシイヒト
20. タイトル未定曲(新曲)

松たか子: Vocal/Piano/Keyboard/Percussion
佐橋佳幸: Guitar
川内啓史: Bass
柴田俊文: Keyboard/Piano
小笠原拓海: Drums
山本拓夫: Sax/Flute

ちなみに、最後の曲は、このツアーに合わせて書かれた新曲の為、タイトルも決まっておらず、福生公演が初演というもの。最後に来て、佐橋さんのギターが呻るエイトビートのロックンロールにみんな笑顔。

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さて、終演後。ご迷惑とは思いつつ、大瀧さんにお声がけさせて頂きました。実は10年前にロフトプラスワンでもお会いしている話をしたところ、「2000年の! あれ来てたんだ」と、さっと正確に年号が飛び出すあたり、流石は我らが師匠。

その後、「松さんのライブってこういう感じなの?」と聞かれたので「いやあ、大瀧さんが気になって集中できませんでした」と返したところ大笑いをされたりとか。時間にしてほんの数分でしたが、くつろいだ大瀧さんから逆質問を暫く受けて、隣では大瀧さんの奥様がニコニコされていて…

帰り際、「次のアルバムにも期待しています」とは流石に言えず、何を言ったらよいのやら分からなくなり、「お元気でお過ごしください」などとマヌケな言葉が口を突いて出てしまう体たらくだったのですが、大瀧さんは「またきっとどこかで逢えるでしょ」と、とても温かい言葉を下さいました。なんというか・・・、10年分くらいの運を使い果たした気がします。

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さて。実はこの大瀧さんの予言は3年後に現実のものとなるのですが、それはまた別の話。

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