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忍殺TRPG小説風リプレイ【フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その12)】


◆アイサツ

 ドーモ、海中劣と申します。こちらの記事はニンジャスレイヤーTRPGの小説風リプレイとなっております。ニンジャスレイヤーTRPGについては下記の記事をご覧ください。

 本記事はニンジャスレイヤーの二次創作小説でありニンジャスレイヤー本編及び実在の人物・団体とは関係ございません。

 こちらの記事は前回の続きとなっております。よろしければそちらから見てやってください。

それではやっていきたいと思います!

◆本編

◇3ターン目

◇◇◇

遭遇グロウコブラ: 1d12 = (9)
リストレイント

 ネオサイタマ郊外、遺棄されて数年経つ立体駐車場。いまやペケロッパ・カルトたちの秘密アジトと化したこの建物には外部から運びこまれた旧世紀のUNIXやファイアウォールを組み合わせた祭壇などが区画線に沿ってずらりと並び、まるでこの駐車場自体がカバーを外した巨大UNIXメインフレーム筐体めいた様相を呈していた。

 しかし、今この立体駐車場の中でタイピングの訓練やLAN直結によるハッキングを行っているペケロッパ・カルトの人間はひとりもいない。何故ならば、このアジトにいたカルティストの全員が巨大な手錠めいた拘束具や足枷で縛り上げられ、気絶して寝転がっているからだ。

「ブラックヘイズ=サンめ……性懲りもなくまだ道草を食っていやがるな」このアジトを襲撃した張本人、リストレイントは冷蔵庫の中にあったスシ・パックとザゼンドリンクを勝手に拝借し、負傷の回復に努めながらアジト備え付けのUNIXで情報収集を行っていた。

 ニンジャスレイヤーとのイクサから命からがら逃げ出したリストレイントが逃走途中でこのペケロッパ・カルトのアジトを発見することが出来たのは、彼にとってまさにジゴクに垂れた救いの糸であった。ここならば身を隠しながら傷を癒すことが出来、外部との通信も行える。まさに今のリストレイントにとってうってつけの場所であった。

「まあいい。ソウカイヤの横槍でうまく死神野郎から逃げることが出来た。もうしばらくここで休憩させてもらうとするか」リストレイントはゲーミングチェアに背中を預け、腕を頭の上に伸ばす。地面には意識を失い横たわるペケロッパ・カルトたち。彼らは呻き声一つ上げることは無い。聞こえるのはUNIXの無機質な稼働音のみ。疲労と眠気、機械的な静寂がリストレイントの目を閉じさせる。

 そしてその行動が思いも掛けずリストレイントの命を救った!「イヤーッ!」ファイアウォール祭壇の影から飛び出したのはソウカイニンジャのグロウコブラ!その瞳から放出された妖しき光がリストレイントの瞳へ吸い込まれていく!イビルアイ!「クッフハハハ!うつけめが!我がジツにまんまと嵌って……バカナー!?」

 ナムサン!目を瞑っていたことでグロウコブラのジツは何の効力も発揮せずそのまま霧散する!「ヌウッ!何奴!イヤーッ!」「グワーッ!?」リストレイントはゲーミングチェアの僅かな反動で空中へ飛び上がり、手枷、足枷、目隠しの拘束具3種類を同時投擲!会心の出来だと思っていたアンブッシュを無効化させて狼狽えていたグロウコブラはこの反撃を回避出来ず、ブザマに地面に倒れ込んだ!

グロウコブラ『対抗判定:ニューロン+ジツ』+『★レッサー・イビルアイ(1)』:
12d6>=4 = (6,2,6,2,1,1,6,5,3,2,4,2 :成功数:5)

リストレイント『対抗判定:ニューロン+ジツ』+『★大拘束具投擲(1)』:
12d6>=4 = (6,3,1,1,1,1,5,4,5,6,4,6 :成功数:7)
グロウコブラ体力11  グロウコブラ精神力8

「グワーッ!う、動けん!何も見えん!」手足を拘束されたグロウコブラは船上に打ち上げられたマグロめいて跳ね回る!「フン、貴様のことは聞いた覚えがあるぞ。確か……」リストレイントは椅子に座り直し、UNIXのキーボードを叩く。モニターにグロウコブラの写真とプロフィールが表示される。

「ああ、思い出した。……ドーモ、グロウコブラ=サン。リストレイントです。そっちのアイサツはせんでもいい」「ヌオオーッ!貴様!極めて優れたソウカイニンジャであるグロウコブラに対してなんたる無礼!今ならこの手枷を外させてやってもよいぞ!そうすれば命だけは助けてやらんでもない!」「その様で何をほざく。いいから黙っとけ。その口を縫い付けてやってもいいんだぞ」

(グヌヌヌ……!なんたる屈辱!本来ならば今頃はこの私がコイツを見下ろしている筈であったのに!このグロウコブラがあまりにも優秀過ぎたせいでブッダの不興を買ったか!?交渉のイニシアチブを握るためのアンブッシュであったが、そんなことをしなくても持ち前の知力のみで十二分に交渉を有利に進められたのだぞ、という天からの戒めか!)

