暑い夏です。去年より今年の暑さには危険がいっぱいです。

七月
 
 
若い人も　そうでない人も
冒険家のように
危険がいっぱいの場所で生活をしている
蟻穴に向かう
蟻の隊列が暑さで乱れていて
干からびた獲物が
入口近くで丸まっている
時間列の中へと
滴り落ちるものが汗ならば
水で補給できるのだが
今年の七月は
体内に浸透する前に蒸発してしまう
ときどき
生温い風も吹き抜けていくが
生気が無く汗臭い
倒れ込むように時間が過ぎていく
エアコンのメーターが
上限を焼き切り
夜になっても部屋が蒸す
そんな中で　少しずつ
一日を　そして人間を取り戻す
こんな夜には
爪を切ってはならないと
亡くなったお袋の声が聞こえて来るのは
汗で手元が滑るからなのだろう
時間列の最後尾にいる
若い人も　そうでない人も
今夜も危険がいっぱいの部屋で
眠るしかない