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知ると、見えてくる


今日は、東京大学駒場キャンパスで開催された「難民映画祭パートナーズ&トーク」にお誘いいただいた。

予備知識も持たずにキャンパスを訪れてみると、小さなホールは既に満席だった。

わたしが参加したのは14時からの第二部。

映画は、『ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所』。2018年にノーベル平和賞を受賞されたデニ・ムクウェゲ氏のドキュメンタリー映画だ。その後、パネルディスカッションもあった。

ムクウェゲ医師の映像ならこれまで目にしたことはあったけれど、確かなことは知らなかった。

氏は産婦人科医で、活動の舞台はアフリカのコンゴだ。その氏が作られた病院には毎年2,500人以上の女性が運び込まれてくるという。

ところが運び込まれるのは出産ではなく、武装勢力によってレイプされ重症を負った女性達だ。しかも、その対象は、最後3ヶ月の女子から90代までの女性だという。

ムクウェゲ氏は、そのコンゴで友人を失った。だから一度はコンゴを離れたものの、コンゴの女性達に呼び戻されたのだという。わたしたちがあなたを守るから帰ってきてと。そして医師は今、国連軍に守られながら女性達を救うオペを繰り返されている。

その医師であるムクウェゲ氏がノーベル平和賞を受賞されたきっかけは、女性達を診ているうちに、この連鎖を止めなくてはと思われたからだという。レイプされて生まれた人の子どもが、またレイプされて運び込まれてくる、その連鎖に激しい怒りを抱かれたのだ。

アフリカで無政府状態が続いていて、海賊などが出没する国といえばおそらく誰でも直ぐにソマリアを思い浮かべるだろう。

けれど、ムクウェゲ医師がいるのはアフリカ中央に位置するコンゴだ。そこでソマリアの様なことが起こっているのだ。

そのコンゴは、あの1990年代にフツ族とツチ族間で大量虐殺が起こったルワンダの隣国だ。そのルワンダは今では国も安定し、平和な国になっているという。その隣国で、今、こんな悲惨なことが起こっている。

その理由が、鉱物資源にあるというのだ。本来であれば国が豊かになるはずの資源が、国を荒廃させている。なぜかといえば、あのルワンダの殺戮で、武装団が隣国のコンゴへ逃げ込んだのだという。そして、その武装勢力が狙うのが資源だという。その中で最も狙われているのがレアメタル。コンゴ政府はその取り締まりができていない。世界が喉から手が出るほど欲しがっているレアメタルは、コンゴには潤いを与えず、盗み出されているという。

コンゴで活動を始めた武装集団は、コンゴの女性たちを恐怖に陥れている。

なぜかといえば、コンゴの女性たちはよく働き、家庭もコミュニティもしっかりと作り上げるからなのだそうだ。そこを壊すために武装集団はレイプという手段を選ぶ。夫の目の前でレイプし、家族を壊わし、コミュニティを壊わし、人々に恐怖を与え支配する。それが武装集団の目的だ。ムクウェゲ医師はその戦いに巻き込まれた女性達を助け続けてこられたのだ。

映像の中で、ムクウェゲ医師が日本を訪れた際に、利他という素晴らしい日本語に気づいたと話されていた。いや、まさに利他を生きる医師だと思う。牧師の父を見て育ち、自分は愛を与えるのではなく、薬を与える人になりたいと思っていたら医師になり、コンゴに派遣され、今こうして活動をされているのだという。

そして素晴らしいと思うのは、これほどの恐怖に包まれた中でも、ムクウェゲ医師と同じように、女性たちを助けようと活動する女性がいることだ。恐ろしく勇気のいる活動だと思う。死と隣り合わせの仕事だ。

その映像の中で、少女が看護師を目指して学んでいた。彼女もまたレイプ被害者で、目の前で両親を殺されている。13数回の手術を経ていま、先生にいただいたお礼を誰かに返せたらと学ばれ、看護師を目指されていた。

本当にこんなことが続いて良いはずがない。

まだお正月気分も抜けない7日だけれど、声を上げた医師の活動の素晴らしさと勇気に出会えてよかったと思えた。

そして、東大が本郷と駒場でこれほど違うことに驚いた。

近頃はこうした活動に足を運んでいなかったけれど、これからまたお声がかかったなら、色々な場に顔を出してみようと思えた。


※最後までお読みくださりありがとうございました。


※六本木の国際文化会館で開催される講演会のお申し込みを始めました。皆様のお越しをお待ちしております。


※スタエフでも話しています。

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