 心の内で己のブザマを自己解決させたグロウコブラは目隠しの下で目を見開き、その蛇めいた嗅覚でリストレイントの方へ顔を向ける。「忠告はしたぞ!」グロウコブラは全身の関節を素早く外し、蛇めいた動きで地面を這い始めた!

「なんだそりゃあ……イヤーッ!」リストレイントは素早く立ち上がり、追加の拘束具を投擲!だがグロウコブラは蛇行して回避!そのまま大型UNIXの狭間に潜り込み、立体駐車場からの脱出に成功する!

「クソ、逃がしたか」リストレイントは舌打ちを零し、再びゲーミングチェアの上に深く座り直した。「まあいい、ソウカイヤと事を構える羽目になってもうまくない。このままのんびり遅刻野郎を待つとするか」

 リストレイントはゲーミングチェアに背中を預け、腕を頭の上に伸ばす。地面には意識を失い横たわるペケロッパ・カルトたち。彼らは呻き声一つ上げることは無い。聞こえるのはUNIXの無機質な稼働音のみ。疲労と眠気、機械的な静寂がリストレイントの目を閉じさせる。やがてUNIXの稼働音に寝息が一つ混ざり合い始める……。

◇◇◇

遭遇デスクランチ: 1d12 = (10)
ニンジャスレイヤー?

「血の匂いがする……ニンジャの血の匂いだ……」ビルとビルの間の狭い路地、錆び付いたマンホールの蓋が鈍い音を立てながら地面を横に滑る。開いた穴の中から窮屈そうに這い出てきたのはローブめいた装束を纏った異形の巨体。ワニのバイオニンジャ、デスクランチだ。だが様子がおかしい。

「腹が……減った」ローブから覗く牙の並んだ口吻からは大粒の涎が垂れ、平時は人間めいた知性を宿している爬虫類の瞳は危険な獣性に血走っている。バイオニンジャに見られるバイオインゴットの欠乏症状であろうか?否、今の彼に不足しているのは緑色のヨーカンではない。赤い血の滴る肉塊だ。

 デスクランチは普段はその巨体に見合った食欲を理性によって抑えている。だが、間近で強い血の匂いを嗅ぎ取った時などはその理性の鍵が緩んでしまうこともある。デスクランチを生み出したヨロシサンの研究者が求めたものは理性ある獣ではない。人類のカラテと獣の器官を複合させた恐るべきモンスターなのだ。

「GRRRRR……」唸り声を上げるデスクランチの視線の先に、もぞもぞと蠢く球状の物体があった。血の匂いはその物体から漂ってきている。なんとも生臭く、かぐわしい、堪らぬ匂いだ。「GRRR……GAAAAA!」完全に食欲に支配されたデスクランチは四つん這いの姿勢となり、水面から飛び出すワニのような動きで球体に齧り付いた!

「グワーッ!?」「なに!?」驚きの声を上げたのは噛み付かれた張本人であるニンジャスレイヤーだけではない!そのニンジャスレイヤーをキャプチャーネットで捕縛していたブラックヘイズもだ!「ヘイズネットが……!シマッタ!」ナムサン!ニンジャスレイヤーを拘束していたキャプチャーネットがデスクランチの噛みつきによって切断された!なんたるニンジャスレイヤーの悪運か!

デスクランチ『対抗判定:カラテ』+
『▲▲戦闘用バイオサイバネLV1』+『△△肉体切断(1)』:
12d6>=4 = (5,6,3,3,4,3,5,1,2,5,4,1 :成功数:6)

ニンジャスレイヤー?『対抗判定:カラテ』+『★カトン・パンチ(1)』:
11d6>=4 = (2,4,6,4,1,1,6,6,2,4,4 :成功数:7)

デスクランチ体力19 精神力8

「イ、イヤーッ!」「GRRR…グワーッ!」ニンジャスレイヤーのカトンを纏ったショートフックがバイオニンジャの顔面に突き刺さる!たまらず口を開くデスクランチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」デスクランチが怯んだ隙にニンジャスレイヤーはその巨体を蹴り飛ばし、反動でビル壁を駆け上がる!

