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主婦のパートはとにかく疲れる。「悪法」って主婦年金だけ?最低賃金で働く主婦のパートは?


脱・昭和なんていわれる。考えてみると主婦年金主婦のパートは共に昭和生まれだ。けれど誰もがしたいのは主婦年金だけなのだ。

なぜだろう?

どちらも昭和生まれだし、日本独自のものだ。

それなのに主婦年金を消滅の方向へと向かわぜ、働く主婦は薄っぺらなお給料のまま、そこから厚生年金と健康保険を自分で払えという。

それじゃもう主婦はくたくただ



自分で納めて

主婦の年金は悪法であると誰もが口にする。すると2020年に年金制度改革法ができた。そして働く人の健康保険厚生年金の適用範囲が広げられた。

最新の被保険者になるための条件は、

週所定労働時間が20時間以上、
月額賃金が8万8千円以上(年収106万円以上)、
当該事業所に2か月を超えて使用されることが見込まれる人

『解説 労働法』水野勇一郎 2021 東京大学出版会


この流れでいつも聞こえてくるのが、主婦年金は無くしましょう!これはですという声。それを立派そうな人が口にしている。その予算を消費税に充てたらよろしいなんていう人もいる。

まあ、きっと国を思ってのことなのだろう。



主婦年金

それにしても昭和にはいろいろなものが生まれている。高速道路も新幹線も高層ビルも。そして主婦年金も昭和生まれだ。

その主婦年金とは、保険料の負担なしに基礎年金を受益できる専業主婦の優遇処置のことだ。

考え出されたのは1973年の「福祉元年」。高度経済成長を受けて財政収入の予測はバラ色出生率が安定していた。この前提は夫が企業で働き妻が家庭を守る伝統的なもの。夫の社会保険で妻が扶養されるという仕組み

『社会保険改革』1998 八田達夫 八代尚宏編 日本経済新聞社


とある。そう伝統的な暮らしを守るために考えられたのだ。

ただ落ち着いて考えてみると、主婦はそれ以前は年金にも入れてもらえていないのだ。甘く見てはいけない。日本の主婦とは、それ以前からその程度の身分だったのだ。

なにしろを中心に回っていたのが昭和だ。夫は夫の階層に暮らす人。けれど妻は夫の階層に居候する人だったのだ。だから社会からは見えにくい存在なのだ。日本には深窓の妻なんてことばだってあるのだ。だから年金の権利をわざわざ与えなくたって特段騒ぎ立てる人もいなかった。そう、どうってことなかったのだ。

その主婦に、どうしたわけけいきなり贅沢な制度が与えられた。それが主婦年金だったのだ。



主婦のパート

もう一つの昭和の名物といえば主婦のパート。こちらは昭和20年代に生まれている。とにかくその頃は労働力不足だった。だから、

労働力が確保できない中小企業が働く時間を短くすることで主婦を家から出やすくした。大企業もそれに続いた。

賃金はほぼ時給高卒初任給並み。つまり未経験労働者の賃金で何年働いても時給はずっと初任給並みの低さという働き方だ。

『女子労働の新時代』原田冴子 1987 東京大学出版会


わたしたちは気軽に主婦のパートなんて口にするけれど、この働き方は、昭和が生み出した日本ならではの働き方だということ。

人が足りなかった。じゃあ、夫のいる妻にお願いしてみるかという事になってはじまった働き方だ。

そうして主婦のパートは労働市場の端っこ最低賃金で働かされる場としてずっと日本の労働市場に今も残り続けてしまっているのだ。



バランスよく

主婦年金主婦のパートのこの2つ、お金をキーワードに読み解くと興味深い。世間は主婦に「甘えるな!自分で厚生年金に入れ!」と手厳しいけれど、この1985年生まれの主婦年金は国が内助の功として妻に与えた権利だった。

この制度があったからこそ、日本の伝統的な家族の形は保たれた。その形を気に入っている人がこの国には実に多かったのだ。

この制度の前提は一つの家族に一人の稼ぎ手しかいないということ。

だからこそ主婦は低賃金のパートでも働けた。なぜって家には稼ぎ手の夫がいたのだから。夫の給料は年齢と共に上がっていった時代だ。

そう、主婦年金があることで主婦は夫をサポートして子どもを育てられた。主婦が家にいることを誰もが望んでいた。だから企業も主婦に配偶者手当を出した。国も企業も人々も、それを強く望んでいた時代だったのだ。

そんな頃の主婦には低賃金など気にならなかった。夫と妻が、家族と会社が、会社と国が一丸となって進んでいた時代だったのだ。それが昭和

令和の目で眺めると滑稽かもしれないけれど、この2つは実にうまくバランスをとっていたのだ。



パートは身分

けれど国は、今頃になって主婦に年金を納めてといいだしている。

忘れてしまったのだろうか?

