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【古典落語】liveで「芝浜」にチャレンジ!


落語には筋はありますが、話そのものはそれぞれの作品。見よう見まねで始めた落語も5席目になりました。所属は「のようなスタエフ落語会」。モンブラン亭umiとして活動しております。

そして今回はカンペを読みつつスタエフで初めてのlive配信をしてみました。緊張しました。落語5席目は「芝浜」です。

配信を聞きながらお読みくださる方がいれば光栄でございます。




芝浜


ーあんた、あんた、起きとくれよ、もう今日で20日だよ。家の米櫃にはもう一粒もコメがないじゃないか、お願いだから起きとくれ!

なんだよ、うるせーな、もうちょっと寝かせろ。昨夜の酒が残ってやがるんだよ。るせーな。

ー何言ってるんだよ、もういいかげん魚河岸に行っとくれ。あんた魚屋だろ。おとついから包丁研いで草鞋だって揃えて釣銭だって用意してあるんだ、お願いだから働いとくれよ。

ーーー

うん?寺の鐘じゃねえか。なんだよあのババア、どうりで問屋が開いてねえはずだ。まだだれも働いてねえじゃねえか。あいつ時間を間違いやがったな。あのババアの面みるのも癪に障るな。ちょっくら浜にでも出てみるか。うん?なんだ?こりゃなんだ?重いな。え?財布じゃねえか。なんだなんだ?こりゃ大金じゃねえか。

ーーー

ドンドンドン、おっかあ、おっかあ、ちょいと開けとくれ。

ーなんだいお前さん、もうけえってきたのかい?

いいから入れろ、いいから入れろ

ーどうしたんだい?腹でも下したのかい?

そこ閉めろ、で、こっちこい。

ーなんだいお前さん。

し~、いいからそこ座れ。

ーどうしちゃったのかね、朝っぱらから。

おい、おめえ腰抜かすんじゃねえぞ。

ーおかしなことお言いだよ、朝っぱらから。

いいか、よく見ろ。なんだこれは。

ー財布じゃありませんか。皮ですね。あんた、これどうしたんです?

いいから見て見ろ。

ーお金が入ってるじゃありませんか。

そうなんだ。数えてみろ。

ーなんですか?じゃあちょっと数えてみますよ。あ、でもあんた、どうやって数えるんですかね?

駄目だなお前ってやつは。貸してみろ。お金ってやつはな、こうやって数えるんだ。ひ~ふ~み~ってな。いいか、でもってな、ほら…42だ。な、42両へえってるんだ。

ー42両ってあんた、どうしたんです?こんな大金?

浜で拾ったんだ。問屋へ行っただろ?そしたらな、まだどこも開いてねえんだ。寺の鐘が鳴ったんだ。おめえ時間間違っただろう。でな、家に戻るのもなんだからよ芝浜に行ったんだ。そうしたらなぷくぷくってなよびやがったんだ、この財布がな。でな、なんだなんだと思ってみてみたら海の中にこの財布だ。

ーそれであんたもってかえって来たのかい?

し~大きな声出すな。聞こえっちまうだろ!なあ、いいか、俺は魚屋だ。魚屋にとっちゃタイもさんまも海のもんだ、いいか?この財布、海にいたんだ。誰のもんでもない、海のもんだ。分かるな?俺は魚屋だ。神様も粋なことをしやがるってもんだい。なあ、俺が日ごろからいいことしてるからちゃ~んとお見通しだ。で42両だぞ。これは魚屋のもんだ。

ー貰っちゃうのかい?いいのかい?誰か落としたんじゃないのかい?

し~これは魚とおなじだ。海にいたんだ。いいかい、海に着物着た人なんかいなかったぞ。これは落とし物なんかじゃない、海の魚とおなじだ。だから俺のもんだ。なあ、そうだろ。で、あずかっといてくれ。

ーあんた、42両もあれば着物だって買えるね。この着物もう7年も着てるんだ。たまにはかんざしだって欲しいね。

ああ、そうしなそうしな。42両もあればな、奇麗なおべべの数枚買ったって痛くもかゆくもねえ。ずっと酒飲んで遊んで暮らせるってもんだい。いいからそれはしまっといて長屋の皆を呼んどくれ。酒だ、祝い酒だ!

