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沙弥郎さんを知ってしまった(日々のトコトコ日記)

立川のplay!museumの『柚木沙弥郎life・LIFE展』に行った。
友だちが誘ってくれて、沙弥郎さんのことをほとんど知らずに行った。
沙弥郎さんは99歳の染色家で、いったいどんな作品を作る方なのだろうと大御所の作品を見に行くきもちで出かけていったら、展示のしょっぱなで裏切られた。
72歳の時に初めて絵本を出したのだという。
72歳で巡ってきた機会に「よしきた、ついにきた!」と心をはずませたのだという。
私はその無邪気な青臭さにポカンとして、うれしくなって笑った。隣で友だちが笑いながら「怒髪天か!」と言った。(怒髪天はデビュー30目で初めて武道館でライブをした。ここで怒髪天が出てくる彼女のセンスも好きすぎる)
絵本に描かれた動物や人間のぽかっと開いた口から伝わる驚きや喜び、動きに描写された無邪気さやしゃにむさ。沙弥郎さんには大人と子どもの区別も、動物と人間の線引きもないように思えた。原色のようなマットな色と淡いパステル調の色で全く印象のちがう絵を描く。描かれる、生きる命とめぐる命。輪廻転生。
沙弥郎さんの描く輪廻転生は明るく、希望やユーモアに溢れていた。
絵本の中には谷川俊太郎さんとの共著もあった。
そういえば、少し前に谷川さんが高橋源一郎さんとラジオで話しているのを聞いた時には、谷川さんの感性の弾むような瑞々しさに、少年がいる、と思ったことを思いだした。

物心つく、というのはどういうことだろう。辞書を引くと「幼年期をすぎて、世の中のいろいろなことがわかりはじめる」と書いてある。
私はどうも世の中のいろいろなことがよくわかっていないところがあって、そのことはできるだけバレないようにして生きてきた(つもりだ)けど、なんと沙弥郎さんは「僕だって物心ついたのは80歳になってからなんだから」とおっしゃった。その言葉は物販コーナーにあった沙弥郎さんの本の帯の言葉だった。
え?と思う。そしてまた笑ってしまう。
自分へのおみやげに沙弥郎さんデザインの赤のアルファベットの靴下を買った。アルファベットデザインは90歳を過ぎてはじめたとどこかに書いてあった。履くだけできもちが明るくなりそう。Lサイズしか残ってなくて確実に大きかったけど、靴下だし履いて履けないことはないよねと無理矢理買った。
家に帰って履いてみたら。やっぱり大きかった。
けど、やっぱり履いて履けないことはなかった。



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