企業の目指す先は?
■初任給
先日、初任給を13%アップした企業のご紹介をしました。
その企業では、初任給の増額を2年連続で行い、現在の初任給は大卒が26万円、院卒は28万円まで引き上げられているといいます。
令和3年の男女の初任給の平均が、大卒225,400円、院卒253,500円※ですので、この会社の初任給の高さが分かります。
ところが、既存の社員に対しては4月のベースアップと定期昇給をあわせて6%の賃上げなのだそうです。
社員の給与は、新卒初任給の半分以下の賃上げ、、、です。
■日本の雇用管理制度
■社内の歪み
現在、労働者人口の減少で、いい人材がなかなか採れないという声を耳にします。
そこで、初任給を驚くほど上げる企業が少なくありませんが、それでも、会社を支える社員のベースアップはゆるやかというケースが多いようです。
これでは、のちのち社内に不満が渦巻くことになるはずです。
先の会社の新卒初任給の詳細はありませんが、それが職能給なのか、職務給なのかでも意味は変わってきます。
けれど、新卒一括採用ですと、職務給はなかなか考えにくいのです。
その点からも、これは日本独自の特殊な労働問題だといえます。
この国には、まだ根っこに終身雇用制が残っています。
■メディアの迷い
こうした点で、感じるのがメディアの迷いです。
メンバーシップ型からジョブ型へと変わらなければ駄目だという論調はあります。
それど、その2つの情報が混在したまま発信されていると感じることがままあります。
日本では、入社式が大々的に取り上げられますが、これこそが、日本の新卒一括採用の現れです。
若い時に一斉に入社して、まずは低賃金で働き、そこからだんだんと賃金が上がる「賃金後払い制度」の入り口の儀式が入社式です。
そんな儀式が今も根付く社会で、新卒者の給与が高額になるのです。
欧米でも賃金は上がっていますが、それは職務に対する高額な給与であって、もちろん入社式もありません。
日本の学生は、会社に入るために、ガクチカを備え、ESとSPIをクリアして、面接を突破します。この段階では、まだ仕事のスキルは問われません。そして配属先もまだ確定ではありません。
ですので、欧米のジョブ型のように、一定のスキルを持っている新人が入社するわけでもありません。
共通するのは、DXに特化する人材が不足しているという事だけです。
そんなところに、まだ使えるか使えないかもわからない若者が、長年働いて来たキャリアのある先輩と同額の給料をもらって働き始めたりすることが起こるのです。
おわりに
書き始めて気付くのですが、この話はとても長くなりそうです。本当は女性の労働問題を考えたいのですが、まだそこまでは辿りついていません。
新卒一括採用が今も続く中、入口の新人が高額の給与を受け取るということは、先輩方の将来の賃金上昇カーブが抑えられようとしているということです。これでは働き続けてきた人が損をしますし、やる気だけでなく、愛社精神もそがれそうです。
と同時に、仕事を教えてもらう立場の高給取りのスキルのない新人は、いかにZ世代とはいえ、居心地の悪さに加え、プレッシャーさえ感じるはずです。
互いにギクシャクする、これが終身雇用の形を変えないまま、欧米の働き方の一部を取り入れることで生まれる歪みです。
けれど日本では、女性がこれと同じような問題で何十年もの間苦しんできましたし、今もそれは残ります。
労働市場に本当の意味の平等が根付くには、なにがベースに在るかという事を考える必要があると思います。そんなことを働く側も考える必要があると思っています。
長くなりましたので続きの女性問題は次回へ。
※厚労省 令和3年 賃金構造基本統計調査より
※最後までお読みいただきありがとうございました。
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