ーーー

ーあんた、あんた、起きとくれ、おきて魚河岸にいっとくれ。

何言ってるんだい。俺はもう少し寝ていたいんだい。

ーなに言ってるんだい。もう米櫃には一粒だってコメが無いんだ。きょうこそ魚河岸にいっとくれ。

おいおいおい、じょうだんじゃねえぞ。昨夜の財布はどうした。42両もあっただろう。俺はもう魚屋じゃねえんだ。

ー何言ってるんだいあんた。寝ぼけてるのかい?いい加減起きとくれよ。包丁も研いだし草鞋も釣銭も揃えてあるんだから起きとくれ。

なに?おめえ何言ってるんだい。あの財布はどうした?昨日のあの財布はどこへやったんだい?

ーなにいってるんですか?財布財布ってさっきから。

なにいってるって、あれだよ、きのう長屋の連中呼んで酒飲んだだろう。祝い酒だって飲んだだろう。

ーそりゃ長屋の皆を呼べってアンタがきかないから呼びましたよ。でも財布は知りませんよ。夢でもみたんでしょ。寝言で財布財布っていってましたからね。

なんだ?ってえことは、財布は夢なのか?飲んだよな。長屋の連中つれてきて飲んだよな。あれも夢か?

ー飲みましたよ。あれは本当です。

なに?財布は夢で飲んだのは夢じゃねえって言うのかい?どうなってるんだい。じゃあ、あの酒の付けは俺もちってことかい?

ーそうですよ。どうするんですか、もう米だってないっていうのに。

ーーー

目が覚めちまった。どうすりゃいいんだ。借金のうえにまた借金こさえちまった。飲んじまった。あああ俺はもう駄目だ。俺は馬鹿だ。あゝバカは死ななきゃ治らない。

ーじゃあ、あんた死んだ気になって働いて下さいな。ちゃんと働けば返せますから。もうお酒はやめて働いて下さいな。

わかったおっかあ。わかった、悪かった、俺が悪かった。飲んだくれてばっかりでな、俺が悪かった。苦労かけたな。今日からちゃんと働くよ。死んだつもりで働くよ。

ーーー

あゝ、今年も正月の準備ができたな。ありがたいな。今じゃ長屋暮らしから抜け出して小さいが自分の店も持てたしな。いい年の瀬だ。おっかあ、なあいい一年だったなあ。

ーたまにはお酒でも飲みますか?

そうだな。あれから3年、酒も飲まなかったな。ただな今になりゃどうしてあんなに酒酒って酒浸りだったのか分からねえなあ。なあ?酒なんてなくたってお茶がある。お茶があれば飯がうめえんだ。こんなことにも気づかなかったな。

ーーー

ーちょっといいかい。

なんだ改まって。

ー言っておきたいことがあってね。

なんだい、言っておきたいことって?

ーこれ覚えてます?

財布じゃねえか。皮だな。なんだ?銭がはいってるな。

ー数えてみてくださいな。

なんだ?ひ~ふ~み~、42両だ。皮の財布にはいった42両がどうした?

ー覚えてませんか?

え?これはあの財布か?おめえ、あれは夢だっていったじゃないか。

ー怒らないで聞いて下さいな。あの日あんたが寝てるとき、わたしは心配で大家さんに相談したんです。そうしたら大家さんが奉行所に届けるようにって。拾ったもの使うと首が飛ぶぞって。で、落とし主がでてこなくて返ってきたんです。でもあんたは真面目に働くようになった。だからずっと預かってたんです。

そうか、そうだったのか。そうか、ありがてえな。おめえは俺を立ち直らせてくれたんだな。

ーよかったよ。お前さんがこんなに立派におなりで。わたしも嬉しいよ。じゃあ、この3年のあんたの働きをねぎらって吞みましょうかね。

ああ、ありがてえな。いい香りだ。あ~酒の匂いだな。ああ懐かしいなあ。でもやめておこう。

また夢になるといけねえからな


御跡がよろしいようで。


過去配信4席

一席目 「夏の医者」


二席目 「金明竹」


三席目 「宮戸川」


四席目 「目黒のさんま」



※写真はみんなのフォトギャラリーのAKIさんよりお借りしました。ありがとうございます。


※最後までお読みいただきありがとうございました。

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