歩み

あひるの空を読み返した。高校バスケ漫画だ。素敵な漫画だと毎回思う。そこには綺麗事なんかない、リアルな出来事しか書かれていないからだ。作者もコメントに、「読者を傷つけたい」と書いていた。あひるの空を読んでいると、心がうずうずする。もどかしくなる。過去に戻りたくなる。

合宿の練習がきつすぎて立ち止まってしまう女子がいた。その女子生徒に対して監督は、「人は目指していた何かに断念するときに必ず理由をつける。その方が楽だからだ。」と言った。
また、「走りっぱなしの奴なんてこの世にいない 進んで止まって 止まって進んで 人はそれを歩みと呼ぶのだ」と書かれていた。

僕もバスケをしていた。高校の時は県で上位チームに入ることが目標だった。自分が新チームのキャプテンになり、新人戦が始まる平日の練習で、復帰に半年以上かかる怪我をした。その間、リハビリと応援、それしかしなかった。
怪我から復帰したものの、心はみんなには追いつかなかった。みんなが一生懸命練習した時間、自分はひたすら眺めていただけだった。同じコートに立つ資格があるのかすら、分からなかった。ただ、春の公式戦、母校で開催された試合でジャンプシュートを決めたあの瞬間、チームのみんな、保護者の方、顧問の先生、学校の友達が喜んでくれたのを今でも忘れられない。そこできっとあの熱は終わってたのかもしれない。

漫画のようなことなんてありえない。怪我をしたキャプテンが、シーソーゲームの試合を決めるなんてありえない。いや、ありえないままでいて欲しいと願ってた。そこに立つ勇気なんてなかった。そんな勇気を振り絞るくらいなら、いっそ終わったほうが楽だった。

あの高校の部活の不完全燃焼で燻るものは、いつまでも消えないんだと思う。あとは、それをどう再び燃やすかだ。あの時と同じことはもう起きない。当たり前だったことはもう消えた。
あとは、どれだけその燻りを燃やせるか。きっと僕はまだ燃やせていない。

止まってしまった歩みを動かすには、そう簡単じゃないと思う。それでも、この想いは大切にしていきたい。再び歩き出しても、また止まってしまうかもしれない。それでも、歩くんだ。道はどこに続いてるか分からないから、自分で踏みしめながら使っていこう。

バッシュの紐をキツく縛って、体育館の床と靴底を擦る。スキール音がする。また、あのスキール音が聞こえるように、しっかりと紐を縛って、歩いていくんだ。

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