ニュースの向き。どの言葉を取り上げるかで、ストーリーが変わる。
今日のNHKの「ニュース深堀」という番組で、年収の壁問題についての報道があったらしい。
この話しには、必ず一つの結論が付いてくる。それは、主婦は図々しいとか、主婦は働こうとしないという、あれだ。
そんなことを思いながらネットで確認してみると、その内容がNHK NEWSWEBに出ていた。
見出しは、「”時給上がったから働く時間減らさないと”「年収の壁」対策へ」だ。
働き手がいなくなって企業は困っているというのに、主婦は賃上げすると働く時間を削る、これでは、企業の人手不足は無くならないという話しだ。
その根っこにあるのが、主婦の優遇制度だ。だからこの優遇制度をなんとかしなきゃならない、という話になる。
こんな話のながれは、主婦は保険料を自分で払いたくない人たちだ、というイメージに繋がりやすい。
現在、この「壁問題」とも呼ばれている主婦の優遇制度はどんどん変化中だ。
今は、従業員が101人以上の企業などで働く人は、年収が106万円を超えると扶養を外れる。
扶養を外れた主婦は、厚生年金や健康保険の保険料の支払いをすることになる。
ただ、ここで起こるのが、主婦の手取りが減るという現象だ。働き損になるのだ。
106万~125万までの年収のある主婦が扶養を外れると、以前より手取りが減る。
ようやくトントンになるのが125万円だ。
けれど、薄給で125万円稼ぐことがどれほど大変なことなのか、ここのところを考える人が少なすぎる。
主婦の中には、月収8万8000円を超えないように計算して働く人がいるけれど、パートも家庭もすべて自分で管理して、もっと働いて、わずか数万円手にして、倒れてしまってはしょうもない。
わたしは、以前こんな記事を書いた。
この中で、わたしは、主婦のパートの賃金は、ほぼ高卒初任給並みだと書いた。
つまりそれは、未経験労働者の賃金ということ。
そして、何年働いても時給は変わらない。
それが日本のパートだ。
厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査の概況によれば、短時間労働者の1時間あたりの賃金は男性が2,367円なのに対して、女性は1,471円。さらにパートタイム労働者は 1,213円。
ここが問題なのだ。
主婦は、賃金を上げると直ぐに時間調整するから困ったものだといわれる。
けれど、パートの低賃金で、いったい何年、ご機嫌に働き続けることが出来るだろう。
働く人は、正当な対価を得てはじめてやる気や、やりがいを見出すものだ。パートの低賃金でそんなものはみつけようがない。しかも、低賃金で長年働いていると自己評価まで下がる。
政府はその働き損になる賃金を埋める補助金を企業に出すという。しかし、期間限定だそうだ。
メディアは、賃上げしても働く時間を減らす主婦という調子で情報を送り続ける。
けれど、もしも、主婦の労働が一般の男性や女性と同じような時給なら、パートの主婦も労働時間の調整などしやしない。
メディアでは決して取り上げられないけれど、主婦だって、かつて企業で働いた経験を持つ人ばかりなのだ。
主婦は本当に困ったものだという調子で語られるこの問題、構図は決まって、使う側の男性が困り顔で、働く主婦はけろりと答える。
けれど、愚痴もいわず薄給で、体調を崩してまで働くわけにはいかない。
もしも、彼女たちが正当な対価を受け取っているのなら、と思う。今の薄給の状態では、家事の外部化もできやしない。
この社会には、主婦の仕事は最低賃金という世間の常識が恐ろしく刷り込まれている。
けれど、主婦は低賃金で使っていいという社会はおかしい。主婦だって労働者なのだ。
もしも、感情を抜きとられているのなら、不満も持たず働くだろう。けれど、そんな薄給では人は耐えられない。主婦だけは別枠ではないのだ。
最も問題なのは、主婦のパートが最低賃金でありつづけていること。
企業は困ったという。けれど、主婦も長い間困っている。
ニュースはどの角度から報じるかで伝わるものが大きく変わる。
主婦のパートは、本当はちゃんとした仕事なのだということを企業には思い出して欲しい。
元、搾取され続けた一人の当事者として、そんなことをつくづく思った。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
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