「首都にて」あとがき再掲
先日のイラスト再掲に伴い旧ブログを読みなおしました。首都編あたりまでは更新するたびに一応ブログに更新報告を書いていて、章終了時には気が向いたらあとがきを載せていました。
首都編を書き終えてから三年以上が経過し、あれからその続きである続キリ編を一ヶ月ほど前に書き終え、そうして改めてこのあとがきを読んだ時に、この頃の痛々しいまでの没入感、憔悴ぶり、物語に懸けていたもの、首都編後についての思いなど、かなり感情的ではあるのですが、文章の引力が凄まじくて、自分の文章ながら圧倒されてしまって、この文は残しておきたいし、続キリを終えて再び首都に戻ろうというこのタイミングで当時のことについて改めて公開することには何かしらの価値があるのではないかと考え、再掲します。
独りよがりの昏い炎ではありますが、熱意を感じさせてくれます。ただ首都編の内容が内容なだけに、ヘビーです。これを読み切ったら、この首都編を延ばした先にある続キリ編最終話のことを思い出してください。
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今更ではありますが、露骨なネタバレを含みますのでご注意を。
これまでクロ達はいろいろな街を訪れそれぞれで様々な出会いをして様々な感情を抱いてきて積み重ねてきましたが、首都のテーマは言うなれば「混沌と破壊」でした。前から決めていたことで、この展開も固めていたことでした。途中、どうやって収集つけるんですかというコメントをいただきましたが、収集をつけず……というか、心身壊れて限界まで行き着く、そういうような形を目指していました。だから本気でやりたかったし、容赦なく書きたかった。
かねてから一部の方には言い続けていたのですが、ずっと、ずーっと、この首都は書きたくてたまりませんでした。伏線回収という意味でも書かなければならない内容が詰まっていましたし、この首都編を通過しないと話せないことがとても多かったからです。今、ようやく首都編を全て公開したことに、ひとまずはほっと一息ついています。でも、終わってからも、内容について表で言うのもはばかられ、なんとなくもやもやとしているような、距離感というか、でももっと気軽に言えるようになりたいし、いつかはすらすらと言わないと表で何も言えない状態に陥るので、いつかは、と思いながら、ぐだぐだ。
今、まっしろな闇の全ての話のうちどのあたりですか、と偶に尋ねられるのですが、首都編はちょうど半分だと思います。折り返し地点であり、現段階、まっしろな闇は私の中で大きく二部構成になっていて、首都編までが丁度前半にあたるというイメージです。今までずっとクロとラーナーの二人の旅を続けてきたけれど、ここからはラナの一人旅。けれど、ラーナーがこれからキリに戻るという流れもあり、キリ編や首都編で広げた風呂敷でまだ畳めていない部分を回収していかなければならないし、いろいろ明らかにしたうえでの新たな始まりでもあり、同時に残ったものを拾っていかなければならない後半がこれから待っています。
振り返ってみればあっという間だったような気がするし、でも、カンナギに突入したあたりから一気に書き上げていた時は本当にしんどかったし、どれだけ書いてもなかなか終わらないし、それぞれのシーンは重いし……まるで取り憑かれたように書いていて、キャラが命をかけてるシーンばかりだったから、当然こちらの精神も削られるわな……と振り返れば思います。首都編は、登場人物が必死になっているのを、私のできる限りの力を出し切って記録する・表現するのが目標でした。終わってみれば、なんだかストーリー展開つまり私の力ばかり振りかざしてしまったような印象になってしまったような気がするけど、書いている間は、ただ、頭の中に動いている彼等の生き様を落とし込み形にしたい誰かに伝えたいただそれだけを考えしがみついて書き殴っていました。もっとうまくできたかもしれない、もっと表現できたかもしれない、私の力が、どう足掻いても足りなかったから、これを書くのにあまりにも拙いから、それは、もう、ずっと片隅に思ってたし、終わった今は更に強く強く思います。でも、それでも、私にできることはなるべくやりきった章でもありました。全力です。もう、本当に、本当に疲れました。首都編が始まったのは2014年4月。そこからちまちまと亀更新でだらだら続き、本気も本気で打ち込み76話から最終100話までとりあえず初稿を、と書き始めたのは昨年11月末か12月上旬からで、終えたのは今年の11月20日。終わったタイミングはサンムーン販売開始直後で最悪としか言いようがありませんが。とにかく、終わるまで2年半以上もかかりました。2014年も2015年も何もしなさすぎたんですが(そもそもはじめは2015年で終わらせることが目標だったんですが随分と遅くなりましたね 遠目)その2015年末から2016年にかけて一年ずーーーっととにかく打ち込んで、途中でツイッターも離れて、なんだか、形になったのも未だに夢のよう。
首都編最終話を書き終えて、ブログの更新記事にこう書きました。
ようやく終わりました。
ようやく解放されました。
自分の未熟さを思い知ったけど、いろいろあったけれど、満足です。
これに尽きます。疲労感滲み出てますね。放心状態でしたね。
様々な場面がありました。一番印象深いのは、どのシーンだったろう。
圭とユアの戯れの場面。
真弥登場の場面。
クロが出来損ないの少年を殺した場面。
ラーナーとセルドの再会の場面(実際は偽物でしたが)。
圭とバジルの再会の場面。
アメモースの翅が噛み千切られた場面。
クロが枷場に打ちのめされる場面。
