【介護】89歳を祝う。
もう外はいい…
- そんなこといわないで、たまには外で食事しようよ。
- 足、痛むの?
足も痛いけれど…
こんなに年なのに。もう人中で食事するのは…
- なにいってるの、そんな理由だったら絶対に行こう!
そんな会話の後、母に明るめの服を選び、薄く紅を引くと、タクシーでレストランへ向かった。
今日は母の89歳の誕生会。
既にお祝いは家で済ませてはいた。
けれど今年はなんど尋ねても欲しいものは無いという。毎年、服や小物、蘭などをプレゼントしてきた。
けれど、もうどれも持っているから要らないという。
困った。
そう思っていたところ、娘が食事会を準備してくれていた。
ありがたや。
乾杯はノンアルコールで!
母の好物は生野菜とフルーツ。
コース料理は無理、というので、じゃあシェアしようと母の好きなお料理を頼んだ。
あれほど遠慮していたというのに、母は実によく食べた笑。
肉もピザも撮り忘れたけれど…
普通にわたしたちと同じくらい食べられる笑。
夫を亡くした母は、80代半ばで田舎に別れを告げた。
ただ娘家族の暮らしに馴染むのに恐ろしくエネルギーを使ったはず。
もちろん迎えるこちら側も大変だった。
2年半ほどは家の中がガタガタとよく悲鳴を上げた。まあ、悲鳴を上げたのは主に母とわたし。だいたいこの2人がいつも一緒だ。
ただ母は強し。
というより、努力家といった方がいいかもしれない。
今はもう一人で外出はできない。
それでも週に2,3回はシルバーカーを押してご近所をちょっとだけ歩く。
既に足の手術は諦めている。
けれど歩くことを諦めたわけじゃない。
手術を諦め、一年の大半を痛み止めを飲むことを選んだあの日、母は痛くても歩こうと決めたんだと思う。
そんな母は花好きで、おまけにちゃっかりしたところがある。
先日、ふとリビングに足を踏み入れて笑ってしまった。
レースのカーテンが見事に開いている。
ムム?家の中が丸見え、と思ったら…
ご近所に咲く、大きくてみごとに花開いた桜の花見を、一人楽しんでいた。ソファーじゃなくちょこんと正座して、嬉しそうにそれを眺めているのだ。
花好きは幸せものだと思う。
昨年末、そういえばチューリップの球根が欲しいといわれた。
すっかり忘れていたけれど、今年、家の色々なところでチューリップが花開いている。
花好きは幸せなのだ。
レストランを出ると、小雨は上がっていた。タクシーを拾い、神社参りをした。
大きなイチョウの木に小さな若葉が出ていた。
久しぶりに母と病院以外に外出ができた。
これが幸せというものだろう。
一緒に外出できる、それだけでこれほどの達成感が味わえるとは。
また来年も美味しく食事ができるといいな、と思う。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
※スタエフでもお話ししています。
こんなお知らせも届きました。ありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?