主婦は低賃金労働者だ。その低賃金から厚生年金健康保険料を納めると一体彼女たちの手元にはいったいいかほどが残るだろう。

ちなみに、

短時間労働者の1時間あたりの賃金は男性が2,367円女性は1,471円。

パートタイム労働者の時間当たり給与は  1,213円だ。

厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査の概況
短時間労働者の賃金

男性と女性とでは賃金がこれほど違う。さらに、女性の中でも短時間労働者とパートでは賃金がこれほどまで違う。

しかも、

パートで働く主婦の大半(79.3%)が元正社員。

厚生労働省 平成23年パートタイム労働者総合実態調査の概況:個人調査

昭和20年代生まれの働き方が、70年過ぎても変わらずパートが女性を最低賃金に押し込め続けている。主婦とはいえど、その大半はかつては正社員として働いていた人たち。それなのに主婦はその低賃金から抜け出せない。

そう、もはやこの国では主婦のパートは身分としか思えない。子どもがいるのに、年を取ったのに働かせてもらうだけありがたいと思えといわれるのが主婦なのだ。身分とはその人に貼りついたもの。それは決して自分では剥がせない。だから、妻が働きに出るとパート枠で働けといわれる。




均等・平等

主婦はそもそも夫の階層の人で、主婦にはそこに居てくださいねというのが主婦年金だ。そして主婦のパートはどんなに頑張っても未経験労働者のような低賃金だから出られない。一人立ちできないから妻は家にいる。

この2つほど相性のいいものはない。2つセットでこの国の古き形を支えてきた。

だから片方を返上してというのなら、働く主婦も労働市場に返して欲しい。主婦のパートはいつまでも雇用の調整弁では釣り合いが取れないではないか。

どうして、この国は均等をうっかり忘れるのだろう。主婦にも働いて年金を納めてというのであれば、納められるだけの賃金が必要に決まっている。そう、主婦のパートだって社会を支えてきた労働者なのだ。平等という言葉がこの国にも必要なのだ。


実は法がちゃんとそれを後押ししている。1993年にできたパートタイム労働法は、改正で今ではパートタイム有期雇用法に変わった。ここでは、

短時間労働者を1週間の所定労働時間が同一の事業主労働者に雇用される通常の労働者「正社員」に比し短い労働者と定義している。

さらに短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取り扱いをしてはならない

『解説 労働法』水野勇一郎 2021 東京大学出版会

とある。

ようやく平等の文字が見えてきた。

けれどそれがまだちっとも世の中に浸透していない。これは大問題だ。

厚生年金を払うのであればそれは立派な労働者ということ。それなら主婦も労働市場に戻して欲しい。主婦を短時間労働者として扱ってほしい。それが平等というもの。




おわりに

日本では主張はハシタナイとされる。けれど労働に見合う賃金を要求することは当たり前のことだ。年金を納めてというのであれば主婦の労働者としての権利を返して欲しい。主婦も労働市場に戻してほしい。

主婦のパートと短時間労働者は似て非なるもの。

パートが短時間労働者になれたなら、主婦も仕事を外部化することができるし、働き続けることでキャリアにカウントされるようになる。

主婦は普通の女性だ。薄っぺらな賃金で喜んで働き続けられるほど辛抱強い昭和な女性はここにはもう居ない。それでは疲れて倒れてしまう。それでは子どもを産むことがペナルティになってしまう。それでは年金さえ与えられなかった主婦の時代に逆戻りしてしまう

どうか主婦を使い捨てにしないでほしい。



※最後までお読みいただきありがとうございました。


※スタエフでも話しています。良かったらお聞きくださいね✨


※主婦問題編として書いています。よかったらお読みください。


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