ノエルの過去とポリゴンの戦いの場面。
アランやガストンが殺害される場面。
その裏で淡々と流れていた火事の場面。
藤波黒と笹波白の交代。
クロをはじめとした彼等の秘密を明らかにする場面。
白とラーナーが自殺しようとする場面。
ブラッキーの疾走。
ラーナーが一人で旅立つ場面。
などなどなど。
どれも書くと決めていたことでした。本当に、濃密な一章でしたね。もっとうまくできただろうと思うことはありますが、逆に、これだけの怒濤の展開、濃い密度の話をよくぞまあ書ききったなとも思います。
でも、個人的に一番辛かったのは、アランやガストン、そしてエリアを殺した時でしょう。これは、多分そうなるかもしれないというのはなんとなくいろんな方が予想されていたのではないのでしょうか。
初稿でこのあたりを書いていた頃ってクロのあの半殺し場面を終えていましたし自分の鬱の筆の流れは完全に形成されていたんですが、さすがにここをやりきった時、圭の顔がぐしゃりと歪んで、彼等が死んだとはっきり地の文に記した時は、自分でやったくせに涙がぼろぼろでて、ベッドに飛び込んで枕に顔を埋めて、遂に、やってしまった、という瞬間でした。愛着はすごくあったから、なんかもう、もっと書けるなら書きたかったし、この先もあったはずなのに、それをぶちりと切り捨てて。決めていた、とは言いましたが、アラン達を殺すことだけは割と最後の最後まで悩んでいて、辛うじて急所は逸れたとか、五体不満足でなくなったり、植物状態にしてでも、生かす方向にすべきか、というか感情的になれば心底生かしたくて、ずっとずうっと迷ったんですが、いざその場面に直面することになって、最終的には、黒の団サイドに立ったとき、間違いなく殺すという、仮に私が黒の団の立場なら間違いなく殺すという、黒の団の意向に従うことにしました。
もう、現在進行形で生きているアラン達を書くことはありません。
生死というのは表裏一体。人というのは、生き物というのは、あっさりと死んでいってしまう。死というのは、背中のあたり、或いは肩のあたり、すぐ傍にあるようなもので、今生きていることは明日も生きていることの保証にはならない。私だって明日どうなるかわからない。事故死するかもしれないし、通り魔に殺されるかもしれないし、突然病気になってころっと逝くかもしれない。そう、本気で考えていた時があった。だから常に背後が怖かった。家の中にいても怖かった。そんな時期があった。と、いうと、間違いなく引かれるんですが。当たり前のように生きてるけど、当たり前のようにいつか死ぬ。
特にエリアについては、首都編で一言も喋ることなく、アランやガストンの会話、そしてニュースでその動向がすべて語られ、静かにいなくなりました。こうするのが正しかったのか、あまりにも冷たすぎたのではないか、サブとはいえ、キャラの死という重大な場面をこんなに軽々しく扱っていいものなのか、だいぶ悩みもしましたが、死はすぐ傍にある、そのイメージ、理不尽さを求めて、こういった結果になりました。ガストンもアランも死後の展開は殺伐というか最早死人への愚弄(だと私は思う)に至っていたことについては、不条理や歪み……力をもつ者が強い。「勝つのは決意が固く、殺意が強い方」と嘗てウォルタ編でも書きました。首都編は、たくさんの人が死に、その死という概念が随分と近くなった章でした。
それでも。それでも。やはり、死というのは、重い。どうしようもなく、重い。
クロも、消えてしまって。ラーナーも、死を選択して。
主人公であっても。
それでも。それでもな。作者張本人が言うのもおかしい話ですが、胸ぐら掴んで叫んでやりたい。死ぬのは絶対に駄目だと。
傷は増える。同じ場所に同じもので出来た傷ができても、わたしはわたしで、あなたはあなた。完全に別の人間。痛みを完全に共有することはできない。
痛みのない世界にいけるのなら、それは、しあわせな世界かもしれない。その世界を選択することこそ、本当の自由を得る瞬間かもしれない。
しかし、それが本当の幸福なのだろうか。
果たして、それが本当の自由なのだろうか。
はっきり言って破壊するのは辛いですが簡単です。暴力に突き動かされて、ただ殴るだけ、ただ突き刺すだけ、ただ崩すだけ、ただ落とすだけ。
本当に難しいのは、本当に大変なのは、これからです。
からっぽになったラナがこれからどうしていくか、白はどうしていくのか、そしてクロは。他の人物達は。
丁寧に書いていけたらいいと思っています。
まだまだ書きたいこと、書かなければならないことがあります。まっしろな闇は続きます。荒野から、深海の底から、沼の底から、彼等がどうしていくのか、もしもよかったら見守ってくださればこれ以上ありがたいことはありません。
ただ、少し、消耗しすぎたので、次の一歩を踏み出すための時間をください。
最後になりましたが、この首都編を書き切れたのは、私の力というよりも、読んでくださった読者様の力があったからです。本当に支えられました。気付けば凄まじい拍手数になっていて、本当に有り難いことこの上ありません。そんな読者様へこんな読みづらくて辛い話を提供するのは心苦しかったのですが、これがまっしろな闇です。
感想、応援のお言葉、拍手、ありがとうございました。
本編から地続きの重いクソ真面目でドドドドドドシリアスな文章で申し訳ございません。いろいろ考えてはいますが、やはり一話ずつ話していこうかなとも考えています。とりあえず今回の首都編の後書きはこれで〆とさせていただきます。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
たいへん喜びます!本を読んで文にします。