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今だけ?それとも歪み続ける?


近頃、メディアで頻繁に目にするのがベースアップの記事です。これは多くの人が気になっていることではないでしょうか。

企業は優秀な人材を採りたい。けれど労働人口が減り始めた今、人材獲得競争が激しく、慌てています。そこで分かりやすいのが新卒初任給を増やすことです。

新聞で新卒初任給13%増の企業※がとり上げられています。新聞に載るほどのベースアップ率ですので、少し極端な例かもしれません。

これは画期的な数字だと思うのです。世界で戦える賃金水準を目指して賃金を引き上げたいという企業側の強い思いが感じられます。

この企業では初任給の増額を2年連続で行い、大卒が26万円、大学院卒は28万円まで引き上げられています。

ただ、既存の社員に対しては4月のベースアップと定期昇給をあわせて6%の賃上げと書かれています。

新卒初任給の半分以下の賃上げです。

この数字だけでははっきりとはわかりませんが、企業内に歪みが発生してはいないでしょうか。

これは、もう30年ほど前の話ですが、、、

急成長しているIT会社に勤める知人が、その会社を十数名の仲間と共に去ったことがありました。理由は、人材確保を急ぐあまり、その会社が初任給をあげすぎたことにありました。

給料の話しはあまり口にしませんので始めは皆気が付かなかったそうです。けれどある時、10年以上働き続けている人たちより、新人の給与が高いことが判明したそうです。

これに対して、従業員の不満が爆発し、交渉したそうです。けれど、給与の見直しがされることがなく、不満を持つ人たちが集団でその会社を去ったという話しです。


今、日本の働き方が変わっていると言われています。

そんな中、その方向がはっきりしない報道がされ続けているように感じているのです。

人材不足である、4月1日の入社式に有名な人が呼ばれてスピーチをした、初任給の賃金が欧米の水準に近付きつつある、新人が3年以内に辞める数が増えた、こうした内容です。

これは、2つの向きの異なる情報が一度に語られているといえます。

変わろうとしていると言われる日本の働き方に、ほんの少しだけ欧米の働き方を足した、そんな話です。

4月1日に入社式をするのも、初任給が上がって会社全体にひずみが生まれるのも、その会社が従来のメンバーシップ型だからです。

けれど、若者が会社を辞めるのは、人が労働市場で流動し始めたとみるべきです。これこそが、日本人が終身雇用制に囚われなくなってきているという変化です。これが欧米の働き方のジョブ型のスタイルです。

ジョブ型であれば、その職種の適任者を会社は採用します。そのために大学やその他で若者が必死に学びます。だからこそ、人はその仕事内容にみあう給与で働きます。もちろん、性別で年齢で、賃金に大差はありません。

もちろんジョブ型には入社式もありません。欠員が出たときに、人が採用される仕組みですので。

そうして身につけたスキルを持って人は転職をします。

これが日本政府が求めている労働市場の流動化です。

この流動化がなければ日本企業は伸びていかない、世界に取り残されると政府は声をあげています。

だからこそ、働く人はDX時代に学び続けて欲しいと、リスキリングやリカレント教育について国も多額の補助金を投入しています。

けれど、わたしはこの2,3年、メディアでは、メンバーシップ型とジョブ型の情報が混在したまま同時にそれが語られていると感じています。

もちろん、情報を受け取る側はなんだかすっきりしません。

こんな時、働く人の権利について、日本で暮らすわたしたちは、そんなことを言っても時代の変化だし仕方ないなと思うことが多いと思うのです。

けれど、わたしが常に考えているのは、この国の女性の働き方です。

このメンバーシップ型とジョブ型が混同されている今の時代、女性の働き方に目をやると、とても深刻な点が見えてきます。

続きは次回に続きます。


※参考
日本経済新聞 2024年3月5日㈫「優秀な人材囲い込み急ぐ」


※最後までお読みいただきありがとうございました。

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