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忍殺TRPG小説風リプレイ【フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その1)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 今回挑戦したのはニンジャスレイヤー公式の【フー・キルド・ニンジャスレイヤー?】を元にした個人製作のシナリオです。

 挑戦するニンジャは作中で出てくるときに紹介しましょう。現時点で何人出るかが分かりませんので。

 それではやっていきたいと思います!

◆本編

 トコロザワ・ピラー、44階会議室。薄暗い部屋の中、煌々と輝くモニターの前にソウカイヤの中でも選りすぐりのニンジャたちが集まっていた。

「いいかテメェら、今回のターゲットはコイツらだ」シックスゲイツの一人であるソニックブームが手元のUNIXを操作すると、モニターに2人のニンジャのバストアップ写真、そしてニンジャネームが表示される。ニンジャスレイヤー。ドラゴンチック。

 その名前を見た数名のソウカイニンジャが各々の反応を示し、場のアトモスフィアが僅かに沸き立った。「このニンジャスレイヤー=サンはリー先生のラボ送りにしてやった筈だが、どうもドラゴンチック=サンの手引きで脱走しやがったらしい。INWの連中は後で問い詰めるとして、そして少し前に入ってきた情報だが」

 ソニックブームはそこで言葉を区切り、躊躇う様に数秒の間を置いてから口を開く。「ミュルミドン=サンとダークニンジャ=サンがこの連中を追跡して、返り討ちにされた。ミュルミドン=サンは爆発四散。ダークニンジャ=サンが意識不明の重体だ」

 場が先程よりもさらに大きくざわめいた。ラオモト・カンの懐刀、ソード・オブ・ソウカイヤたるダークニンジャまでもがやられたというのか。「そしてコイツらは今こうしている間にもウチのニンジャたちを殺して回ってやがる。これ以上ソウカイ・シンジケートのメンツに泥を塗らせるわけにいかねえ」

 ソニックブームは拳を机に叩き付け、空気が震えるほどの声量で叫んだ。「今すぐに見つけて殺してこい!いいな!」ソニックブームの咆哮の余韻が消えるより早く、ソウカイニンジャたちは一斉に部屋の中から飛び出し、犯罪都市ネオサイタマへと解き放たれた!

◆◆◆

「アァーッ!なんということだ!これはまったく素晴らしい!いや、よろしくないことだ!」ネオサイタマ各地に点在するINWの秘密研究ラボ、そのうちの一つ。机の上に所狭しと並べられた研究資料を見ながらリー先生が興奮気味に叫んだ。

「まさか100倍濃度のゾンビーエキスを無効化させるとは!単純なニンジャ耐久力、あるいはヘビ・ニンジャクランなどに見られる毒物耐性では説明がつかない!彼に宿ったニンジャソウルは謎が多いネェー!」「アーン、いけませんわセンセイ。そんな興奮なさっては」助手のフブキ・ナハタは赤黒い染みのついたハンケチでリー先生の汗を拭いつつ、豊満なバストを顔に押し付けた。

「それにこのドラゴンチック=サンというニンジャの使ったジツも面白い!」リー先生はフブキの胸を押し退けつつ、トリュフ豚めいてレポート用紙に鼻先を近付ける。

「これはかのレンガ・ニンジャが用いたレンタン・ジツによく似ているが、細部が伝承と異なっている!それを実現させているのがやはりこのユニークな呼吸法だネェー!これはもしかしたら古のニンジャソウルとドラゴン・ドージョーに伝えられるニンジャアーツのミクスチュアによる……」「アーン、先生!それよりもソウカイヤに対してどう説明しますの?」

 フブキは机の上に身を乗り上げ、暴走しそうになっていたリー先生のニューロンにストップを掛けた。リー先生は魅力的なニンジャ現象を目の前にした時、知的好奇心の赴くまま休息も取らず、飲まず食わずで考察と研究に没頭してしまう癖があるのだ。コブチャの入っていた紙コップが倒れ、一部のレポート用紙を濡らした。

「どうもこうも起きたことをそのままに説明するしかあるまい!研究材料として預かっていたニンジャスレイヤー=サンを逃がしてしまったと!虚偽が通じる相手ではないのですから!」「ですが、ラオモト=サンが許すでしょうか?」「それは過去の類似例から推測するに極めて実現可能性に乏しいと言わざるを得ないネェー」「アーン!いけませんわ!」フブキは机の上でウナギのように艶めかしく身をくねらせた。

『も、申し訳ありませんリー先生。僕が留守を任されていながら……』キュルキュルと頼りないキャタピラの音に混じり、涙声のスピーカー音声が響く。リー先生が声のした方に顔を向けると、床の上を蛍光色の液体で満たされたシリンダーが下部に取り付けられたキャラピタで走っている。そしてその液体に浮かぶのは……ナムサン。ニンジャの生首である!

