映画『Living』を観て
昨夜、日々強い痛み止めをのむ母が頭痛を訴えた。
「昨日から、ここが痛むの」と頭部の右側を指す。
「だから夜あまり眠れないの」ともいう。
ならば、映画でもみながらマッサージしましょう、ということになった。
Amazonプライムで気になっていた『Living』という映画があった。早速、母をマッサージしながら約2時間、のんびりと映画鑑賞をした。
映画やドラマは面白い。印象深い人がきまって役の中心だ。人相とは不思議なものだと思う。どんなに綺麗な男性でも女性でも、覚えられない顔というものがある。反対に、取り立てて美しいというのではないけれど、一度みたら忘れられないお顔もある。
その映画もそうだった。なんとも味わい深い役をする人たちの表情や仕草は格別だ。ああ、この人はこの映画の核になる人だなとわかる。
人ってやっぱり面白い。
この映画は黒澤明監督の『生きる』のリメイク版だった。
『生きる』はみてはいないれど、それでもなるほどと腑に落ちた。
西洋問わず、人の考え方とはこうも似るものかと感じた。どちらも海に囲まれた島国、イギリスと日本には面白いほどの共通項があるんだ、と思った。
すると、この映画、カズオ・イシグロ氏が脚本を手掛けられていた。黒澤明監督を尊敬されているという。
途中、悪い友は気づきにくいという言葉を思い出した。目的があって近づいてきた人に人はなかなか気が付かない。茹でガエルがは、徐々に温度を上げると高温になったことに気が付かないという。
この映画も、パターン化してしまった暮らしが描かれていた。取り立てて不自由があるというわけではないけれど、自分がいったい何を望んでいたのか、なににワクワクしていたのかさっぱり自分の本質が思い出せなくなっていく。そんな普通の人の普通に起こりそうなことが描かれていた。
ほんの数時間の尺で、年老いた男性の生涯が見事に描きだされている。その中で、好きなメッセージがあった。
人が何かを成し遂げることは素晴らしいけれど、記録は塗り替えられるし、形あるものは消えていく。けれど、それが自分の、あるいは誰かの心に残ったならそれでいいじゃない、そんな繰り返しで人は成長していくものだからね、というメッセージ。
わたしは還暦過ぎて、感じることが変わってきた。
今は大忙しの時を過ごしている。
若い時なら、こんな時、母のマッサージなどのんびりとはできなかった。
なにより時間が惜しかった。
いや、人にあげる時間が惜しかったのかもしれない。
けれど、今は暮らしの優先順位は、時と場合によって柔軟に変えられる。
わたしは年々人が好きになっている。
そんなことを教えてくれたのは、きっと家族なのだろう。
出会いたい人と出会って生きていきたい、今はそんな気分。
まあ、嫌だなと思う人もいないわけじゃないけれど、それもいいかなと思っている。
きっと、人ってそんなものなのだろう。
そして、これからはすすんで友達を作っていきたいと思っている。
人と出会うことがどれほど素敵なことか、今はそのことが本当によく分かっている。
今朝、母に感謝の言葉を口にされた。よく眠れたという。
素敵な映画を見て、翌朝感謝の言葉か、、、
得しちゃったな、と思った。
※最後までお読みいただきありがとうございました。
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※5月26日㈰10時から、大阪の中央公会堂で講演会を開きます。皆様のお越しをお待ちしています。
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