何かおかしい。女性の働き方は女性が考えたい。#ジョブ型
これから女性も働きやすくなるよって確か1980年代にいわれたっけ。だけど変わらなかった。
そして今また変わるよっていわれている。
声が上げられない
若い女性と働くことについて話る、そんなイメージが持ちにくい。どうしてだろう。
わたしが20代だった頃もそれは同じだった。
あの頃インターネットが会社に入り込み働き方が急激に変わったけれど、周りの女性たちは働き方の変化に期待などしていなかったし、そのことについて話そうとはしなかった。
でもね、そこにはやっぱり理由がある。それは遠いから。声を拾ってくれる場所が遠すぎる。
いったいどこに声を届ければいいのかさえ見当がつかない。そう、ここは声のあげようのない社会。
向きはどちら?
けれど、それは日本女子の問題ではなくて国の形のせい。
この社会ではもう100年近くも人々は会社向きに暮らしてきている。
会社に入るとセーフ。たとえおかしな社風でも、社員は経営陣を向いて働く。それがわたしたちにとっての働くということ。
仕方ない。だってそうなんだもの。
だから不満があってもなかなか口にできない。それを承知のうえでこの会社を選んだんでしょ?だったら自己責任だよねってことになる。
ただ欧米は違う。彼らは経営陣を向いては働かない。
なぜって働くってことが交換だってことが体に染みついているから。働くことで自分の誇りを奪われてたまるかって生きてきているから。
労働者は弱者
日本もやがてジョブ型になるなんて言われている。本当だろうか。そもそも形の違うものがどうやってこの国に収まるのだろう。
レ・ミゼラブルをご覧になっただろうか。数年前、日本でも大ヒットしたあの映画。舞台は人々が工場で働きはじめた19世紀フランス。
わたしは主人公ジャン・ヴァルジャンの人生より、一人の女性の姿が忘れられない。
美しいその人は、幼い娘を故郷におき、出稼ぎ先で工場長に気に入られる。それを避けると彼女は働く場を追われ、やがて行き場を無くす。最後は歯を抜いて売る、そんな壮絶なストーリだった。
それこそが欧米にジョブ型が誕生した理由。労働者は個人では弱すぎる、そのことに働く人たちが気づいたのだ。
組合
よく欧米ではストライキが起こる。
ゴミ収集をしない、タクシーが動かないが一斉に起こる。これぞ欧米が獲得した労働者の権利。
忘れてはならないのが、労働者は個人では弱者だということ。あのレ・ミゼラブルの女性のように個人では工場長にいじめられてしまう。
だから働く人たちが手を取り合って助け合う。それが組合。
わたしも組合のある会社で働いていたけれど日本の組合は会社の中にある。組合員だって会社から給料を貰う。だから経営者側とバチバチやると後がたいへんなのは誰だって想像できる。
ところが欧米の組合は違う。産業別や職業別の組合が社会全体に広がる。
欧米では組合の中に企業がある。日本のそれとは逆だ。
つまり異なる組合に属する人々が企業で働く社会。だから労働者は弱者ではない。なぜなら勤め先の横に縦に仲間がいるから。
あそこの工場長女性を虐めてるよ、となると他の仲間がほってはおかない。そう、欧米の組合は同じ働く仲間を守るための集団。
ジョブ型
日本ももはや終身雇用が続かなくなってきた。だから次はジョブ型ねという。
本当だろうか。そもそも社会の形が違うではないか。
働く仲間を守るための仕組みを考え出したのが欧米の組合。しかもジョブ型はその組合の考え方がベースでできた働き方。なんといってもジョブ型は職務記述書がベースだ。
どんな仕事をするのか雇う側と雇われる側が契約を交わす。
そうすることであの工場長のいいなりにならなくて済む。気に入った気に入らないで評価や解雇に追い詰められることがない。
そのためのジョブディスクリプション(職務記述書)。
日本では組合が会社の中にある。それじゃ工場長に虐められても助けられない。気の毒だとは思っても助けられない。
これほど違う。
ジョブ型は社会に広く情報がいきわたり働くことの標準化がすすむ社会。
国の指導
ところが、この国では今、厚生労働省は大企業に対して男女の賃金の差異を開示するよう情報公表を求めている。
そして金融庁は企業の価値を上げようとプライム市場を作りそこで女性の管理職を増やすよう要求している。
どれもいい案だけれど、わたしたちは考えたのだろうか。こうした指導は、欧米の働く人たちの考え方とは大きく異なる。
均等法は欧米からやってきた。同一労働同一賃金だって同じだ(よかったら記事をお読みください)。
社会の形が違うこの国に、ジョブ型だとか、同じ名前の法律が輸入され続ける。
そしてほら同じでしょって言われる。けれど、それじゃ困るってことが多すぎる。それじゃ、女性たちはまた隙間に落っこちてしまう。
おわりに
考えることはもはや無意味なのだろうか。それとも誰かがわたしたちの代わりに考えてくれるだろうか。
女性の声が表に出なければまた置いていかれる、そんな気がしてならない。
声を上げる、それが今わたしたちが首を長くして待っているジョブ型社会の基本でもある。
参考図書
●『労働法』2021 水野勇一郎 東京大学出版会
●『人材覚醒経済』2016 鶴光太郎 日本経済新聞出版会
●『労働法』2015 浅倉むつ子・島田陽一・盛誠吾[著]有斐閣アルマ
※最後までお読みいただきありがとうございました。
※スタエフでもお話ししています。良かったらお聞きくださいね✨
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