働く人の人権保護
SDGsもESGも、どんどん暮らしの中に浸透しはじめた。
いまは子どもたちの方が詳しいんじゃないだろうか。
きっとそうだ。
誰のためのガイドライン?
厚生労働省は昨年、企業の人権擁護に向けたガイドラインを作成している。
内容は責任あるサプライチェーン等における 人権尊重のためのガイドラインに書かれている。
これは企業向けのガイドラインだ。
日本で事業活動を行う全ての企業が対象だけれど、国際的な事業を行っていなくても対象になる。
そして、暮らしの中でわたしたちが手に入れるもののほとんどが企業経由。だからこのガイドラインはわたしたちにも関係がある、そう考えた方がいい。
責任
企業には人権尊重責任があるけれど、そこにはステークホルダーの人権が含まれる。
このステークホルダーとは、企業の活動で影響を受ける可能性のある利害関係者のこと。取引先や自社・グループ会社及び取引先の 従業員、労働組合・労働者代表、消費者、NGO、業界団体、人権擁護者、周辺住民、先住民族、投資家・株主、国や地方自治体など、おそろしく範囲が広い。企業の活動は、それほど周りに対して責任があるということ。
だから国際的な事業を行っていない企業でも、国際スタンダードに則った人権尊重の取組が求められる。
そして、国連や、ILOなどが求めているのはディーセント・ワーク。
ILOはこの働き方を、働き甲斐のある人間らしい仕事と表現している。
わたしたちはコロナ禍に、企業はサプライチェーンで繋がっているんだということを実感させられた。車も、PCも、携帯も、なにもかもがあのコロナ禍で恐ろしく手に入らなくなった。
だからこそ、取引先の人権も尊重すべきなのだ。
貧しいと搾取される
カカオ農園やコーヒー農園、アパレル工場や鉱山での強制労働や児童労働をよく耳にする。
コーヒーは毎日飲むし、服だって買う。わたしたちにだって彼らをデーセント・ワークに導く方法がある。
コーヒー豆を買う時には、レインフォレスト・アライアンスのカエルのマークがついたものを買い、服だって大量生産された価格の安いものは遠慮するのがいい。
わたしはいつかテレビで観た映像がずっと忘れられない。
取材陣がカカオ農園で働く人たちにチョコレートを差し出す。それをひとかけら口に入れたときの彼らの驚き。自分たちが扱っている豆からこんなおいしいものが作られるなんて想像さえしていなかった。
彼らは一度もチョコを口にしていなかった。
貧しい国では人権の保護が弱くなる。
貧しさゆえ、強制労働や児童労働が無くならない。
自分と繋がっている
ただ、遠い国の話しだと思っていると永遠にピンとこない。
わたしがそんなことを気にするようになったのは、四半世紀前CNNで欧米の若者たちが激しい抗議活動をしていたのを観たから。
その時、わたしは映像を観ながら彼らはどうして他国のことであれほど興奮して戦えるんだろうと不思議でならなかった。どう見ても彼らは本気で怒っていた。
ただ、いまならわたしにも彼らの気持ちがわかる。
強制労働や児童労働でわたしたちが手にするのは単価の安い商品。じつは責任の一端はわたしたちにもあるということ。
欧米の若者が怒り激しく抗議していたのは、自分たちが他国の人の人権を奪う行為に加担させられている、そのことに対する激しい抗議だったのだ。
おわりに
企業は強制労働や児童労働だけでなく、性別・ジェンダーによる差別についても検討する必要がある。この国では、男女差別がいっこうに解消されない。これを放置しておくことは恐ろしいことだ。企業の周りにはステークス・ホルダーがこれほどいるということを忘れちゃいけない。
働く人の人権を守る、それが企業に求められている。
ま、わたしが口にするとおかしいのかもしれないけれど、それでも、だからこそ企業の経営陣が人権尊重を積極的に取り組むことが重要だと思っている。
わたしたちは、企業を捉え所のない入れ物と想像しがちだ。けれど企業は経営陣の行動一つですぐにでも変わる入れ物なのだ。もしもその企業が変わらないのであれば、それは経営陣側の問題だとわたしは考えている。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
※スタエフでもお話ししています。
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