「そうだ……そうだ、そうだ、そうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだ!危うく忘れるところであった!ニンジャスレイヤーは負けない!死なない!ニンジャスレイヤーは不滅だ!」ニンジャスレイヤーは吠えた!その赤黒の装束に炎が灯り、ボウ、ボウと小爆発を起こして彼の身体を加速させる! この出来事によってニンジャスレイヤーは妄執と狂気をより一層深めていく。はたして彼の行く末に何が待ち受けているのであろうか。

「……面倒なことをしてくれたな」その背中を見送っていたブラックヘイズは葉巻を口に咥えながらデスクランチに非難の目を向けた。「ああっと…………スマン。どうかしてた」デスクランチは歯に付いたニンジャスレイヤーの血肉を指先でこそげ取り、舌で舐め取った。

「すまんが、この件については補填をしてもらう。後であんた宛に請求を送るから、忘れるなよ」「ああ……本当に申し訳ない」首を垂れるデスクランチを尻目にブラックヘイズはその場を後にする。ひとり残されたデスクランチは溜息を吐き、自分の顔を小突いた。

「俺もグロウコブラ=サンのことをとやかく言えんな……反省せねば」僅かとはいえ血肉を摂取したことで知性を取り戻したデスクランチは安易に己の欲望に屈したことを深く自省し、再びマンホールから地下下水道へと戻っていった。

◇◇◇

遭遇リストレイント: 1d12 = (5)
ブラックヘイズ

「ここが指定されたポイントだが……」デスクランチと分かれたブラックヘイズはようやくリストレイントとの合流場所である立体駐車場に辿り着くことが出来ていた。ここに来るまでに時間を浪費し過ぎたが、はたしてリストレイントはまだいるであろうか。ブラックヘイズは紫煙を燻らせながら駐車場の入り口に近付く。

「なんだ。来るつもりがあったのか。それともまだ道草の途中か?」声はブラックヘイズの頭上から。ブラックヘイズが顔を上げると、立体駐車場の2階部分、柵から身を乗り出してこちらを見下ろすニンジャと目が合った。

「ドーモ、リストレイント=サン。実はそうなんだ。ここには足の調達に来てな。リムジンは置いてあるかね」「フン。遅刻していながら減らず口が叩けるその図太さだけは褒めてやる……それで、さんざん待たせておきながらここに来たということは、例の件についてOKということでいいんだな」

 ブラックヘイズは数秒間目を閉じ、この任務の間に出会ってきたニンジャの顔と名前を思い浮かべていく。リー先生から依頼されたターゲットであるニンジャスレイヤー、ドラゴンチック。一癖も二癖もあるソウカイニンジャたち、そしてデスドレインや偽ニンジャスレイヤーなどの野良ニンジャ。いずれも一筋縄ではいかぬ相手ばかりだ。

「……いいだろう。ここから先はツーマンセルで行動する。そういう話だな」「よし。交渉成立だ。それでは成果報酬の分け前について詰めるとしよう。上がってこい」リストレイントはそう言って一人で奥へと歩いて行ってしまう。

「やれやれ、慌ただしいことだ」ブラックヘイズは肩を竦め、葉巻の火を駐車場の柱に当てて揉み消す。「さてさて、俺が手に入れたのは背中を預けられる頼もしい味方か。それとも、これから先は背後にも用心せねばならないという手間か……。ま、ギャランディー分の仕事はするさ。ギャランディー分の仕事は、な」

 ブラックヘイズは新しい葉巻に火を点け、リストレイントの元へと向かう。その道中、気絶したままのペケロッパ・カルトの前を通り過ぎようとしたタイミングでカルティストが目を覚ます。「アイエエエエ!ペケロッパー!」「イヤーッ!」「ムン」ブラックヘイズはチョップでカルティストの意識を再び刈り取った。

※今後リストレイントとブラックヘイズは同時行動する。

※同時行動:互いの行動順が来た際に、遭遇相手を見てからどちらがダイスを振るか決められる。ただし、自分たちが選ばれた際もどちらか一方が攻撃を受け、その選択権は相手にある。(つまり1ターンに2回行動できるメリットと、狙われやすくなるデメリットがある)

◇◇◇

フー・ウィル・キル・ニンジャスレイヤー?(その13)へ続く