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「unravel TK from 凛として時雨(THE FIRST TAKE arrange ver.)」

 また主題歌ですか、という呆れ声が聞こえる。
 unravelは最早説明不要なほど有名だし、私自身東京喰種のファンでもあるので、これまた名前を出すのも本来であれば烏滸がましい。
 まあ、そう言わず。とりあえず、何も考えずに一聴して。

 はい。
 いいでしょ。いいアレンジでしょ。もうね、駄目ですよ。この人の透き通る歌声でこんなアレンジされたらもう駄目ですよ。最高ですよ。
 まず序盤のチューニングですら良くないですか? 私もヴァイオリンを学生時代にやっていて今は楽器はあるもののだいぶご無沙汰になってしまったんですが、なんかもう、ピアノのAと、それに合わせてヴァイオリンとチェロがチューニングする、これだけで「あー、もう、だめ。観念します降参します」ですよ。オケとか聴きに行って最初に聴くことになるこの行為が私は大変好きです。弦そのものの音の良さを実感します。
 ピアノとヴァイオリンとチェロ、そして彼の歌。たった四人の少ない編成なのに、この、世界観の、音圧の広がり方。掻き乱される激しさとピアノ線のごとき細さを兼ね備えた原曲も素晴らしいですが、このアレンジはね~……いいですよ……。歌詞の切なさや独特の歌い方が余計に際立っていて。
 最後のあたりで、サビを歌いきってから、「h……」と息を吸うだけで言葉を出さない、その息づかいとか……、素晴らしくて鳥肌ものです。吐息に弱いです。これ一発録りなんですよ、やばいですよね、語彙力も低下するってもんですよ。
 原曲を聴いた時にはあまりにも東京喰種と合致したイメージが強すぎてなかなか自作とのリンクとかは考えてなかったんですが、このアレンジバージョンになると、金木くんの悲劇的な孤独が彷彿されるのは勿論ですが、自作と少し重ねたりして、はい。なんかもう、「僕の中に誰がいるの」だとか「思い出して」だとか「覚えてて僕のことを」だとか「忘れないで」と重ねる部分だとか完全に金木くんなんです、それは分かってるんですけど、「誰かが描いた世界の中であなたを傷つけたくはないよ」「無邪気に笑った記憶が刺さって」「二つが絡まる二人が滅びる」云々………………じ、自作……………っぽさがないわけではないと思いませんか……。あのですね。これはね、病気なんです。いいな、と思った歌と自分の作品を繋げようとする行為は習慣と化した病気なんです。反射なんです。はい、もうね、烏滸がましいんですけどね。
 烏滸がましいと分かっていながらもあえて挙げたのは、このアレンジがめちゃめちゃに良くて、プレミア公開で初めて聴いた時に本当に泣きそうになって、琴線は震えまくりで、それこそ感性をめちゃめちゃに刺激されて、音楽だろうと文章だろうと絵であろうと漫画であろうとどういった形態をしていようと、そういう作品に出会うと、ああ、私もなにかを創らねば、今立ち上がらないでいつ立ち上がるんだ、という衝動的な熱が込み上げてきます。そしてこの曲を聴いてから何をしたかというと、翌日から、113話を皮切りにして、続キリ編最終話の120話まで毎日更新をして、突っ走りました。毎日更新をしたい思いはずっと抱いていましたが、なかなか思い切れませんでした。もともと初稿を一気に書き上げ、つまりはストックのある状態だったものを放出するだけじゃないか、と指摘されそうですが、公開するというのは自分の中で熟成させるのとは別の勇気や力が必要になる。創作には大なり小なり苦難を伴いますが、自分の中に隠している間は結局のところ楽なんです。だって誰にも指摘されないし。実際に見てもらえるかは別問題として、他人の目に触れる場所に出すというのは、出せるところまで上り詰めるのは、しんどい。ただ不必要なほど肩に力を入れてしまっていたので、もっと作品の公開に対しフランクで気軽な感覚を取り戻したいと考えて、現在のnoteに繋がります。それは置いておいて。
 113話以降の土壇場の最終推敲でも、この繊細な曲は使いましたが、私の中で印象深い瞬間は、紛れもなくファーストインプレッションから生まれました。聴けば聴くほど細かな良さに気付いていくけれど、この動画が無かったら、もしかしたら続キリを出す踏ん切りがつかず、今もまだ手元に残っていたかもしれない。
 まあとにもかくにもまさかこんなもともとめちゃくちゃ漫画・アニメも含めて大好きだったコンテンツから突如として神降臨するとは思ってもおらず。衝動の向くまま更新を続けて続キリを終わらせた今、随分と語らせてもらったりもしたし性懲りもなくこうして語ったり、続キリに対する愛着というのは確かにあります。が、この曲から派生していった感情というのは、「続キリの先にある物語を少しでも早く書きたい・書かなければならない」「続キリで登場しない彼等の物語を書かなければならない」という衝動だったのだと思います。
 だから、この曲は続キリを突き動かしたと同時に、しろ闇そのものを突き動かしたということです。
 先日語った「NAMInoYUKUSAKI/波のゆくさき」を動画にするとすればどちらかといえばラナが核になるイメージがあります幅広く物語全体を表していくような雰囲気を想像しているのですが、この曲を動画にするとすればクロ、そして白に完全に焦点を当てるであろうと思います。
 これからも、抱えながら書いていくことになるでしょう。
 いやしかし……何度聴いても……大好きです……本当に……。

たいへん喜びます!本を読んで文にします。