「気にすることは無いトリダ君!元から君には防衛戦力としての期待はかけていなかったからネェー!むしろその不死性によってこのニンジャスレイヤー=サンとドラゴンチック=サンのカラテ、ジツのデータ収集に大きく貢献した事実を評価したい!」『先生……僕を褒めてくれてるんですか?』「そうだとも!」『本当ですか?』「そうだとも!」

「ところで先生、ソウカイヤはニンジャスレイヤーとドラゴンチックに追手を差し向けているそうですわ」「なに……なんだって?」いつの間にか机から降りたフブキが手に持ったノート型UNIXのキーボードを片手でタイプし、ソウカイネットに流れる情報を表示させた。リー先生はずれた眼鏡を指先で直し、画面を覗き込む。

「ンンー。ダークニンジャ=サンがすでに撃退されたと。彼に宿ったソウルも研究しがいがあるが、ズンビーにしてもいいという連絡が来ていないということは、まだダークニンジャ=サンが生きておるのか、あるいは我々がお払い箱ということなのか。これはそう遠からずに我々の下にもニンジャがデリバリーされてくるかもしれないネェー」「いかがいたしましょう、先生?」フブキが豊満なバストでノート型UNIXの画面を閉じた。

「ここは先手を打って行動する必要がある!」リー先生が両手を机に叩き付け、無数のチャートや円グラフの書かれた資料が宙を舞う。「どうするんですの?」「なに、つまりはポーズだよ。スポンサーに対して鋭意努力しているというアピール……営業活動が必要なのだ。なんと煩わしい事だ!アーッ!」「いけませんわ先生!そんなに興奮しては!……そんなに興奮しては!」フブキの息が荒い。

「結論から述べると、我々の手で先にニンジャスレイヤー=サンを確保してしまえばいい!たとえそれが達成できずとも、やろうとしたという事実を証拠として残せればそれでいい!フブキ君!腕利きのニンジャ傭兵に連絡を取ってくれたまえ!」「分かりましたわ先生、ただちに行います」

『ぼ、僕にやらせてください!先生のお役に立ちたいんです!』フブキ助手が部屋を出ていこうとするより早く、ブルーブラッドがキャタピラで前後に走行しながら存在をアピールする。「その熱意は買うがネェー、トリダ君」「ボディが無いアンタに何が出来るのよ」リー先生が何か言うより早く、フブキが冷たく吐き捨てた。『クゥッ……!』ブルーブラッドは悔し気に唇を噛んだ。

◆◆◆

「シューッ……」暗闇に包まれた部屋にニンジャスレイヤーの瞳が赤く明滅する。彼はアグラ姿勢で呼吸を深めつつ、宇宙に浮かぶ緑色の星々めいたUNIXモニタの通信ログを視線で追う。彼の胸中を満たすのは、先の戦闘における敗走の屈辱だ。

(敗走?否。ニンジャスレイヤーには敗北も逃走も無い。これは勝利への布石であり、敵を誘い込むための罠だ。俺がニンジャに追われているのではない。俺がニンジャ共を追い詰めている!)

『サンモク・ストリートで不審死』『アタラシイ・エレクトロニクス社の株価暴落』『モーターヤブシリーズ追加発注』『ツチノコ・ストリートにninja1pop』配下のハッカーたちが電子の世界に張り巡らせた情報網に新たなニンジャがかかった。ニンジャスレイヤーはアグラをやめ、回転ジャンプで立ち上がる。

「私はニンジャスレイヤーだ……ニンジャスレイヤーはニンジャを殺す……故にニンジャスレイヤーはニンジャに負けることは無い……ニンジャスレイヤーは不滅だ……!」

 呪詛にも似た自己暗示の言葉と共に青年は部屋を抜け出し、重金属酸性雨が降り注ぐネオサイタマの街へと身を投げる。赤黒の装束に、黒鉄のメンポに書かれた神聖なる『忍』『殺』の赤いペイント文字。今、邪悪なるニンジャと、ニンジャを殺すニンジャと、それを追いかけるニンジャたちによるイクサの幕が切って落とされたのだ……!

フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その2)へ続く