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介護保険がいい理由

先日、自宅に歯科医さんが来てくださり、ベッドに座った状態で、母は歯周ポケットチェック・入れ歯点検・レントゲン・歯型取り等のケアをして頂きました。

と、今では沢山の方に支えて頂き、我が家の在宅介護が成立しています。

そんな母と暮らすようになって、2000年に施行された「介護保険法」が、実は恐ろしく優れものだったのだと気づくことがあるのです。


この「介護保険法」で最もいい点は、「介護」が仕事になったことです。つまり、賃金が発生するのはプロのみで、わたしが母を手助けしても介護費が支給されません。

ここがいいと思っているのです。

日本では、老年人口の割合が1994年に全人口の14%、2007年には21%を超え、2015年には団塊世代が65歳以上になり、75歳以上の人口割合は年少のそれを超えました。

そんな高齢社会で、女性が家庭内で介護する役割を担わされると考えただけでぞっとします。


田舎暮らしをしていた母が、我が家へやってきたのは確か7年前でした。

その頃、母がわたしに繰り返し口にしていたのは、

○○さんとこのお嫁さんは、義母の介護はしないのに、ご近所に介護をしに行っている

というものでした。

義両親と夫を介護してきた母には、介護はお嫁さんや娘がするものという考えがありました。

きっと、今でも母のような考えの人は多いと思うのです。


ですから、もしも、家で介護する人に賃金が支払われたなら、嫁や妻や娘が介護することが当たり前になってしまいます。いえ、お金貰ってるんだからもっとちゃんとやれ!と言われるかもしれません。

その点、この法律では、プロのみに賃金が支払われますので、一見厳しいようでも、これが家に縛り付けられていた女性を自由にしたと思うのです。


ただ、介護従事者の方々の賃金の安さは問題ですが。

それでも、この制度のシステムの充実ぶりには驚かされます。在宅介護中のわたしが、起業に踏み切れたのもこの制度のお陰です。

今では毎週、理学療法士さん・お医者様・看護師さんに、歯科医師も加わりました。さらに出張の際、複数の施設の中から短期宿泊先が選べます。

ただ、このシステムを上手く利用するためには、情報を自ら取りに行く必要があります。

わたしも当初、地域包括センターまでたどり着くのに時間がかかりました。なぜなら、母もわたしも、寝たきりではない母が介護に該当すると思っていたかったからです。

最初の窓口は、最寄りの役所でした。

それから、本格的にケアマネージャーさんと繋がれたのは、母が倒れた時でした。そこから2か月程で介護体制が整いました。

もう一つ、この制度のいいところは、人を知っているところです。人間同士、もしもどちらかが相性が合わない場合、相談できる窓口があります。しかも、介護される側の情報は、病院・施設・会社に共有されていますので、たとえ独居であったとしても、対人関係での困りごとを個人が相談できるようになっています。

もちろん、我が家へ出入りして頂いている皆様には、もう感謝しかありません。とても温かく母を励まして下さっています。

母にとって合理的で冷たいと感じられたこの制度も、今では多くの人と触れ合うことで、母にとってもガス抜きになっているようです。

一緒に暮らすようになり、母とは色々な話をするようになりました。不思議と女性はこうであらねばならない、と頑丈に沁み込んでいた母の体から、そんなものがどんどん抜け出しています。

わたしから見ても、母は自由になっています。

母をみていると、人は幾つになっても考えや意識を変えられるのだと思えるのです。



※最後までお読みいただきありがとうございました。


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