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「NAMInoYUKUSAKI/波のゆくさき THE RiCECOOKERS」

 高まる~!

 懐かしむ方もおられることでしょう。
 連続ドラマSPECの主題歌でおなじみのこの曲は、続キリ編を語るうえで避けて通れないくらい、何度も何度も聞きました。
 音楽に与えられながら生きているし、小説も長いこと書いているといろんな音楽に影響されてきます。首都編を書いている最中に出会ったのが秦基博の「Q&A」という曲で、しろ闇全体のテーマソングといっても過言ではないくらいでOPサイズのなんちゃってPVを作ったりもしました。あれは実に良い曲です。そのうち「余白」にもあげるかもしれません。フルサイズを作りたいと言ってはや早一年以上……。
 波のゆくさきは続キリ編を作っている時に再会。たまたまSPECをアマゾンプライムで久しぶりに観て、SPECという作品自体の良さを再確認しました。ドラマ、ほんと面白いです。一方、曲を耳にすると無意識に作品と繋げられないかというテーマソング癖がついており、きちんと聴いてみると、あれ、なんだか、作品の方向性と近い、と。SPECに合った曲なので本当に烏滸がましい話ではあるんですが。

 水の表現が好きで、しろ闇でも多用しています。
 日本語歌詞の方では、波をモチーフにして展開していきます。「流れ」だったり「しずく」だったり「しぶき」だったり水にまつわる言葉がちりばめられながら、かつて出会い、形が変わり交わらなくなった「二人」に焦点をあて、時が移ろい新たにやってくる日々へ。ヘビーとまでは言わないけれど、何か大きなものに呑み込まれて流されて変容していく寂しさというのか切なさというのか、そういったものが描かれているように思います。一方で、曲調は少し荒い雰囲気がたいへんかっこよく、「こぼれ落ちてゆく」の歌い方だとかサビの部分だとかどこか必死な感じがあって。
 英語歌詞の方は検索をかけるといろんな和訳が出てくるので解釈は人それぞれですが、最後の「No」と叫び続ける部分を「行かないで」と訳したものが好きです。日本語歌詞の方は流れに身を任せることを嘆く仄暗さが拭えなくてそのまま受け入れつつ前を見るような感じがあるんですが、この和訳を読んだ時、日本語歌詞よりも少し必死というか、「あなた」に向けた意志が強く伝わってくるようで、また違う面が浮かんできてそれがまた好きになるきっかけにもなって……今検索すると出てこないんですが……おかしいな……錯覚か記憶違いか……?
 音楽というのは受取手によってまったく形が変わるので、これだというはっきりとした解釈は難しいんですが、とてもね、しろ闇に合うなあと。「ただひとりきり また歩き出す」だとか、特に首都で仲間と訣別したところから始まる、これからの、後半戦のテーマソングとしてはとても強い力を持つと思いませんか。第二期OPみたいな。まあ続キリ編最後は「ひとりじゃない」なんですが。
 困難に立ち向かうためには、未来に対してある程度の希望を抱いていなければ難しい面があります。そういう中で、続キリはラナがまっしろな闇の本筋である「黒の団との因縁をめぐる物語」に再び戻っていくために、ああした希望を見出す展開は必須でした。それは彼女に主体を置くと彼女が掴み取ったものでもありますが、ある種の「大きな流れ」として描いたものでもあります。しかしその一方で、見えない場所、つまり本来の「黒の団との因縁をめぐる物語」の渦中にある彼等のことをほぼまったく描いていないというのが続キリ編の大きな特徴です。続キリ編は外側の世界の物語であり、そこに自ら飛び込んだラナの独立した物語です。ラナは最初で弟の喪失・逃亡旅の始まりという大きな変化を経て、首都編までで少しずつ旅に慣れていき仲間のことも重要視(そして依存)するようになりますが、その首都で仲間の喪失をはじめとして大きなダメージを受けます。これに耐えきれず首都を離れますが、その後、首都編を経て全てに対し不信感を抱くようになり、頼みの綱であったザナトアに一度突き放され「心を閉ざす」という段階に至ります。そこから周囲へ常に警戒しながら、良くも悪くも変化していきます。大きな流れを受けて、波に流され、形は変わっていきます。それは、長くない月を経て、描かれていない彼等の方でも何かしらの変化が起きているのは、当然のことです。お互いに変容した中でまた交わることができるのか、できないのか、というのが、続キリ編を終えたこれから明らかにしていかなければならない部分です。
 自作語りになってしまうと長くなってしまうのが恐縮です。
 そういう長く話してしまった部分と相性が良く、テーマソングだなあ、と思うに至ったわけです。
 フラネ・続キリは就職して以降初めて書いたしろ闇の章にあたり、書ける日もあれば書けない日もある中、書けない期間もせめて忘れないように、と行き帰りでは必ず聴いていました。首都編を書いていた時延々と「Q&A」を聴いていたのと被ります。
 いつか、「NAMInoYUKUSAKI」の英語歌詞を(たいへん恐縮とはわかっていながら)自分なりに訳して、またアニメ風動画を作ってみたいなあというのは、この曲を強く意識するようになってからの小さな夢です。

 最後に、原曲だけではなく、女性によるアレンジ動画がありまして、これもだいぶ聞き込みながら書いていましたので紹介します。


 繊細な世界観がよく通る素敵な歌声で表現されています。
 大変烏滸がましい話なんですが、前述したようにこの曲が続キリからのイメージと合うのと、高すぎない女声で奏でられる力強さというのが、なんだか、ラナみたいだなあとかちょっと思いながらずっと聴いてます。私の中のイメージなんですけどね。決してね、ラナはこんなに歌上手くないんですけどね。
 いろんな工夫が組み込まれている素敵なアレンジですので、原曲を元々知ってる方も是非、聴いてみてください。

たいへん喜びます!本を読んで文にします。